世界一ゆるいクリスマス会
文字数 2,870文字
1.
「と、いうわけで皆に集まってもらいましたー!さ、さ、遠慮せず座って!」
「・・・お前の教会じゃないだろ・・・」
その週の土曜日の午後。
葉一、さくら、ゆりさん、ひまわりちゃん、ぼたんちゃん、樹太郎くん、あと俺で、やまのべ教会の食堂に集まっていた。
このメンバーで集まるのも久しぶりで、そうだな、俺でもわくわくしてくるな。
・・・何気なく、『勝負服』を着こんで髪も力いれてセットしてやってきた葉一の張り切りっぷりには負けるけど・・・。
この前、スカイプで叔父に、今回のクリスマス会の計画を報告した。
俺はこの教会の『とりあえず』『まにあわせ』の牧師だけど、叔父はちゃんとした本物の牧師で、カナダで牧会をしている。
親父たちが天に召されたあと、本来は叔父がこちらに戻ってくる予定だったんだけど、向こうの教会も離れるわけにいかないということで今はこちらとあちら、兼任で牧会している。
つまり、俺の牧師としての主な仕事はこの叔父に報告をすること、だったり。
『おおそうか!とうとう、やまのべ教会にも世代交代の波がきたか!』
『いや、世代交代っていっても、クリスチャンは俺とひまわりちゃんとぼたんちゃんの三人しかいないし・・・』
『そうだなぁ、お前の友人が手伝ってくれるのは有難いが、ノンクリスチャンだとなぁ・・・』
『うん・・・、どこまで皆に頼んでいいのかわからないし、クリスマスの意味とか知らないのに教会のクリスマス会を企画するとか・・・ハードル高い気がしてきて・・・』
『そうだなぁ・・・聖書勉強会とか、ガチすぎて引かれるかもしれんしなぁ・・・』
『『うーん』』
『よしゅあー!!!会いたかっタ!よしゅあー!!!』
いきなり、ダリアが画面に割り込んできて。
『会いたかっター!会いたイー!よしゅあハ?私のこと、忘れてなイ?』
ぶんぶんぶん、腕をふりながら全力で話しかけてくる。
『ゴハンはちゃんとたべてル?やせてなイ?一人はさみしくなイ?元気してル?私が恋しイー?!!』
『うん。ご飯は食べてるし、(お前がいたときより食事の面では安全だし)、
痩せてないし(少し身長伸びたからそう見えたのか?)
一人は慣れてるし(むしろ、お前がここに泊まっていた時より気をつかわなくていいし、裸族り放題だし、)
元気だし(おかげさまで)恋し・・・くはない・・・から・・・大丈夫なような。』
『私もよしゅあのことガ、恋しかっタ!』
いや、聞いて。
『それじゃあ、あとは若い者に任せて退散するかな・・・。』
待って、叔父さんもどこに行くの、聞いて!
2.
そんなことを回想している間に、ぼたんちゃんがどこからか大判の用紙を持ってきて、テーブルに広げた。
そして、『クリスマスかいぎ』とマジックペンで書き始めた。
ああ、この部屋にはホワイトボードがないからボード代わりかな・・・。
「それじゃあー、何をするか、意見をお願いしますー!」
と、葉一が言うものの、皆、困っているぞ・・・。
「・・・そうは言っても、キャンプの時にいたダリアさんがいないなら、コンサートは難しいような・・・」と、樹太郎くん。
しーん。
葉一が、こちらに、『なんか言えよ!』と必死でアイコンタクトを送ってくるが、ええと・・・。
「よしゅあ、ここのクリスマス会ってー、毎年、何してるんだっけ?」
さくらも水を向けてくれた。
「・・・ビンゴ大会・・・」
ゆりさんが、ぼたんちゃんからペンを受け取って、達筆な字で、ビンゴ、と書く。
「あと、聖歌隊の歌と・・・」
歌、と書く。
「 食事会。」
ご飯、と書かれ。
「・・・これだけ?」
と、葉一が言う。
けどな!準備すると結構大変なんだぞ!
ビンゴ用紙を買いにいったり、景品や食事の準備したりー!!
「いや、これだけ?ってのはさ、そーゆー、かろんじるつもりじゃなくてさー。」
クリスマスらしさ、なくない?
教会的な。
しーん。
特に、俺、ひまわりちゃん、ぼたんちゃん、沈黙。
「く、クリスマスらしさ、は一応、クリスマスの飾り付けしますし・・・」
「え、それってどこもしてない?」
ちーん。
ひまわりちゃん、撃沈。
「こどものクラスだとね!プレゼント交換をするよ!」
「え、それ、地区の子ども会でもしてない?」
ちーん。
ぼたんちゃん、撃沈。
「お前―!言って良いことと悪いことがあるだろうがー!(泣)」
「いや、俺も提案しといて適当なこと言うのもどうかと思ったからさー、
一応調べてみたんだけど、教会のクリスマス会って、何してんのか分からなくてさー」
で、何してんの?
