第6話(9)

エピソード文字数 1,564文字

「…………従兄くん。力が足りなかったようね……」
「にゅむ……」
「師匠。もっとパワーアップ出来んが?」
「できないよ! 全力でやりました!」

 今のは、渾身。こんな時に出し惜しみするかってんだよ。

「にゅむむぅ。これ以上(いじょー)強くならないって、ことは……」
「鎌では、壊せないわね。別の手を考えましょう」

 そだね。そうしましょう。

「はぁぁ、いけると思ったのにな……。俺の閃きなんて、所詮この程度なのか――!!

 我が頭脳の、意地なのだろうか。どこからともなく、最高の手が降りてきた。

「ねえっ。英雄の力も含めてなんだけど、キミら三人の中で一番力があるのは誰?」
「それは、レミア先生やね。シズナ先生、そうやったろ?」
「ええ、そうね。レミアさんは魔王であり勇者だから、この中では一番ステータスが高いのよ」
「ああ、なるほどね。それならば今回は、アナタに決まりだな」

 俺は、しゅっ。レミアの背後に回った。

「にゅむっ? ゆーせー君、後ろで何するのー?」
「ふふふふふ。こうするんだよ」

 カシャーン! 俺は彼女の背中に、『サウザンドライド』の鞍を嵌めた。

「にゅむっ!? にゅむむ!?
「この鞍は、俺が使うとその生き物の力が1000倍になる。この状態で『生き物であるレミア』が投擲すれば、破壊可能なんだよ!」

 仮に英雄が時速1000キロで投げれるとしたら、時速1000000キロ。この速度で何回もやれば、5分以内の破壊も夢ではない!
 我が頭脳、ありがとうっ。お前のおかげで光明が差したよっ。

「ワシらぁは召喚獣用やと思いよったけど、人先生も生き物。やるぜよ師匠!」
「け、けれど、それは乗らないといけないのよ? どうやってレミアさんに乗るの?」
「そんなの決まってる。おんぶだよ」

 これも立派な、『乗っている』。故にOKなのでござる。

「居心地が悪いだろうけど、頼む。レミアが適役なんだよ」
「にゅむっ、そーゆーことならやりますーっ。はーいおんぶだよーっ」

 俺はレミアに背負われ、セット完了。海パンの少年が本格競泳水着の少女におぶられるという、シュールな画が出来上がった。

「英雄の力で1000倍となると衝撃は大きいから、ピッタリ同じ場所に当てなくてもいい。適度に肩の力抜いて、丁寧に投げてくださいね?」
「にゅむむんっ。その条件(じょーけん)さんなら、何回でもいけちゃうよー」
「……それは、前振りな気がしてきた。1回練習しとくか」

 シズナにお願いして石ころを持ってきてもらい、ソレをレミアに握ってもらう。
 練習、とっても大事。ちゃんとしておこう。

「魔王勇者様。畑の外にある『ピマ彦農園です』と書かれてる看板の、ピを狙って2回投げてみて」
「にゅむっ。てやーっ!」

 ゴビュ!! ドゴォォォォォォォ!!×2
 一投目は、ピの右横。二投目は、彦の下にヒットした。
 いくらピッタリでなくていいとはいえ、これは離れすぎ。一般的にはまあまあコントロールがある方なのだが、この場合はダメとなる。

「にゅむむー、おしかったよー。でもでも、間近で投げたら当たるよね」
「そりゃそうだが、アナタねぇ。その間近に行くと、1000倍じゃなくなるでしょうが」

 爆弾の力により、『サウザンドライド』は無効化。レミアは生身の力×1倍でブンッ、バチンッと弾かれ大失敗になってしまう。

「……従兄くんの、言う通りね。どうしましょうか……?」
「何回も失敗しよったら時間切れになるし、ワシらぁもコントロールは良くないぜよ。師匠、別な名案は浮かばんろ?」
「はっはっは。それが、また浮かんじゃったんですよ」

 今日の僕は、どうしたのでしょうか。我が頭脳が再び編み出しちゃいました!
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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