第1話 アクトロスでの誘拐

文字数 1,312文字

アクトロスは、メルセデス・ベンツのブランドトラックである。もちろん〇菱ふそうも素晴らしく安定感のある、ハイパフォーマンスのトラックを製造しているが、アクトロスの特色は、ドライバーが快適・安全に運転できることである。

クレセント製薬会社の若い研究員の長尾 (さとる)は、上司の潮見達郎に愛を告白された。いや、ほぼ告白されたに等しかった。彼は、聡の保護者である藤沢良が勤める京都の大学まで行って、聡と養子縁組させてくださいと頼んだのだ。藤沢氏は驚いたが、潮見の正直な性格を知っていたので承諾した。彼はすぐ弁護士に手配して、潮見のところに書類を、聡の住まいである研究所の寮にそのコピーを送った。保護者の藤沢氏と別れて寂しかった聡は有頂天になった。

長尾聡は、土曜日潮見と駅前の中華で昼食を食べた後、萌原市の中央図書館から連絡をもらい、予約していた本が入ったので、受け取りに行った。予約した本は、レイチェル・カーソンの『Silent Spring』(沈黙の春)だった。翻訳は読んでいたが、ちょうど春になる前に原書の英文を読んでみたくなった。幸い、聡の住まいである萌原の寮には、周辺が化学肥料で汚染されていないらしく、いろんな種類の可愛らしい小鳥が来ていたが。



冬の夕暮れの帰り道、聡は国道の脇を歩いていた。すると、日本では見るのも珍しいメルセデス・ベンツの大型トラックが通りがかり、彼はこの大きな車両を見上げた。



アクトロスが不意に停車し、キャビンのドアが開いた。
「Kann ich dich mitnehmen?」(乗るかい?)
と中にいたドイツ人の男が言った。車は左ハンドルだった。
彼はちょっと先の駐車場で停車して、一息入れるつもりだと聡に言った。
男はまったく知らない人間だったが、親切そうに見えた。駐車場にトラックを停めると、キャビンにゆったりと座り、聡には奥の寝台を示した。



それから運転席と助手席の間にあるたっぷりした物入れから、オレンジジュースや冷たいサンドイッチ、ヨーグルトを出して、気前よく聡にもくれた。昼食を食べてから、だいぶ時間がたち、若い聡は空腹だった。駐車場のあたりはとっぷりと暮れていた。二人が夕食を食べてしまうと、男はキャビンの隅にあるコーヒーメーカーで香り高いコーヒーを入れ、それも頑丈で大きなコップで聡にくれた。コップはあらかじめ温められていた。聡は大型トラックの装備の良さに驚いた。

「遠慮するな」
とドライバーは笑みを浮かべて言った。彼はスティールブルーのTシャツを着て、同じ色合いのジーンズの長い足を広々としたキャビンに伸ばしていた。

しかし、聡がその美味しいコーヒーをぐっと喉に流し込んだ瞬間、彼の意識は途絶えた。次に気づいたときは、相手も自分も素っ裸で、温かいキャビンの中にいた。照明は落とされ、男は聡の大事なところをつかんで繰り返し手を動かした。

その慣れた手つきに、聡は思わず声を漏らした。
「いいぞ、いいぞ」
と男は聡をなぶり続け、すっかり用意ができたところで、それを離さないまま、後から羽交い締めにし、何度も何度も挿入した。
男の身体も手つきも手慣れており、聡の身体は自分の意志と関係なく男の思うがままに歓ばされた。





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