第１話

　ＭＳ社の下請けに勤めて早１年。仕事なんてほとんどなれず、馬車馬のごとく働いてもミスばかりしては怒られ次第に心を閉ざしていった。ホームをフラフラしてたら、私は電車にぶつかっていた。
　次に目を開けると私は桜の木になっていた。
　「え……死んだの？」
　目の前には桜の花びらがひらひら舞っている。今日は休日だったようで目の前に座っているお母さんや子供の姿はキラキラしていた。一本しか咲いてない自分の姿が艶やかだったため、死後の世界と一瞬勘違いした。だだっぴろい公園に咲く自分の姿に、「異世界転生」のような無敵感はなかった。
　「あぁ私桜の木に転生してしまったのね。」
　服を着てないことが少し恥ずかしかったがそれ以外に別段驚くことはなかった。どうでもよいのだ。どうせ現実なんて面白くない。
　ここはどこだろうか、人はそこまで多くないのでどうやら地方みたいだ。目の前のはしゃいでる子供達と談笑している母達をみると両親に一言くらい残しておくべきだったと少しばかり後悔をした。
　ぼーっと彼らの姿を見ていたら時間はどんどん過ぎていった。あの時の子供達はバッドの素振りをしたりサッカーの練習をしに来ていたが、ここ最近ではさらに小さい子供も連れてきていた。
　談笑していた母達も杖を突きながらやジョギングしながらなどでこの公園に訪れた。この桜の木は地元では有名なスポットらしく春になると地元の人がこぞって見に来ており、そこには会社の上司もいたが何の感情もわかなかった。
　気付いたら子供達は高齢になり、母達は姿を見せることはなくなった。さらに小さい子供は遠くに行ったものや地元で働いているらしき大人に変わっていった。私は誰よりも長く生き、多くの人生を見届けた。春には人が集まってきた。
　１００年は経ったであろうか、自分の名前すら忘れた。いや来た時から覚えてないか。人の流れは様々なものに変わり、以前までいた家族はあまり見かけなくなっていた。私は暇な時間に何度か人間だった頃を思い出していた。