と、葉一がきょとんっと、首をかしげて言う。
それに合わせて、さくらやゆりさんも可愛く首をかしげてくるが・・・。
・・・世界は残酷だ。
ノンクリスチャンがクリスマス会を企画できるのか?と心配していたのにっ・・・!
そのノンクリスチャンに、『じゃあクリスチャンはどんなクリスマスすんの?』と
聞かれるとかっ・・・!
クリスチャンっぽいクリスマス会ってなんだよ・・・!
く、クリスマスの意味は知ってるけど、ビンゴの意味は何なんだよ・・・!
そもそも、クリスマスとクリスマス会は別物だろっ・・・!
「な、何をするかとかは関係ないんだよ・・・!
クリスマスを祝うのが目的で・・・!
キリストの降誕を祝うのが目的なんだから、心の問題なの!」
・・・そうだよな?
そうであるはず!
「なーんだ、そっかー!」
「よかったー、もし変なことしたら、教会のおじさま達に怒られるかと思ったー!」
「も、もしやり過ぎても、牧師なよしゅあ君がそう言ったんだから、大丈夫よね・・・」
「心、が問題なら、ケーキでお祝いしなくてもいいんですね!
おれ、料理は得意だけど、ケーキは作ったことなかったんです!」
「それなら、今年はクリスマスの飾り、青と赤をメインにしてもいいですか?
いえ、特に他意はないのですが。推しカプとか、全然関係ない話ですが。」
「ぼたんはねー!!聖歌隊でカホーン打ちたーい!」
・・・えええ?
「じゃあさー、サンタこす、いや、サンタの格好とかさー、よくない?(女の子が)」
「そういえば、昔、よしゅあのお父さんがサンタさんしてたような・・・
よしゅあ、あの衣装、もう捨てちゃった?」
「いやいや、サンタはカワイイのもいいんじゃないかなー(女の子の)」
「こ、この前、演劇部で使った男性用の大きいサンタ服、借りられると思う・・・。」
「いやいや、そういうでっぷりしたサンタはもう古いってか、昭和ってかさー!」
葉一の、なんとかしてサンタ女子を見ようとする健気さよ・・・!
「青と赤・・・紫とか緑とかもいれるべき・・・緑は・・・外せない・・・。」
「あ、あの、ひまわりさんがそういう色のケーキがお好きなら、俺、頑張って練習します!」
「樹太郎ちゃん、ひまわりちゃんはね、きっとそういう世界で話してないと思うの・・・」
「と、いうわけで皆に集まってもらいましたー!さ、さ、遠慮せず座って!」
「・・・お前の教会じゃないだろ・・・」
その週の土曜日の午後。
葉一、さくら、ゆりさん、ひまわりちゃん、ぼたんちゃん、樹太郎くん、あと俺で、やまのべ教会の食堂に集まっていた。
このメンバーで集まるのも久しぶりで、そうだな、俺でもわくわくしてくるな。
・・・何気なく、『勝負服』を着こんで髪も力いれてセットしてやってきた葉一の張り切りっぷりには負けるけど・・・。
この前、スカイプで叔父に、今回のクリスマス会の計画を報告した。
俺はこの教会の『とりあえず』『まにあわせ』の牧師だけど、叔父はちゃんとした本物の牧師で、カナダで牧会をしている。
親父たちが天に召されたあと、本来は叔父がこちらに戻ってくる予定だったんだけど、向こうの教会も離れるわけにいかないということで今はこちらとあちら、兼任で牧会している。
つまり、俺の牧師としての主な仕事はこの叔父に報告をすること、だったり。
『おおそうか!とうとう、やまのべ教会にも世代交代の波がきたか!』
『いや、世代交代っていっても、クリスチャンは俺とひまわりちゃんとぼたんちゃんの三人しかいないし・・・』
『そうだなぁ、お前の友人が手伝ってくれるのは有難いが、ノンクリスチャンだとなぁ・・・』
『うん・・・、どこまで皆に頼んでいいのかわからないし、クリスマスの意味とか知らないのに教会のクリスマス会を企画するとか・・・ハードル高い気がしてきて・・・』
『そうだなぁ・・・聖書勉強会とか、ガチすぎて引かれるかもしれんしなぁ・・・』
『『うーん』』
『よしゅあー!!!会いたかっタ!よしゅあー!!!』
いきなり、ダリアが画面に割り込んできて。
『会いたかっター!会いたイー!よしゅあハ?私のこと、忘れてなイ?』
ぶんぶんぶん、腕をふりながら全力で話しかけてくる。
『ゴハンはちゃんとたべてル?やせてなイ?一人はさみしくなイ?元気してル?私が恋しイー?!!』
『うん。ご飯は食べてるし、(お前がいたときより食事の面では安全だし)、
痩せてないし(少し身長伸びたからそう見えたのか?)
