エピソード文字数 1,059文字

 将来の夢はケーキ屋さん。そんな、どこにでもいるような、ごくありふれた女子学生だった私は交通事故で死んだ後、異世界の金獅子国という獣人も存在する国に、貴族令嬢として生まれ変わっていた。

 子爵令嬢、セリナ・フォン・セレニテス。それが今の身分と私の名前である。ちなみに電気やガスが無いこの世界では夜になれば、ローソクやランプの明かりをつけ、料理はかまどに木の薪をくべ、火を起こして調理をする。

 その光景に、まるで中世のおとぎ話の中にでもいるような不思議な感覚で、ゆったりとしたドレスを着た母や貴族服を身にまとった父をはじめ、当初は見る物すべて目新しく感じていた。獣人に関しては我が家にはいないが父の実家、祖父母の家では獣人の召使いもいるのだ。

 ある日の夕暮れ母の腕に抱かれながら、ウトウトとまどろんでいると、何気なく母がランプに手をかざした瞬間、火が灯るという光景に呆然とした。

「あら、セリナどうしたの? そんなに驚いてランプを見て」

「だって……。いきなり火が」

「そういえば、間近で魔法を見るのは初めてだったかしら?」

「うん。……って魔法!?」

 びっくりして目を丸くしていると、母は事もなげに微笑む。

「セリナも、もう少し大きくなったら使えるようになるわよ」

「そうなの!?」

「ええ。この程度の簡単な魔法なら誰でも使えるから」

 にっこりと笑う母の顔を見ながら私は内心、大きな衝撃を受けていた。前世の世界との大きな違い。それはこの世界に『獣人』がいることの他に『魔法』があるということだった。母が言った通り、ほとんどの人間は簡単な初級の属性魔法であれば問題なく使えるのだという。

「お母様、私も魔法使いたい!」

「あら、でもセリナはまだ小さいから魔法は早いわ……。学園に行けば習うし、もう少し待てば……」

「今すぐ習いたいの!」

「うーん。確か、書庫に魔法の入門書があったと思うけど」

「書庫ね!? 分かったわ!」

 そうと知った私は、家の書庫にある魔法入門書を読みふけるようになった。本に書いてある通り、精神集中して頭の中に具体的なイメージをして集中すれば、手の平から魔力があふれるのが分かり、自然と『出来る』という確信が沸き上がった。

 それ以来、毎日のように書庫にこもり魔法関連の本を読みあさっていった。そして、魔導書を片手に部屋の中で風魔法を発動し、小さな『つむじ風』を起こしたり、水魔法で『氷』を作ったりして遊びながら、どんどん使える魔法を増やしていった。
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