第1話

文字数 1,053文字

 24時50分。
 生と死が同居する時、誰もが自分と向き合い、自分が何者なのかを探し始める。
 そう、みんな知りたがっている。自分が何者で、どこからどこへ行こうとしているのか。
 自分は本当は何がしたいのか、
 自分が社会に、この世界に果たすべき役割を探している。
 
 強くありたい、誰かの期待に応えたい。

 ――けど
 応えられない自分がいて、そんな自分が嫌になって、
 いつの間にか涙が溢れて。

 それが悲しい涙なのか、悔しい涙なのか、その涙の訳を考えることすら嫌になって、
「助けて! 誰か、助けて!」

 叫びたいのに、叫ぶことすら(はばか)られて。

 自分はそんなに強くない。
 弱くて、孤独で、後悔ばかりで、落ち込んで、自分の居場所なんかない……。
 私なんか、わたしなんか……。

 そう思うのに、自分の心の奥底では、そうじゃない、そうじゃないと誰かが叫んでいる。

 強くなくていい。弱くていい。
 誰かにすがって、誰かの助けを求めていい。
 それは弱さじゃない。それは、生きるために一番大切な「勇気」。
 
 誰かには簡単に出来ることが、私には出来ない。
 でもね、あなたには簡単にできることが、他の人が同じように簡単にできるとは限らない。
 あなたが気付かないだけで、そんなことが実はたくさんある。
 あなたは他の誰でもない、あなたであって、他の誰とも似ていない。
 だから――

 比べないで。

 あなただけじゃない。
 この世界の多くの人が、哀しみや苦しみ、何かしらの孤独感を抱きながら生きている。
 そして、ほんの一握りの希望をその手の中に握りしめている。
 
 あなたは、あなたに出来ることを、自分が好きで一番大切にしていることを大事にして欲しい。
 一番大切なことは、一番大切なことを一番大切にすること。
 あなた自身をあなた自身が大切にすること。
 あなたが頑張っている姿を見ている人が必ずどこかにいる。あなたが気付かないところできっとあなたの姿を追っている。
 
「そんな人なんかいない! だって、自分はこんなに、こんなに頑張っているのに――」
 
 いまのあなたはそう言うかも知れない。
 でも、「今のままじゃいけない」と、あなたがそう思う心が、あなたを未来に導く力になる。

 総ての時間は未来に繋がっている。
 総ての過去を引き連れて。
 あなたが頑張ってきた時間は、確実にあなたの足下に降り積もって、きっとあなたをあるべき場所に導いてくれる。
 だから、今夜は泣いていい。愛しい誰かを想えばいい。
 明日の24時50分には、きっと今とは違うあなたがいるはずだから。
 
 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み