第3話 出産

文字数 505文字

そんな風に清潔な手で触られているうち、聡の身体には子供が宿り、自然現象と同じく十か月が過ぎた頃、出産のときがきた。

聡は無痛で眠っているとき女の赤ちゃんを産んだらしいが、顔をちらっと見た後は、どこかに連れて行かれ会ってもいない。

この不自然な分娩は一度しかできないらしく、次の出産は聡が産んだ子供が担うらしい。そうやって、次の世代、また次の世代と、だんだん人工出産が容易になるようだった。



来たときと同じようにまた裸で看護師たちに清拭され、着ていた服も洗濯されたものを返してもらった。カーソンの『サイレントスプリング』も戻ってきた。最後に、聡や他のピンク色の服を着た男性の身体から取られたDNAが保管されている部屋を見た。



元の服を着て、またあのアクトロスがやってきて、聡を元の世界に連れて行った。
驚いたことに、十か月と思われた時間が、一日も経っていなくて、潮見さんと分かれ、アクトロスに乗せられたあの時点に戻った。

「元気でな」
ドライバーの男は相変わらずスレンダーなジーンズを着て、聡を抱き寄せて、最後に股間に手を置き、名残惜しそうにもみほぐした。聡は、腹の立つことに、それが嬉しくて、やはり飛び上がりそうになった。







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