プロット

文字数 3,441文字


杉浦愛菜(すぎうら まな)は無条件に動物に好かれるという特技がある私立中学校の二年生。動物は好きだけどちょっと人間は苦手。最近は担任の御手洗(みたらい)先生と上手くいかなくて不登校気味だ。そのせいか、最近は教室に行くと、ずーんと重たい感じがして、頭が痛くなってしまって余計に学校に行きたくない。そんな二学期のある日、学校を休んでいる間に、ホームルームで図書委員になってしまったことを知る。
前行っていた公立の小学校では、図書委員は人気がある委員だったと思うのだが、この学校では司書の先生が、ちょっと不気味だということで、一気に人気が無くなってしまったらしい。
「陰気な杉浦さんは、気味の悪い図書室の先生と一緒に、図書委員をやったらいいわ」と言って意地悪く笑うクラスメイト。同じクラスの仲の良くない穂村美子(ほむらよしこ)はじゃんけんに負けて、愛菜と同じ図書委員になって最低だ、と八つ当たりをする。クラスメイト達の意地悪な言い方に気持ちを傷つけられる愛菜。
読書は好きだけど、嫌な仕事を押しつけられたという印象で、落ち込みながら図書室に向かう。穂村は相変わらず不機嫌そうに図書室に向かい、愛菜と言葉すら交わさない。
図書委員会の仕事は休み時間と放課後に貸出の手伝いをする程度で、さほど問題はなさそうだ。さっそく手伝いを開始する愛菜だが、穂村は図書の仕事をサボり続けている。
ある日、文武両道、イケメンの生徒会長山藤渉(やまふじ わたる)先輩が図書室に来て、優しく声を掛けてもらって舞い上がる愛菜。本が好きだという山藤先輩と一気に意気投合する。
噂の学校司書の先生は、魔女みたいなお婆ちゃんでちょっと怖いかも、と思いつつ、本のことに関してはすごく詳しいので、ちょっと尊敬している。ある日、図書室の中に、普通の生徒達が近づかない不思議な本棚があることに気づく。その日最後まで残って図書の片付けをしてから家に帰ろうとすると、その不気味な司書の先生から、「ようやく適合者が来てくれた。これで皆も喜ぶ……」と謎の言葉を話しかけられてしまう。瞬間、目の端に何かが写り、思わず悲鳴を上げてしまう。


目の前に出てきたのは、キジトラ柄の尻尾が二股に別れた猫だ。ただし見た目は尻尾が二つに分かれている以外は普通に可愛い。『お前が新しい図書係か』と言われて、猫がしゃべったとびっくりする愛菜。すると気持ち悪いおばあさんだと思っていた司書の先生が、銀髪長髪の綺麗な女の人になっていることに気づいて更にびっくりする愛菜。
話を聞くと、この学校の図書室は、昔からあやかし達が利用する図書室でもあるのだという。愛菜が違和感を覚えていたように、実は同じ図書室内に、人間の学生達がけして手に取らない本棚があり、そこにあやかし用の本が並んでいる。誰も気づいていないが、ここはあやかし達用の図書室でもあるらしい。あらゆる妖怪についての本や、あやかしたちの病気の治療方法や、困った人間達の対処方法の本など、いろんな本が並んでいる。そして普通の生徒のような格好をして、あやかし達が図書館に本を読みに来ているのだ。
妖怪とかお化けとか聞いて、もっと怖い物かと思っていた愛菜だが、愛菜の肩に乗るネコマタも、司書の先生もあやかしだという。司書である九尾狐(くびこ)は、サバサバ系女子で、話してみたら意外といい人で怖くない。オシャレでイマドキのファッションにも詳しいようだ。愛菜の制服の着こなしについても、いろいろアドバイスをくれたりもする。
改めて『あやかしと会話が出来る図書委員は非常に貴重なのだ』と言われ、これから図書委員として、自分たちあやかしを助けて欲しいと言われる。
助けて欲しいって何か困ったことが? と尋ねると、最近、学校であやかしと関係する様々なやっかいごとが起きているのだと相談される。学校でのトラブルはあやかし達にも影響し、そのせいであやかし達の病気も増えているらしい。
ということで、連絡係としてネコマタを連れて、図書委員活動をすることになる愛菜。ちなみにネコマタは普段は姿を消しているので、愛菜以外には見えない。意地悪をするクラスメイトのことを文句言ってくれたりして、ちょっとした味方を得た気持ちになる愛菜。
翌日から図書委員としてカウンターに座っていると、制服を着た普通の人間に化けたあやかしたちがやってきて、さまざまな相談をされるようになる。たとえばあまり人が使わないクラブ棟別館のトイレが詰まっていて、トイレの花子さんが困っていると聞けば、学校の先生に相談して修繕をしてもらったり、音楽室のポスターが破けているせいで、ベートーヴェンが夜中にこっそりニヤリと笑えなくなっていると聞いて、ポスターの修繕に行ったり。
もちろん、司書・九尾狐の手伝いをして、学校の本と、あやかし達の本を整理したり修繕したり、時にはあやかしからのレファレンスも請け負い、がんばる愛菜。
教室に居づらかった愛菜は、図書室で過ごす時間が増えるうちに、少しずつ学校に行ける時間が増えてきた。たまに山藤先輩もやってきて、面白かった本の話をすることも出来て、少し学校生活が楽しくなる。


