第1話

文字数 383文字

現代では「怒り」の感情は抑えるべきで、悪しきものと見られている傾向すらある。

しかし私たちが大人になるにつれて、怒りを感じることは山ほどあるはずだ。

社会人たるもの、怒りを人前で露わにしてはならない、とされている。

穏やかに、和を重んじる。

それが社会のルールであるかのように不自然な笑みを浮かべて通り過ぎて行く人たち。

私の感じきれなかった怒りはどこへ行くのだろう。

私の感じきれなかった怒りが行き場を失っている。

そうしてふとした時に怒りは現れ、私の心を蝕んでいくようだ。

私は「怒り」を感じきることにしてみた。

怒り、怒り、怒り、心の中で唱える。

まるで燻っている煙を観察するかのように。

確かに怒りを感じている最中はえも言われぬ不快感におそわれたが、感じきってみると、怒りの対象のことを忘れていた。

私の感情を私が認める、これはもしかして今の私にとても必要なことであるように思えた。
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