第12話   同じ年

文字数 1,238文字

 クラスでは、ほとんどの生徒が裕翔より年下だった。
 入学の手続きのの書類に、クラス名が書いてあった。
「やあ」
 琢磨はそう言うと、微笑みながら裕翔の隣に座ってきた。 
「同じクラスになれたね 」
「一人だと思ってたから、一緒のクラスでほっとしたよ」
 裕翔は知り合いが一人もいないクラスで、こころ細かったので、琢磨を見て安心した。
 琢磨のキラキラの笑顔を見て、裕翔も口元を緩ませた笑顔を返した。
「僕は、ここにいる皆よりも一つ年上なんだ」
「へー、僕も同じだよ」
 裕翔は年が同じなのが分かると、さらに琢磨に親近感を覚えた。
「凄い偶然だね。仲良くしようよ」
「そう、これからもよろしく」
 琢磨は人懐こい笑顔で、裕翔に言った。
「僕は東京育ちだけど、母子家庭なので1年間働いて入学金を貯めていたんだ」
「偉いね」
 裕翔は自分が恵まれていることに気づいた。
 
「君は育ちがいいから、分からないだろうけどね」
「そんな事ないよ」
 裕翔は首を横に振って、ばつが悪そうに答えた。
「いや、見ればわかるよ。身につけているものが違うから」
 琢磨は裕翔の身なりを、上から下までなぞるように見た。
「それより、なぜここの学校を選んだの」
「美大に落ちて、祖母に勧められたんだ」
 裕翔は残念そうに、うつむき加減で言った。
「そうか、僕はパリに行きたいからさ」
「ええっ、この学校に入るとパリに行けるのとでも思ってるの?」
「いや、ファッションデザイナーになってパリで働くのさ。パリはゲイには寛容な街で、僕はゲイだから行ってみたいんんだ」
 裕翔は琢磨のじっと見つめたまま、瞬きすらできなかった。
 ゲイであることを隠さない琢磨に驚愕したのだ。
 「君もゲイだろ?同じ匂いがするからわかるんだ」
  裕翔は周りの視線が怖くて、黙ったままで何も答えられなかった。
 「心配しなくてもいいよ。皆には黙っているし、僕は女子にもモテるからバレないよ。それにファッションデザイナーはゲイが多いから、ここにいる皆は全然気にしないよ」
 まだ2回しか会ってないのに、平気で自分の性癖を告白する図太い神経の琢磨に裕翔は圧倒された。
 さすがに、東京育ちは違うと感じた瞬間だった。
 北海道で生まれて育った純朴な裕翔には、琢磨の図々しくあけすけな態度が魅力的に見えた。
 小柄だが端正な顔立ちは、女子にも人気がありそうだ。
 時折見せる上昇思考が強そうな傲慢な振る舞いと、野心を持った内面に似合わない紅顔の美少年の外見の容姿が、琢磨の魅力の一つとなっていた。
 裕翔は琢磨が、自分にない魅力の持ち主で同じ性癖をもっていることにも興味がわいてきた。
 琢磨は高いものを身につけているわけではないが、チープな物も安っぽく見せないセンスがあった。
 映画や芸術にも詳しく高級ブランド品の知識もあり、話題も豊富で話していて飽きることがなかった。
 何よりゲイというのが、仲間意識となり二人の距離を急速に縮めて行く要因になった。
 それから、一ヶ月後には恋人関係に発展する。
 
 


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登場人物紹介

上島美樹 フランス大使館に勤める女性で裕翔の幼馴染

中村裕翔  イケメンで美樹とは幼馴染、レディースのファッションデザイナーを目指すがゲイであることに悩む男性

柴崎琢磨  裕翔の恋仲になる美男子だが小柄な男性、裕翔を同じくファションデザイナーを目指している。出世のためにゲイのように装うバイセクシャルだが、マレで有名になる。


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