第2話

文字数 904文字

怒りを感じきることに決めた私は、ひたすらに怒りを消化していた。

とあるネット上の記事にて、「戦う意志を示さなければ搾取されるだけ」という文章を読み、怒りにさらに火がついた。

すると、出るわ出るわ、今までの怒りたちが。

こんなにも、認知してもらえなかった、受け止められなかった、そして感じきれなかった私の怒りたちが存在していたのだと自分自身を見つめ直していた。

そして、こんなにも怒りを感じないようにしてしまったのはなぜのだろうと私は考え始めた。

私の父は怒らなかった。

私はほとんど父に怒られたことがなかった。

私はそんな父を素晴らしいと考えていた。

父は祖父が酒を飲み、よく怒る人だったため、反面教師として怒らないよう育ててくれたようだ。

母もまた、私になるべく怒らずに育ててくれた。

母の母である祖母と姉との口喧嘩をよく家庭で目撃していたため、自分自身の子どもには怒らないように、と考えてくれていたらしい。

しかし喜怒哀楽という感情があるのが人間というものだ。

怒りを感じないように、出さないようにすれば支障が出てきてしまうのだろう、父は何度か病にふせり、母は父の代わりに働きに出るようになった。

母は労働と父の見舞いの間に膝の関節の手術を2回することになったりし、それはそれは大変だったはずだ。

父も母も、私を思って育ててくれた。

しかし現在進行形で父と同じ病に苦しむ身として私は、怒りは感じることが大切であるのではないかと思えるのだ。

怒りを感じた対象について考え、そしてその対象へ怒りを爆発させるのではなく、「私は◯◯に対して怒っている」意思表示をするだけで自分自身の心が楽になるということを私は分かったのだ。

怒りを感情に任せて爆発させていれば、新たな怒りの種を蒔くだけだ。

しかし怒りを感じないことは自分の心身のためにならないということを父と母、そして私自身の経験から学んだ。

その上で考えたのが、「自分が怒っている対象を特定し、意思表示すること」だった。

この方法を行えば、怒りを感じた時に自分の心身を傷つけることなく、新たな怒りの火種を撒かずに済む。

そして、考えてみると意外とその対象が多すぎることに気づき、途方に暮れてしまった。
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