一人は慣れてるし(むしろ、お前がここに泊まっていた時より気をつかわなくていいし、裸族り放題だし、)
元気だし(おかげさまで)恋し・・・くはない・・・から・・・大丈夫なような。』
『私もよしゅあのことガ、恋しかっタ!』
いや、聞いて。
『それじゃあ、あとは若い者に任せて退散するかな・・・。』
待って、叔父さんもどこに行くの、聞いて!
2.
そんなことを回想している間に、ぼたんちゃんがどこからか大判の用紙を持ってきて、テーブルに広げた。
そして、『クリスマスかいぎ』とマジックペンで書き始めた。
ああ、この部屋にはホワイトボードがないからボード代わりかな・・・。
「それじゃあー、何をするか、意見をお願いしますー!」
と、葉一が言うものの、皆、困っているぞ・・・。
「・・・そうは言っても、キャンプの時にいたダリアさんがいないなら、コンサートは難しいような・・・」と、樹太郎くん。
しーん。
葉一が、こちらに、『なんか言えよ!』と必死でアイコンタクトを送ってくるが、ええと・・・。
「よしゅあ、ここのクリスマス会ってー、毎年、何してるんだっけ?」
さくらも水を向けてくれた。
「・・・ビンゴ大会・・・」
ゆりさんが、ぼたんちゃんからペンを受け取って、達筆な字で、ビンゴ、と書く。
「あと、聖歌隊の歌と・・・」
歌、と書く。
「 食事会。」
ご飯、と書かれ。
「・・・これだけ?」
と、葉一が言う。
けどな!準備すると結構大変なんだぞ!
ビンゴ用紙を買いにいったり、景品や食事の準備したりー!!
「いや、これだけ?ってのはさ、そーゆー、かろんじるつもりじゃなくてさー。」
クリスマスらしさ、なくない?
教会的な。
しーん。
特に、俺、ひまわりちゃん、ぼたんちゃん、沈黙。
「く、クリスマスらしさ、は一応、クリスマスの飾り付けしますし・・・」
「え、それってどこもしてない?」
ちーん。
ひまわりちゃん、撃沈。
「こどものクラスだとね!プレゼント交換をするよ!」
「え、それ、地区の子ども会でもしてない?」
ちーん。
ぼたんちゃん、撃沈。
「お前―!言って良いことと悪いことがあるだろうがー!(泣)」
「いや、俺も提案しといて適当なこと言うのもどうかと思ったからさー、
一応調べてみたんだけど、教会のクリスマス会って、何してんのか分からなくてさー」
で、何してんの?
と、葉一がきょとんっと、首をかしげて言う。
それに合わせて、さくらやゆりさんも可愛く首をかしげてくるが・・・。
・・・世界は残酷だ。
ノンクリスチャンがクリスマス会を企画できるのか?と心配していたのにっ・・・!
そのノンクリスチャンに、『じゃあクリスチャンはどんなクリスマスすんの?』と
聞かれるとかっ・・・!
クリスチャンっぽいクリスマス会ってなんだよ・・・!
く、クリスマスの意味は知ってるけど、ビンゴの意味は何なんだよ・・・!
そもそも、クリスマスとクリスマス会は別物だろっ・・・!
「な、何をするかとかは関係ないんだよ・・・!
クリスマスを祝うのが目的で・・・!
キリストの降誕を祝うのが目的なんだから、心の問題なの!」
・・・そうだよな?
そうであるはず!
「なーんだ、そっかー!」
「よかったー、もし変なことしたら、教会のおじさま達に怒られるかと思ったー!」
「も、もしやり過ぎても、牧師なよしゅあ君がそう言ったんだから、大丈夫よね・・・」
「心、が問題なら、ケーキでお祝いしなくてもいいんですね!
おれ、料理は得意だけど、ケーキは作ったことなかったんです!」
「それなら、今年はクリスマスの飾り、青と赤をメインにしてもいいですか?
いえ、特に他意はないのですが。推しカプとか、全然関係ない話ですが。」
「ぼたんはねー!!聖歌隊でカホーン打ちたーい!」
・・・えええ?
「じゃあさー、サンタこす、いや、サンタの格好とかさー、よくない?(女の子が)」
「そういえば、昔、よしゅあのお父さんがサンタさんしてたような・・・
よしゅあ、あの衣装、もう捨てちゃった?」
「いやいや、サンタはカワイイのもいいんじゃないかなー(女の子の)」
「こ、この前、演劇部で使った男性用の大きいサンタ服、借りられると思う・・・。」
「いやいや、そういうでっぷりしたサンタはもう古いってか、昭和ってかさー!」
葉一の、なんとかしてサンタ女子を見ようとする健気さよ・・・!
「青と赤・・・紫とか緑とかもいれるべき・・・緑は・・・外せない・・・。」
「あ、あの、ひまわりさんがそういう色のケーキがお好きなら、俺、頑張って練習します!」
「樹太郎ちゃん、ひまわりちゃんはね、きっとそういう世界で話してないと思うの・・・」