米洗ミノル

文字数 3,402文字

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服は引き裂け、足はガクガク震える。
「はあっ――はあっ……!」
俺は夜の秩父山中を走っていた。
何のためかって?

――決まっている。
逃げるためだ。
彼女たちから――あの『女子高生たち』から逃げるためだ。
「くそっ、何なんだあいつらは――!」
「パパッ☆」
「うおお!?」
茂みの中から、『武装した女子高生』が飛び出してくる!

手にはマチェット!
おぞましい刃物!
まさに藪からマチェット!

――などと言っている場合では無かった。
パパー!
おとーさんっ☆
おっとう!
もはや意味が分からない!

……久しぶりに日本に戻り、故郷に帰ってみれば、駅を出た途端、この始末だった。
つまり――

防弾チョッキを着て、手に刃物を持った『たくさんの女子高生たち』に追い回されているのだ。

3日3晩。
休む間もなく。
ダディ!
ダッド!
なぜか俺を『父』と呼ぶ女子高生たちに!
ちちうえっ☆

おこづかいちょーだい!
とーちゃん、金よこせ!
「か、かつあげか!? いつから日本はこんな物騒になったんだ!」
この状況、俺が『魔人』でなければとっくに詰んでいただろう。

……どうにも、相手もその類らしい。
追ってくるJKは、みな同じ外見をしている。

いくら俺がおっさんになって若い子はほとんど同じに見えるようになったとはいえ、ここまで――まるでクローンのように同一ということは、まず尋常ではないだろう。
そして……

命の危機を感じながらも俺は、ひとつの事柄に興味を持ち始めていた。
無論、尻のことである。
俺は『尻ドラム奏者』だ。

世界を回り、さまざまな尻を叩き、極上の音色を奏でてきた。その自負がある。

そんな俺の前に――前に、というか、もはや右に左に、前に後ろにという状態ではあるのだが――同じ姿をした少女の群れが現れたのだ。
「…………たい」
「聞きたい…………

 尻の音を!!!」
相手も魔人!

もしくはその能力で生み出された『何か』!

――であるならば、もはやお飾りのモラルなど不要だろう!
パパぁ-!
少女は防弾チョッキで身を守っている。

しかし――!
尻はがら空きだぜ、お嬢ちゃん!
スパァアアアアン!

快音が山中に響きわたる!
ひうっ!
「せいっ!」
スッパパァアン!

俺の能力『尻の音は。』は、相手の尻を3度叩くことで発動する能力!

3発目で、この世のものとも思えぬ音が鳴りひびく!
ただし相手は死ぬ!

しかしだからと言って、1発目や2発目はしみったれた音しかしないかというと――そんなことはない。

俺は天才尻ドラマーだからだ。
「3発目!」
スッッッッッッパフォオオオン!

なんだかもう、文字にできない音が鳴る!
それと引き替えに――
「あっ、ばぼっ、ぶばふっ――!」
武装JKは肉片と化す!

「これは……これはっ、楽しい!」
次々と俺は女子高生の尻を撲つ!

まったく同じ音がするかと思いきや、わずかに個体差があるのか――少女たちは、その少女なりの音とともに爆散する!

ああ楽しい!いい音だ!これは良い音だ!
「まだだ……もっと、もっと……!」
俺は尻少女の群れへと突っ込む。

ときにマチェットや、弾丸が俺の肉体を傷つけるが、もはやそんなことなど気にしている暇などない!

だって尻だ!

尻の音が俺を待っているのだ!
もっと――もっと――

尻を求めて狂奔する俺は、尻JKの多いほうへと、自然と突き進んでいた。

そして――
山のふもとに、『そいつ』は立っていた。
「…………こんばんは、おじさん。月が綺麗ですね」
「ああ、尻の綺麗な夜だ」
「…………。

私はテレサドール。ただの女子高生」
「――ただの女子高生が、こんな夜に、金魚鉢を抱えてこんな所に居るものかな?」
「おじさん……血」
俺の体は、女子高生たちの返り血でまみれていた。
「……あれは、君が?」
(こくり)
少女はうなずく。

その目は、焦点が合っていないかのように、どこか宙をさまよっている。
「女子高生って……なんだと思います?」
「どうした、藪からマチェットに?」
――実はこの言い回し、地味に気に入っていた。
「ごほん。

女子高生? 高校に通っている女子じゃないのか?」
「なぜ大人は女子高生が好きなの? なぜ大人のビデオで女子高生は『女子校生』と表記されるの? おじさんも女子高生が好きなの?」
「俺が好きなのは尻だけだ」
「……下ネタはきらいです」
「いや、俺は尻を下半身で楽しんでいるのではなく、耳で楽しんでいる――だから、けっして下ネタではないのだ」
「詭弁――、詭弁――、詭弁――。

大人はみんな詭弁を吐く。

ああ……」
「あ――、あ――、あああ!

だから私は、私はっ――!」
突如として少女の体がブルブルと震える!
「だから私は……女子高生を吐くっ!!!」
「ウボっ、おろっ……、うろげげげげげーーーー!」
なんと奇怪な!

女子高生が、口から女子高生を吐き出しているではないか!

しかも――
「パパ……パパ?」
「ぱぱぁ……♪」
まだぬるりと粘膜に濡れたその少女たちは、顔を上げ、俺を見るなり『父』と呼ぶ。
「女子高生って何? 高校って何なの――? 青春って、女子高生の青春って――分かんない!」
「そうよ! 女子高生は金銭的援助を求めるもの! 世の男性をパパと呼び、金をむしり取る! それが青春!」
「ちいぃっ……!」
尻が多すぎる……! もとい、数が多すぎるっ!

