「わが孫よ、それでいいのか」

文字数 1,050文字

 例によってかなり昔の話である。
 私は当時の女友達(この女友達がまたものすごく個性的なのだが、今回は割愛する)の誘いで、飲み会に参加した。
 いろいろな人が参加している飲み会だったので、メンバーは知らない人のほうが多かった。

「どうもー、こんにちは!! いっぱい飲んでますか!?
 すると、私、めっちゃ元気です! というノリで、私と女友達が座っていたテーブルに知らない女性、仮にC子がやってきた。

 私と女友達は『誰だよコイツ』というのが本音だったので、まあ……みたいな適当な応対をした。
 しかし、近くに座っていた男性陣はC子に対して食いつきがよく、お酌をしてもらっていた。

「私、去年厄年じゃないのに厄年だったんですよ!!
 そこで盛り上げようとしたのかなんなのか、C子は唐突に自分語りをはじめた。
「まず、彼氏と別れて、スキーに行ったら骨折して」
 当時、彼氏ができたことがなく、スキーにも行ったことがない私にとってはむしろうらやましい話ではあったのだが、ここまではわかる。

 だが、オチがいけなかった。
「それで、じいちゃんが年末に死んじゃったんですよ!!
 男性陣は「それ、お祓いに行ったほうがいいんじゃない?」などと笑って返していたが、私は『オチにされたじいちゃんの立場は……』という気持ちでいっぱいだった。

 私はもともと、人の死で笑いをとるということ自体が、どうも苦手なタチだ。
 私はお笑いが大好きで、一時期は地下芸人のライブに通い詰めていたほど。地下芸人たちは不謹慎ネタを披露する人も多かったが、だいたいの不謹慎ネタで爆笑できていた。

 それでも、人の死をネタにする笑いだけは、どうしてもダメなのだ。どんなに面白いはずのネタだとしても、笑えない。
 なぜなのかと言われたら自分でもよくわからないのだが、好みだから、としか言いようがないだろう。

 そんなわけで、私はC子とは仲良くなれなかった。
 もしかしたら、深く話してみたらすごく気が合うとか、そういう可能性もあったかもしれない。
 だが、人の死、おまけに身内の死をネタにしている時点で、仲良くなれないだろうと判断したのだ。
 せっかく笑いをとるなら、明るい話題でとったほうが無難だと思うのだが……。

 初対面の複数人の前で、身内の死をネタにして笑いをとろうとしたC子。めちゃくちゃメンタルが強いことは間違いなさそうだ。
 死後も孫にネタにしてもらえて、案外じいちゃんも喜んでいるかもしれない。

「わが孫よ、それでいいのか」
 と嘆いている可能性もなきにしもあらずだが。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み