第1話 新しい会社は、有能だらけっ！？
文字数 2,526文字
半年ぐらい前のこと。
我が社の製品を用いまして、皆様の抱く『不安』を『希望』へと変えていきたいと思います！
ご清聴ありがとうございました。
パチパチパチパチパチパチパチパチ
稲生さん、流石だなぁ……
稲生さん、やりましたね！ また、稲生さんがプレゼンした企画、通りましたよ！
あぁ、まぁなぁ。
私も、企画資料を作っているんですけど、稲生さんみたいに上手くいかなくて……。
そりゃ、まだ２年目なんだから上手くいかないのは当たり前だろ。それに、チラッと資料見たけど、俺の資料なんかよりずっと丁寧だったぞ。
そんなことありませんよ。やっぱり、稲生さんに早く追いつかないと……。
これからも、稲生さんの仕事ぶり、参考にさせてください！
…………。
川見、悪いな。俺はもう少ししたら、この会社を辞める。
……え？
え、冗談、ですよね？ 稲生さんは、この会社のエースなんですよ？
稲生さん、辞めるって、どういうことですか！？
…………。
ま、お前には、言ってもいいか。
実は、さっきのプレゼン、あれはチートを使ってる。
ちーと？
この会社に入ってから気づいたんだけどよ、俺には能力があるらしくてさ。
はい、先輩には能力があると思います！
そういう能力じゃなくて、異能力っつーか……。この、ポスト見てくれるか？
え？
企画、通りましたー！
この企画、絶対に実現させる！！
稲生さんも『X』やってるんですね！ 報告、いいと思います！
まぁ、見てろよ……
『パワーマグネット』！！
先輩？ いきなり、どうし……
え、1万いいねっ！？ インプレッション20万っ！？
俺には、パワーマグネットっつー能力があるみたいでさ。この能力を使うと、人から注目や運を集めることが出来るみたいなんだよ。
だから、こんな何の変哲もないポストですら、簡単にいいねを集めることが出来る。
さっきのプレゼンも、この力を使って注目を集めただけなんだよ。
そ、そんなことが……
で、でも、そんな能力が本当にあったとしても、稲生さんはこの会社に……！
ありがとな、川見。でもな、こんな大手の会社は俺がいなくたって仕事は回る。俺は、俺にしか出来ないことがしてぇ。
だから、この会社を辞めて、俺にしか作れない会社を立ち上げようと思ってるんだ。
稲生さん……
…………
稲生さん、私もそのお仕事、手伝わせてください！！
は？
私も、稲生さんの力になりたいんです！！
は？ 駄目に決まってんだろ。俺を含めて、声をかけてる他の連中は有能揃い。お前みたいな無能、連れて行けるか……
っ……！
い、今は無能でも、いつか稲生さんの力になる有能に、なりますからっ！！
二年間、稲生さんをずっと傍で見て来て、本当に凄いなって思っていたんです！！ だから、これからも、隣で働きたいんです！！
川見……
…………
覚悟は、出来ているんだろうな。今までの仕事とは比べ物にならないぐらい、しんどい道だぞ。
構いません、絶対に稲生さんについて行きますから！！
……ったく、そこまで言うなら仕方ねぇな。
わかったよ。じゃあ、ついて来い。
はいっ！！
・
・
・
よし、お前ら、集まったか。
はい、来ましたー！ 緊張するー！
どうも。
お疲れ様です。いい感じのオフィスですね！
（も、もうこんなに人が集まっていたんだ。稲生さん、流石だなぁ……）
まぁ、俺は全員の事を知っているけど。改めて自己紹介だな。俺は、稲生 恭二（いのう きょうじ）。今日からこの会社の社長だ！
俺の事は全員知っているだろうから、この辺で。次は、佐倉。
はい、佐倉 奏（さくら かなで）って言います！ 特技は……
分裂できます！
分裂できます！
え、
えぇっ！？
今年から、初めての社会人で緊張していますが、全力で頑張りますので、お願いします！！
い、今、２人に……
次は、私ですかね。改めまして、私、田中 真司（たなか しんじ）と言います。前職では、飲食店のホールで働いておりました。特技としては、まぁ……
この右手でしょうか。
す、凄い右手！！
この右手にはAIが搭載されているため、データの分析や自動入力が可能です。若輩者ですが、宜しくお願い致します。
ゆ、有能って、そういう、こと……？
次は、僕かな。初めまして、木村 優仁（きむら ゆうじ）と申します！ 前職では、ITエンジニアとして働いていました。特技は、時間停止です。
じ、時間停止？ まさか、そんなこと……
よっと。
こんな感じ、ですかね。
え、ぇぇええっ！？ い、いつの間に！？
みんなと一緒に仕事を出来るのが、楽しみです！ よろしくお願いします！！
わ、私、そんな能力、えっと……
川見ー、お前の番だぞー。
は、はい！ えっと、私、川見 玲（かわみ れい）と言いまして、特技は、そ、その……
……特にありません。よろしくお願いします……。
え、特技は無いのー？
あぁ、こいつは俺の後輩で、特に異能力は持っていない普通の奴なんだよ。
ただ、普通に仕事は出来るし熱意のある奴だからさ。可愛がってくれよ。
なるほど、そういう事ですか。
別に、会社では能力のあるなしより、きっちり仕事が出来るかどうかだから、気にしなくていいと思うよ。
あ、ありがとうございます！ 精一杯、頑張りますので！
さて、全員集まったな。じゃあ、軽くパーティーでも……
社長、まずは仕事内容について話しましょうよ。仕事内容については事前に聞いていますが、改めて社長の口からお聞きしたいです。
私も、気になりまーす！
あぁ、仕事内容だな！ 仕事については、とりあえずHPを作って掲示板に業務依頼の募集をかけた。だから、そこに来た仕事をやっていくぞ。
うんうん。
以上っ！！
うんうん。
えぇっ！？
なっ……！
社長、まさか、それだけじゃ……
まー、細かい事は、これから皆で決めていこうぜ！！
えー……
なんか、聞いていた話と……。
あ、ここ、やばいかも……
（えー、稲生さん……）
まぁ、そういう事だから、これから一緒に頑張っていこうぜ！！
……はーい。
背景画像（アイコン背景含む、一部加工あり）
・会議室 ミーティングルーム2 無人：スイレン様（illustAC様より）
・繁華街の駅前（夕方）：みんちりえ様（ https://min-chi.material.jp/ ）
・デスクの並んだオフィスインテリア：葱次郎様（photoAC様より）
