第3話(3)

エピソード文字数 2,518文字

「グッドモーニンですわっ。絶好の発見日和ですわね!」

 6時15分、正門の前で麗平さんと再会。台詞は若干意味不明だが、面倒なのでツッコまずに門を飛び越えましょう。

「一番手は、あたしーっ。てやっ」

 レミアはかるーくジャンプして、ゆうゆうと1メートル60近くある門を飛び越える。相変わらず英雄は超人的だ。

「二番手は、私が貰いましょうか。で、でもこの角度だと、従兄くんにスカートの中が見えちゃうかも……っ」
「ボクは目を閉じてるから見えないよ。ほれ跳べ」
「……従兄くんのいけず」

 跳躍の音と、着地の音が聞こえた。はいシズナも終了終了。

「三番目は、ウチが行きますわっ。やりゃっ!」

 ゴンッ
 麗平さんは、門の上の辺りに激突。ジャンプがやや足りなかった。

「も、目測を誤りましたわ……。だけど次こそはっ!」

 麗平さん、リトライ。あらゆる面に細心の注意を払ってジャンプした!

『優星、高さは足りてる。今度は飛び越えられそうだな』

 彼女はアクティブお嬢様系だけあって、運動神経がかなりいいからねぇ。そこに0・1%とはいえミラルの力が加わるのだから、


 ゴンッ ドシャ
 右足が門の最上部に当たり、彼女はバランスを崩して頭から向こう側に落下した。


 あ~。いくらミラルの力があっても、また目測を誤れば越えられませんよね。

「麗平さん大丈夫? ケガはない?」
「ええ、ありませんわ。むしろ朝なのに星が見えて、得をした気分ですわね」

 そっかぁ。この子がいいならいいんです。

「ゴメンね活美ちゃんっ。鳥さんに手を振ってて、反応(はんのー)が遅れたのー」
「わたくしめは反対側におりました故、即座にお助け出来ませんでした。麗平様、申し訳ございません」
「私は密かに、怒られ作戦を練っていたの。ごめんなさいね」

 それぞれ謝罪をし、サクも飛び越えて麗平さんを介抱する。
 三人中、まともな理由は一人だけ。相変わらずふざけた集団だ。

『優星、おい優星。ふと思ったことがあるんだよ』

 なんとも言えない気分になっていたら、そんな声が届いた。
 ん? なあに?

『門の手前にはお前一人、門の向こうには女子四人。これはまるで、男女の間にある心の壁が具現化したみたいだな!』

 そうだね。わかったから、当分出てこないでね。

「さて、最後は俺だな。平凡な男は、よじ登って……クリア」

 こうして全員侵入。早速、宝探しを始めるとしよう。

「サクには、双剣を見つけてもらいたいんだよ。頼みます」
「キミに、世界の命運がかかってるんですの。お願いしますわ」
「はい、承知致しました。わたくしめ如きが世界を御救いできるなんて、感無量でございます……!」

 サクはほろりと感涙し、スッと瞑目する。
 なんでも彼女は集中すると、半径74メートル内にある名刀名剣を感知できるんだとか。しかも土の中や封印されているものは勿論のこと、空間に切れ目などを入れて隠しているのまでOKだそうですよ(※範囲が74メートルなのは、初代が初めて受けたテストの点数が74だったからなんですって。とことんアホですね英雄って)。

「どーかなどーかなー。1発で見つかるかなー?」
「………………反応は、ありません。この辺りにはないようです」
「やはり、そう簡単にはいかないわね。皆で歩きましょうか」

 まずは塀に沿って敷地内を一周し、それで発見できなければ74メートル程度内側に入ってもう一周する。これを繰り返せば、いずれ見つかるのだ。

「皆様、進行方向は左と右がございます。右回りと左回り、どちらに致しましょう」
「どっちでも一周できるんで、サクの好きな方向でいいよ。どうする?」
「わたくしめに、そのような判断をする資格はございません。聡明かつ幸運の持ち主である、皆様がお決めになってください」
「そ、そう? だったら、右回りにしようか」
「右、ですね。仰せのままに」

 こんな感じで、お宝発見隊は出発。サクは目を瞑っているので俺が支えつつ、トコトコ進む。

「どうですの? ビビッと来ましたか?」
「…………すみません。まだ、ありません」

 トコトコトコ。トコトコトコ。

「一周の、約三分の一に到達したわね。そろそろありそうな予感がするわ」
「………………申し訳ありません。まだ、ありません」

 トコトコトコ。トコトコトコ。

「にゅむ、3分の2まで来ましたー。くるかなくるかなー?」
「……………………大変言いにくいのですが。まだ、ありません」

 トコトコトコ。トコトコトコ。

「あ。一周したな」

 こんにちは。スタート地点に帰って参りました。

「見つからなかったのはきっとわたくしめが居るからですっ! これより刀を真上に放り投げてこうべを垂れ、自ら打ち首をしてお詫びします!」
「コラ落ち着きなさいっっ。見つからないにアナタは関係ないよっ!」

 俺プラス皆で必死に宥め、どうにセルフ打ち首を阻止。今度は、約74メートル内側に入って出発する。
 ウチの学校は、直線距離だと縦横148メートルもありませんからね。こうすれば絶対に発見できるのです。

「……こ、困りました……。皆様、まだ見つかりません……」
「安心して、サク。必ず出会えるから」

 スタスタスタ。スタスタスタ。

「……過ぎた時間を鑑みると、三分の一に到達したようです。けれど、双剣様はまだ見つかりませんね……」
「そ、そんなの問題ナッシングですわよっ。色紙クンが言ったように、近いうちに出会えますわっ」

 スタスタスタ。スタスタスタ。

「……恐らくは、三分の二を通過致しました……。しかし未だに、見つかりません」
「サクさん、心配しなくていいわよ。直線で148メートルないのだから、ゴールするまでには必ず反応があるわ」

 麗平さんの記憶は確かでサクの能力は本物なのだから、絶対にそうなる。だから俺は、口笛を吹きながら両足を動かし――


「にゅむっ? ゴールしちゃったよ……?」


 ――反応がないまま、二周目が終わってしまった。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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