第4話 危険度★★☆
文字数 2,066文字
ナナちゃん自身も「この腕はひとを不快にさせると思うから見せないようにしなきゃ」と左腕の手首から二の腕にかけての
仕事から帰ってきたら、目覚めたらリビングの床に血だまりが出来ていたことは……数えきれないくらいあった。それほど頻繁にするわけでもないのだが。
いや、リストカットはみる側も衝撃を受けるし、意外と片づけるの大変だし、なにより傷痕が残ってしまう。
止血なんてのは手元に清潔なガーゼ、最悪ティッシュペーパーでもよいから血液が
今までも時間がかかるとはいえ、出血が止まらないということはなかった。
パックリ開いちゃって皮下脂肪が見えた時も、時間は掛かったがしっかりと流血は止まってくれた 。
それでもダメなら近所の外科に連れて行けばいいと思う。
止血し終えたら、傷が完全に塞ぐまではこまめに消毒とガーゼ交換をしておけば治っていく。最近はドラッグストアに傷痕をキレイにする薬なんかもあるから、時代は進んだなとか改めてこんなときに思ってしまったりもする。
担当医すらも「そういうときありますよね。傷痕がキレイになりやすい
実は僕自身も10代半ばの頃にどうにも出来ない思いがあって、元々外に吐き出せないタイプだったから自分自身を傷つけたことがある。
そこを踏まえて、これは
薬の大量摂取、すなわちOD(オーバードーズ)もしたりする。
ODをしたときは大抵、大量摂取による副作用によってラリっている。会話が成立しなかったり、目が血走ってギラギラしていたり。立ち上がることすら困難なときもある。
学生時代の僕は医療系だったので、救急搬送せずに様子をみていることが多い。(注:これは個人判断であって、本来は即座に救急車を呼び胃洗浄を受け入院させるべき。そして、点滴投与で薬の成分が抜けて安定するまで入院となる。)胃洗浄も接種直後であれば効果的なものだが、大抵の場合は何時摂取したのか分からないことが多い。
仕事から帰ってきたら、処方薬の残骸が大量に散らばっていたり、丁寧にゴミ箱に捨ててあるかのどちらかだ。そして、基本的には睡眠薬や精神安定剤の効果で眠ってしまっている。
点滴の代わりとして、スポーツドリンクを買ってきて彼女が目を覚ましたら「なるべくこれを飲んでトイレに行きなさい」と促すくらいだ。
もちろん、最悪の事態にならないように呼吸や脈拍などは
早ければ一晩、長くても2日間くらいでまともに会話やコンビニに行けるまで回復はしてくれる。
コンビニで思い出したのだが、ODしたエピソードで薬がしっかりと効いている状態で近所を徘徊していたことが二度ほどある。
一度目はたまたま家から3分ほどのコンビニにいたところを僕が発見したのだが、財布も持たずに来たらしく「筆ペンを買わなきゃ……」と漏らしていた。ちょうど、年賀状を用意しようかという時期だ。「この前買ったばかりだから大丈夫だよ」と説得して連れて帰った。
二度目は僕の知らないうちに起きた。
薬が抜けて、なにがあったのか尋ねてみれば、コンビニに行ったことだけ覚えていたらしい。どうやら、そのコンビニに財布を忘れてきてしまったようなのだが、肝心のコンビニがどこのコンビニか分からない。某チェーン店だというのは覚えていたのだが、徒歩圏内に3軒あるものだからどこだかそれでも分からない。
結局、しらみつぶしに問い合わせをした。親切にも店員さんが警察に遺失物として届けてくれたから事なきを得たのを覚えている。
リストカットは「もう爆発しちゃうけれど、この爆弾どうすればいいの!」で自爆してしまい、ODは「つらいから薬飲んだら楽になるかな」の延長上にあるものだと思う。ナナちゃん自身は「ストレス発散のひとつ」と言っているけれど、つくづく表現や行動の選択がヘタクソだなと感じる。
説得するにもその行動は間違っているとか言ったところで、もはや本人はそれどころじゃない問題になっているのだ。
きっと、この手のことをしてしまう方々はストレス発散の仕方を知らないことがつらいのだと思う。そうではない我々はストレス発散の仕方を知っているから、こういった行動には至らないし、異常だとか感じてしまうのだろう。
そこそこに生々しいことを話したが、ここまでが危険度★★だ。リストカットとODはここ1年くらいで行った記憶がないから、コントロールが上手くなってきたのかもしれない。
ただ、それ以上のことがまだ存在している。