第79話  黒澤家の心強い味方 1

エピソード文字数 2,502文字

 ※


 休日も終わり、四月はこの一週間を残すのみとなっていた。


 来週には大型連休も控えており、その日が近づく度にモチベが上がるのは仕方がない。


 今年は五連休なので期待するなというのが無理な話だ。



 入れ替わり体質にとっては長期休暇ほど嬉しいものは無い。


 休日中はサイクルも全く気にしないでいいので、自由気ままに入れ替わる事が出来るからな。


 それがどれほど嬉しいのか。


 これはきっと……年がら年リミット制限に追われている俺達にしか分からない感情なのだろう。

あ、黒澤くん! おはよっ!
あれ、染谷くん? おはよう

 通学途中に染谷くんと遭遇すると、仲良く学校へ向かうのだった。

こっちの道だったっけ?
僕は色々道順変えたりするからね
 染谷くんとは初めて通学中に出会ったので、そんな会話をしていると、彼は俺と一緒に歩いている凛に視線を向ける。
あっ。もしかしてこの子が弟さん?
 染谷くんが振ってくると、凛は笑顔で受け答えしていた。
黒澤凛です。よろしくね、お兄ちゃん

 凛! お、お前……

 俺が言わなくてもちゃんと挨拶してるじゃないか。

どうも。僕は染谷龍一っていいます。お兄ちゃんとは高校で一緒のクラスなんだ。いつも仲良くやらせてもらってます。よろしくね

 染谷くんは俺の弟だというのに、とても礼儀正しく自己紹介を済ます。

 彼のこういった律儀な部分はとても好感が持てる。

なぁ凛。今度このお兄ちゃんと一緒に遊びに行こうか

うん!

 どうした凛? 今までの内気なお前は一体どこへ……そう思ったが、よくよく考えれば……



 昨日の染谷くんを知っている訳だから、こいつもこいつなりに染谷くんを良い人だと認めてくれたのかもしれない。


 ジプリを見れたのは染谷くんのお陰だしな。

じゃあね。お兄ちゃん。行って来ます!

 ダッシュで学校に向かう凛。その背中を見届けていると横から染谷くんが口を開く。

黒澤くんって。結構年下の子に懐かれてるよね?
そうなのかな? あんまり意識した事は無いんだけど
妹ちゃんもそうだったし、面倒見が良いんだろうね
そういう染谷くんだって。虎ちゃんに慕われてるって感じがしたよ
 そう返すと、染谷くんは手を頭にやり引きつり笑いを浮かべるのだった
あいつはマジで馬鹿なんだよ。どーしようも無いっていうか……あ、そういえば昨日は虎がさ、妹ちゃんにやたら迫ってごめんね。怖がってたんじゃない?
いやいや。大丈夫だと思うよ。華凛は何も言わなかったしね
 ここで正直に喋るのもどうかと思った次第だ。
そりゃ良かった。実は兄貴も奥さんもさ、それがずっと気になっててね

 まぁ虎ちゃんはな……


 華凛に対し仲良くしようとしてる、その気持ちは俺にはよ~く伝わってきたんだが……その、やり方がな。まずかったよな。




 しかし……蓮と楓蓮が従姉弟だと知った染谷くんから、白竹さん達に伝わるのも、時間の問題だと考えた方が良さそうだな。



 まぁ別にいいか。

 バレたものはしょうがないし、焦る必要も無い。



 ぶっちゃけ、まだまだ手の打ちようはあるんだから、ただ俺は矛盾の生じないように接すればいいだけだ。

 学校に到着してからも染谷くんと喋っていると、隣にいる聖奈がラインで連絡を取ってくる。



 染谷くんとの会話の中で、聞き耳を立てていたのか知らないが、凛の事が話題に上がっていたからな。

どういうことなの? 何で龍一くんが凛ちゃんを知ってるの?

 授業に入り、聖奈に昨日の事情をラインで送信する。


 昨日、染谷くんには華凛と蓮は親戚同士だと告白した事を告げると、その送信途中にこんな返事が返って来た。

それじゃあ私が楓蓮と繋がっているのも、はっちゃけても良いわよね? そういう事でしょ?

 ああ、そうか。そうなるのか。

 お前に言われるまで気が付かなかった。

 

 つまり、蓮と楓蓮が従姉弟なのだと知られたのなら、そこに聖奈が入ってきても別に違和感は無い。


 幼馴染だし、後はもう何とでも言えるって訳だ。

 むしろこのタイミングでカミングアウトするのが自然だと思う。

これで喫茶店に行ってもいいわよね?

 確かに。もう隠す必要がないからな。

 むしろお前はそっちの方が嬉しいんじゃないのか?

うむ。これ以上隠す理由はござらぬ

 俺はそう返すと、クマのスタンプが滝のように流れてくるぞ。

 最後に謎スタンプであるLOVEが届くと、聖奈は早速机に突っ伏しながらスマホを弄っている。


 

 やっぱり嬉しそうだな。本当は仲良しの関係を、俺の都合で隠してた訳だから。



 こいつの気持ちを表すかのようなスタンプの応酬に「今までごめんな」と一言添える。すると……
次の時間、早速カミングアウトするわっ
 え? もうはっちゃけちゃうの? 
じゃあちょっと寝よっと


 というか。まだ寝るのか? 

 お前は家で一体何やってんだよ。俺と一緒に寝てから、寝てないとか言うんじゃねーだろうな?  

 


 ※


 そして一時限目の授業が終わると、聖奈は事前にアラームを付けていたらしく、むくっと起き上がってきた。



 早速バラすのか? 

 ていうか打ち合わせもへったくれも無い状況で聖奈がどう動くのかが心配でたまらない。



 休憩時間が始ると、聖奈はごく普通~~に問いかけてくる。

ねぇ。蓮。今度さ。うちのパーティがあるのよ。

楓蓮と華凛ちゃんは呼んであるけども、あんたも来る?

 なにこの変化球。え? え? 何の話ですか?

 パーティ? そしていつの間にお前と楓蓮が約束したんだ?


 全く内容が入って来ない俺に視線を飛ばしてくるのは、白竹さんに染谷くんだった。

ふぃえ?

 そう漏らすのは白竹さんだ。

 きっと聖奈の口から楓蓮や華凛の名前が出てきたので非常に疑問に思っていそうな顔だ。

え?

 そして染谷くんも振り返る。

 白竹さんと同じくハテナマークが頭上に浮かんだまま、俺や聖奈を交互に見ていた。

どうせなら凛ちゃんも呼びなさいよ。

結構大規模なパーティだから、美味しい物も出るしいくら食べてもいいから。

 聖奈よ。その返答に対し俺はどう答えればいいんだよ。


 突然のパーティイベント勃発に顔が勝手に引きつっていると、言いだしっぺの聖奈は……


 これ以上ない笑顔満開プラス、私に任せなさいモードになっていた。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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