きっかけは、初恋

文字数 1,122文字

わたしが本気で聖書を読みたいと思ったきっかけは、初恋だった。
中学2年生の時だ。
クラス替えで、初めてクリスチャンの子と同じクラスになった。
もちろん、通っていた教会に同世代のクリスチャンは大勢いた。
全国の教会から子どもが集まる夏のキャンプに毎年参加していた。
いくつかの教会が合同で行う集会で同世代のクリスチャンと仲良くなっていた。
しかし、同じ学校に通うクリスチャンと同じ教室で学ぶ状況は初めてだった。

彼とは中学1年の時から知り合いだった。同じ部活だったからだ。
同じクラスになって初めて、彼が家族で教会に通っているクリスチャンと知った。
「あいつアーメンだから」と同じクラスの男子たちに悪質なからかいを受けていた。
彼は社会の授業の時に先生に指名されると、聖書の知識も交えてスラスラ答えた。
すると教室でクスクス笑いが起きた。「キリスト教くさ」と先生も笑った。
わたしは聖書の話をこんなに自分の言葉で話せてかっこいいと思っていた。

「わたしも教会に通っているよ」と彼に話したかった。
しかし、わたしは小さい時から教会に通っていても
彼のようにキリスト教や聖書の知識がない。
同じ部活とはいえ、男子生徒に個人的な話をするのも恥ずかしい、
部活や教室で「ヒューヒュー」なんて言われるのも恥ずかしい。
何より自分が教会に通っていると周囲に知られることが怖くて言い出せなかった。
彼とそこまで親しくないのに、彼の味方になることが怖かった。

忘れられない光景がある。
放課後、彼が男子トイレでからかわれているのを見た。
何かできないか先生に報告しようか、意味もなく男子トイレの前を何度も通り、
中の様子を横目で見ていた。
「なに覗いているんだ!」と、1人の男子に気づかれた。
混ざりたいのか?男子トイレを覗くなんて変態だぞ!と、大声で言われ、動揺し、
廊下を走って逃げた。階段を4段飛びで逃げた。悔しくて情けない記憶だ。
当時に戻って男子生徒たちに啖呵を切り、彼を助ける場面を何度も想像した。
「トイレでコソコソいじめをやっているあんたたちダサすぎ!」
「 集団で1人をからかうのは卑怯者!」
「自分の信じるものがあって、心に軸のある彼の方が、
信念の無いあんたたちなんかより強いしかっこいい!」
でも、きっと戻ったとしても何も言えないだろう。

悪質なからかいを受けても聖書の言葉を語る彼との出会いがきっかけで、
聖書を深く学び、自分の言葉で聖書を語れるようになりたいと思った。

結局、彼には自分が教会に通っていることを言い出せなかった。
キリスト教主義の高校に進学したら、もしかしたら彼と同じ高校に行けるかも、と
ひそかに考えていたが、彼は中学卒業後、他県のキリスト教主義学校の寮に入った。
卒業後一度も会っていない。
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