第3話(2)

エピソード文字数 2,155文字

「ゆーせー君っ、成功(せーこー)おめでとーっ。それで、幽霊(ゆーれー)さんはどこにいるの!?
「ワシ、霊視に興味あるがよっ。コツとかあるが?」
「お二人とも、あれは全部嘘だよ。恋人の外見を聞かれたから、アナタ達を合体させただけです」

 ゴスロリと土佐弁。このワードで気付きなさい。

「なーんだぁ。怖かったよー」
「いごっそう。ワシ、いごっそうだったぜよ」

 いごっそうは土佐弁で、意味は頑固で気骨がある男。
 金堂フュルは頑固じゃないし気骨がありもしないし、男でもない。うろ覚えの知識を出すなよ。

「……激しく頭痛がしてきた。この話は打ち切りましょう」
「にゅむっ。だったら、お待ちかねの睡眠タイムだねーっ。ご飯を食べたら眠ろーっ!」

 レミアちゃんが跳ぶように立って、ルンルンとキッチンに入る。そしてフュルはというと、『いごっそう』を連呼していた。
 シカトすることにした。

「にゅむむんっ、やっとネムネムできるよー。みんなで川の字になって寝よーね」
「いごっ――それはいいぜよっ。師匠、そうしようや!」
「近くにいる方が安全だから、それは構いません。しかし全員寝ちゃいかんでしょ」

 敵は、いつ何時襲い掛かってくるか分からない。意識がない時は昨日の防御壁を作れないと言っていたから、誰か一人は起きて見張るべきだよね。

「1回目の襲撃から、結構時間が経ってる。ぼちぼち来るんじゃないの?」
「そう思うにゃぁ。いられぜよ」

『いられ』とは、せっかちな人を表す土佐弁。次やったら、全力で飛び膝蹴りを打ち込んでやろう。

「レミア。悪者さん方が、来そうだよね?」
「そーだねー。そーゆー予感がするよっ」

 目をしぱしぱさせながら、魔王が同意する。これからはこの子にだけ、話しかけたいなぁ。

「そしたら、見張る順番を決めよう。護ってもらう俺が最初を務めるんで、どっちが二番目になりますか?」
「にゅむんっ、最初は原因(げーいん)を作ったあたしでいーよ。ゆーせー君がネムネムどーぞ」
「師匠より先には寝られんぜよっ。そんな輩は、侍の風上にもおけんがよね!」

 魔王と勇者が両の掌を上にして、どうぞと促してくる。この人達は色々とヘンテコだけど、なかなか他人想いなんだよねぇ。

「ううん、こっちこそいいっての。母さん作戦に付き合わせたお詫びだよ」

 俺は頭を左右に振り、感謝を込めて一礼。それから2人に――受け入れさせようとして、重要な問題に気が付いた。

「そうだ。俺って敵の気配を読めないから、奇襲されたら死ぬわ」

 家内は言うまでもなく、窓以外は壁。よって360度は見回せず、外で例の空間を展開して壁越しに攻撃されたらアウトだ。

「弱ったな……。俺だけ役立たずだ……」
「んーん、そんなコトないよっ。あたしたちだって気配を読めないもんっ」

 魔王様はとびっきりの笑顔で、ゾッとする発言をされた。
 ぇ。ぇぇぇっ!?

「ま、待てっ。アンタら感じられないのっ?」
「自分の力が凄すぎて、感知センサー的な物が狂ってしまうがよ。ワシらぁが察せるのは、それでも感知できる強大な存在や力――英雄先生とか究極奥義先生だけやね」

 なんということでしょう。3人全員ポンコツでした。

「思い返せば、レミアはレッドデス族に気付いてなかったもんなぁ。俺ら、家にいたらヤバいじゃん」
「んーん、そんなコトもないよー。壁さんが壊れたり物音がした瞬間に、反応(はんのー)すればいーだけだからっ」
「ワシらは殺気を感知したら、ゴロゴロしててもコンマ1秒で動けるきねぇ。師匠もそのくらいは出来るろ?」
「できるかボケ。やれるなら、普通の高校生をやってねーですよ」

 それが可能だったら、ここにはいない。今頃SW○Tとかで活躍してるっての。

「っっ、なんと……! 日本人がこんなだと、黒船にやられるぜよ……!」
「もう黒船は来ないからな? 真剣に話そうな?」

 龍馬オタクを軽く睨み、閑話休題。ぼくは脱線を戻します。

「もし俺が当番の時に来たら、高確率で殺される。二人には申し訳ないが、家ではなくお外で休んだ方がいいね」

 全方位を目視できる場所だったら、こんな日本人でも察知できる。これがベストな選択だ。

「ゆーせー君ゆーせー君っ、それならあたしたちが交互(こーご)に監視をするよー。こっちは身体が丈夫(じょーぶ)だけど、ゆーせー君は一般人さんだもん」
「師匠は、ワシらに比べて体力がないきにゃぁ。ここは、ボクらに任せてよ」
「フュールー。ウトウトして、後半素になってるぞー」

 2人、特にこの子は限界。少なくとも今日は、そうしとくべきだ。

「ウチから徒歩20分程度のトコに、人気も遮蔽物も殆どなく、トイレ水道ベンチ日陰が備わった公園がある。キミらが睡眠欲を満たすまでは、そこにいましょう」
「かたじけない、そうするぜよ。……レミくん、ご飯食べて早く行こ……」
「う、うんっ。素早く朝ご飯を用意(よーい)するよーっ」

 もう完全に通常モードになってるフュルを見て、レミアが大急ぎで準備開始。その後俺らはトーストと目玉焼きとサラダを平らげ、目的地である『織覧駆(おらんく)公園』へと発った。
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登場人物紹介

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

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