そんなある日、突然、あまり仲の良くないクラスメイト達に呼び出されてしまう愛菜。何だろうと思って呼び出された図書室の裏に行くと、そこに居たのは穂村と女子生徒数名だ。
本好きで根暗な愛菜が山藤先輩と仲良くするのはおかしい、と複数人で責められてしまう。びっくりして泣きそうになったときに、図書室の窓が空いて、九尾狐と、山藤が声を掛けてくる。聞かれてた、と焦る女子生徒達は一気にその場から走り去っていく。
驚く愛菜だが、愛菜は悪く無いと、山藤先輩と九尾狐、二人に慰めてもらって少しホッとする。だがやっぱりクラスメイトに嫌われていることが悲しいなあと思う。
するとネコマタが『最近学校の様子がおかしいのだ』と言い始めた。妙に人間関係がギスギスしていて、あやかしも人間もイライラしている事が多いと言われ、言われてみたら、自分も教室にいると嫌な気持ちになるのだと話す愛菜。と、その時、山藤先輩が普通にネコマタと会話している事に気づく愛菜。事情を聞くと、実は山藤の家は神社で、あやかしとも縁が深いのだという。
本当は図書委員になりたかったのだけれど、みんなに勧められて生徒会長をしているから、たまにこうしてボランティアで図書委員を手伝っているのだという。そして改めて山藤も一緒に、学校内ギスギス問題を話し合う愛菜たち。
夜中のうちにいろいろ様子が変わっているらしいと知って、だったらこっそり夜中に、学校の中を調べてみることにする愛菜と山藤と、九尾狐たち。あやかしたちが作ってくれた身代わりを自宅のベッドに残してくると、憧れの山藤先輩と一緒に、いろんなドキドキを感じながら、夜の学校を探索する。その時ポスターを破ったり、トイレに変なものを流したりしている人影を見つけた。


それは愛菜のクラスの担任、御手洗だった。どうやらストレスが堪りすぎて、学校で悪さをしていたらしい。先生を催眠状態にして、図書室に連れてくる九尾狐。あやかし用の図書室の本でストレスでおかしくなってしまった人が、普通に人間用の病院に行く方法を調べる。催眠術で本の通りちゃんと病院に行くように指示を出すと、わかりました、と答える先生。九尾狐によると、御手洗先生は、自分の気を拡散してしまうタイプの人間で、それで学校の人たちがギスギスしたり、あやかしもその影響を受けていたのだろう、という。問題解決してホッとする愛菜。
その後先生は病院に入院してしまったということで、担任の先生が替わり、再び学校に来れるようになる愛菜。でも相変わらず愛菜に意地悪をする穂村。御手洗先生の事は関係ないらしい。
あちこちで情報を集めてきたネコマタの話では、穂村は最近、怖い夢を見続けているらしい。バチがあたったんだと思ってすっきりした気分になってしまった愛菜だが、やっぱり嫌な夢を見続けるのは苦しいよね、と思い返す。
山藤先輩と一緒に、あやかし図書室で調べて、獏に悪夢を食べてもらったらいいと知り、九尾狐に獏の知り合いがいないかどうか尋ねる。すると今回の件で頑張ってくれたから、と特別に獏の知り合いを紹介してくれて、無事穂村の悪夢を食べてもらう。
だからといって急に穂村が愛菜に優しくなるわけではないかもしれない。それでも自分で調べて自分で問題を解決出来て、一つ手応えを感じる愛菜。
これからも、図書委員として学校とあやかしのために頑張ろうと思う。
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