京急快特

文字数 1,514文字

2024年になった。
 まだまだ寒い日々が続く中、会社員のノリタカは、今日は、仕事が休みだから、近所のショッピングモールへ出かけた。そして、例えば、紀伊國屋書店で雑誌を買い、ユニクロで、ミッキーマウスのトレーナーを買い、そして、うなぎ屋で鰻丼を食べて帰ろうとしていた。
 その時、一回に、アイスクリーム屋さんがある。
 ノリタカは、最近、ここのアイスクリーム屋さんについつい入ってしまう。
 理由は、至って、簡単で、ここの店員さんが、好みだからだ。
 目がぱっちりしている。
 そして、頬がふっくらしている。
 そして、女優で言えば、まるで長澤まさみを連想させる顔立ちだった。
 その時、ノリタカは、いつも思っていた。
「彼女を、デートに誘えないだろうか?」
 と感じていた。
 それで、この日だった。
「ご注文、何になさいますか?」
「チョコレートとコーヒークリームを」
「はい」
 と言った。
 その時、ノリタカは、長澤まさみ似の店員さんに
「今度、お台場へ遊びに行きませんか?」
 と言った。
 すると、彼女は
「申し訳ございません。駄目です」
 と彼女は、さらりと言った。
「400円になります」
「はい」
 と言って、ノリタカは、アイスクリームを食べて帰った。
 一事が万事、ノリタカは、こんな調子だった。
 確かに、気が弱かった。
 だから、ノリタカは、40代後半になっても、仕事はできないし、彼女もできない。本当は、あともう一押しが、ないと分かる。
 いや、お台場でなくても良いと何かの本にあった。
 本当は、ノリタカは、京急快特が好きだから、「電車が好きです」と言えば良いと思う。
 ノリタカは、会社員の男性だが、よく京急快特やら東海道線の車両が好きで、住んでいる横浜から週末は、写真を撮りに出かける。
 そして、今日は、住んでいる横浜駅から、これから、品川駅まで、京急快特で行こうと考えていた。
「~歩いても歩いても小舟のように」
 といしだあゆみ『ブルーライトヨコハマ』が、流れてきた。
 そして、ノリタカは、スマホの写メで、パチパチと京急快特青砥行きを撮ろうとした。
 その時だった。
 目の前に、一人の女性の写メを撮ろうとしているのが、いた。
 良いアングルで撮っている。
 そう感じた。
 ノリタカは、少しだけ、興味があって、彼女が、どんな顔をしているのか見たくなった。
 実は、鉄子は、珍しいと思った。
 そして、悪いと思いながら、彼女の顔を観た。
「あれ?」
 と思った。
 そう、それは、アイスクリーム屋さんの彼女だった。
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 京急快特青砥行きが、横浜駅のプラットフォームに入ってきた。
 サイレンと共に、入ってきた。
「あれ?」
「あの」
「はい」
「いつも私のアイスクリーム屋の方へ来ている方ですね」
「ええ」
 と言った。
 ノリタカは、自分が不審者になってはいないか、不安だった。
「あの」
「はい」
「僕、京急快特やら東海道線が、好きで、週末になるとよく写メを撮りに来るのです」
「え、そうなんですか?」
「はい」
「私」
「はい」
「自分が、鉄道オタクなので、周りにカミングアウトできなくて」
「でも」
「はい」
「今、カミングアウトしたじゃないですか」
「あ…」
「そうだ」
「はい」
「今日、時間、ありますか?」
「はい」
「このまま、次の京急快特青砥行きで、都営浅草線で、新橋あたりまで行きませんか?」
「え?」
「あそこに鉄道博物館があるんですよ」
「はい」:
「一回、じっくりお互い、電車のこと、語り合いませんか?」
 ノリタカは、そのまま、京急快特青砥行きに乗って、泉岳寺駅を経由して、新橋駅の近所の鉄道博物館へ行ったらしい。そして、吉野家で牛丼を食べながら、じっくり電車の話をして付き合いが始まったらしい。<完>
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