俺の能力『尻の音は。』は、その性質上、複数を相手にすることに向いていない。

相手を殺す――という目的を達するためには、『連続で3発』叩かなければならない。その間に間違えて他の尻を叩こうものなら――

「ぐっ……尻が、俺の尻が――割れるっ!」
当然尻は割れているものだが、気分的には引き裂かれそうなほどの激痛が尻に走る。

それがペナルティ――『ステージ4の痔』!

もはや俺は立ち上がれない!
「ぱーぱっ☆」
「お金ないの?……ないなら死んで」
絶体絶命。
少女たちは俺を囲み、今まさにこの命を絶とうとしている。
「あなたも……ダメなのね。私に答えを教えてくれないのね――」
本体である少女――テレサドールが、いくぶんか落胆したように振り返り、立ち去ろうとする。
「…………。

違うね、そうじゃない」
「……青春に、答えなんかないんだ。教えてもらうものじゃ――ないんだ」
俺は思い出していた。

学生時代、誰にも尻ドラムを理解してもらえなかったことを。

変態だ、変態だと罵られ、崇高な音楽の徒である俺を、誰も理解してくれなかったことを――。
「俺の青春は、まっくらだったさ……」
「――でもな、知ってるかお嬢ちゃん!」
俺は死力を尽くして立ち上がり、群がる少女を押しのけ、遠ざかろうとする少女へ――青春の暗闇をさまようテレサドールの背中へと駆ける!
「――えっ」
首だけで振り向こうとする彼女の背中へ――

俺は迫る!
「知ってるかお嬢ちゃん!

 尻は……背中と同じ側にあるんだぜ!
「ひっ、ひうっ――!」
スパン!
スパァアアン!

快音が夜の闇を切り裂く!
びくりとしてテレサドールが尻を押さえるのと、武装Jkたちの刃が俺の背中を切りつけるのは同時だった。
「い、今の……音?」
「それが……青春の音だよ、お嬢ちゃん」
「――青春にも、音はあるの?」
「あるんだよ、困ったことにね」
気が遠くなりそうな激痛に耐え、俺は笑ってみせる。

それが大人の役目だと思った。
「金なんていらないんだ。尻さえあればいい。青春は――尻だ」
「青春は……尻」
「そうだ。でもそれは――尻は、俺のものだ。俺が見つけた、俺の宝物だ。

だから――君にとっての『尻の音』を探せ。それが君の青春だ。それが女子高生の義務だ。なんでもいい」
「何でも……いい……。それって、難しいよ」
「頭で考えたって駄目さ。体で感じなきゃな。

……ま、こういうときは尻で感じるのが一番さ。

ほら、君も叩いてごらん?
女子高生の尻を。

そしてこのおっさんの尻を」
「こ、こう……?」
おずおずといった仕草で、テレサドールは俺の差し出した尻を、ぺしっと叩く。
「そうだ、その調子だ! ほらもっと強く!」
「こ、こう……?」
「そうだ、調子が出てきたじゃないか! いいか、これが青春の入り口だ!

……尻は出口だがな!」
「ふ、ふふっ……。おじさんって、変」
「ああ! よく言われる!」
それから俺とテレサドールは、夜通し尻を叩き続けた。

互いの尻を。

そして、彼女が生み出す無数の尻を。
夜の秩父山中に、2人の笑い声と、尻の音がいつまでもこだましていた――。
(おしりまい)
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登場人物紹介

名前:デンブ・双丘(でんぶ・もろおか)

性別:

特殊能力:『尻の音は。』(しりのねは。)

(1)発動条件
対象の尻を3発連続で叩くことで発動する。

(2)効果
3発目で相手の血流は激しさを増し、全身が爆発四散する。そして最上級のいい音がする。

(3)弱点
・1発ずつの間隔は3分以内でなければならない。

・その制限時間を越えると相手への効果はリセットされ、1発目からやり直さなければならなくなる。また、自身へのペナルティとして「ステージ4の痔が発症」し、動きが極端に制限される。もちろん専門医でないと治せない。

・3発目に達するまでに他の人間の尻(自身を含む)に触れてしまった場合も、同じく効果はリセットされ、ペナルティも発動する。


職業:尻ドラム奏者


設定:
尻が奏でるその音に取り憑かれた男。

しかし人前で能力をさらすことはなく、夜の闇にまぎれては魔人能力『尻の音は。』を用いて演奏を続けてきた。この『闇シリ討ち』はある時期、付近の住民をたいへん怖がらせた。

尻ドラムの良さを分かってくれない周囲に反発し、海外へと旅立つ。世界各地で老若男女さまざまな尻に触れ、尻ドラム奏者として現地の人びとの耳を喜ばせた。

ちなみに、『3発連続で叩くと楽器を殺してしまう』ので、4~5人の尻を並べ、交互に叩いて演奏するスタイルをとっている。ただし、その際には自身へのペナルティが発動(痔が発症)するため、彼の尻はいつも血まみれ。オムツの着用は欠かせない。


相手を倒したい動機:
定期的に『最上級の尻の音』が聞きたくなり、自身を抑えられなくなる。デンブ・双丘は倒したいのではない、鳴らしたいのだ。

名前:テレサドール

性別:女

能力:女子校サファリパーク
…口から文系の女子高生を吐き出す。
女子高生は初めて見た人間を父親と思い、金銭を要求してくる。
主兵装はマチェット。他にもマシンガンを装備している場合もある。学校の制服はマチマチだが、大体防弾チョッキを上から着ている。

設定:美人の女子高生。ごく普通の女子高生だが、最近女子高生の定義についてなんなのかわからなくなってきた。
自宅で魚を飼っている。

相手を倒したい理由:これって青春だよね!?

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