第15話大学院生 青山

文字数 891文字

午後4時、若い男性が入って来た。
飛鳥を見て、うれしそうな顔。

その飛鳥も笑顔。
「おや、青山さん、お元気そうで」
青山は、スタスタと歩き、飛鳥の前に座る。
「青山さん?照れくさい、青山でいいのに」

飛鳥は、含み笑い。
「いや、お客さんだから」と、青山の前にレモン水を置く。
青山は、レモン水を半分飲んで、ひと言。
「一緒に院生をしたかったな」
「飛鳥の論文が好きでね、実に残念」

飛鳥は、首を横に振る。
「いや、ここでいいよ、いろいろ学べるしさ」
青山も、頷く。
「そうだよな、ここが無くなったら泣く人も多い」
「親父さんは、まだイタリア?」

飛鳥
「今はフィレンツェらしい、マキャヴェリの家に行くとか」
「まあ、物好きなことだ」
青山は、少し笑う。
「せっかく自由になったんだ、好きにさせておけ」

飛鳥は青山の前に、ホンジュラス珈琲と、パンケーキを置く。
「パンケーキは甘めだよ」
「甘い物好きだから」
青山は、パンケーキを一口。
「美味しい」
「でも、これは飛鳥の味ではない」
「我が愛しの香苗姫の味」

飛鳥が眉をひそめると、キッチンから、香苗が顔を出した。
「青山君、ふざけたことを言わない」
美鈴も寄って来た。
「青山さん、この前は、私に、愛しの姫って」

青山が飛鳥を見ると、飛鳥は横を向く。
「自業自得」
青山は、そこで大笑い。
「言いたいことが言えていいや、ここは」

飛鳥は話題を変えた。
「次の現地調査は?」
青山は、真顔になった。
「教授は遠野村って言って来たけれど」
「俺は・・・」

飛鳥
「やはり西の方に?」
青山
「出雲かなあ、あっちの熊野大社を見たい」
「あっちが本家かもしれんな、マジに」

飛鳥は少し考える。
「大きな社って意味かもしれないし」
「もともと、熊野は、葬送の地みたいな、普通名詞」
「古代の葬送の地は山」
「山に熊が出るとか、コモル山とかさ」
「いずれにせよ、早く開けた地方の大社のほうが、古い可能性が高いけれど」
青山
「たまたま出雲国風土記が残っていたから、との説もあってさ」
「他は散逸していて、本当の実態がわからない」

飛鳥
「彼女と行ければいいのに」
青山は苦笑い。
「出雲大社に祈ることにする」
「飛鳥は・・・いらないか」

飛鳥は、横を向いている。
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