第3話 ビックリ巡察⁉

文字数 2,041文字

「俺達の巡察区域は、逢異原(あいはら)八・九丁目だ。」
と、トシ兄が地図を見せながら教えてくれる。
「特にここ、藤華院(とうかいん)は異界とつながりやすいところだからくまなく探す事。」
藤華院は新道家のお墓のあるお寺で、とてもお世話になっているお寺。
「よく俺とトシは三〇分くらい張り込みしているよ。長い時は二時間くらいだな。」
「だな。」
二、二時間・・・。想像していた時間より長くて驚くよ。
「まぁ、今日は前を通るだけだから警戒心を持たなくても大丈夫だけれど、二人だけの巡察のときは気を引き締めるんだよ。」
「「はいっ。」」
「よし、じゃあ行くか!」
「「「おっしゃあ!」」」
新道家の門を出ると、なんかイヤーな人影が・・・・。
「はぁ、出てすぐにいるとかありえなさすぎるだろ。」
「だね、トシ。総司は誠奈ちゃん背中で守っといて。」
「わ、分かった。」
私は?何で私が総司に守られないといけないの⁉
総司に後ろに隠されると、あんまり戦闘状況がわからない。けれど、さっき見たときは農民の格好をしていたなぁ。
と思いながら、総司の後ろからばれないように観戦。
「時の神・月読命よ、旅の神・猿田彦神よ。かの者を元の時代(とき)へ戻したまえ。」
と言いながら、勇兄は刀を振り上げる。
「送封。」
と言うと、一気に刀を振り下ろした。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」
という声が残りながら、農民は消えていった。
私は勇兄の刀に注目する。
ウソでしょ・・・。刀に、血が、付いてる・・・・。
「・・・あ、誠奈ちゃん、見ちゃった?」
「おい、誠奈お前見たのか⁉」
焦る兄二名。
え、ウソ、でしょ・・・? ウソ、じゃない? え、どういう、事・・・・?
と思っていると、私のことを呼ぶ声がすぐそばで聞こえながら、私は地面に近づいていった。

「んん~っ。」
あれ、ここって・・・。
私が目を覚ましたのは、見慣れた天井がある自室だった。
「誠奈、大丈夫か?」
「そ、総司?何で総司がここに?」
「誠奈が巡察中に倒れたから、心配でここにいる。今は午後六時三〇分過ぎ。」
え・・・。やっぱり私、倒れたんだ。
「待って、夕飯の時間じゃん!急いで降りないと・・・。」
と焦ってベッドから降りようとする。
「お前が大丈夫なら下に行くか。」
「うん!」
私は隊服のまま下の食堂に向かう。
階段を降りると、厨房の電気がまだついていた。
「あ、誠奈。起きて大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、お母さん。心配かけてゴメンなさい。」
「まぁ、初任務なら必ずなることよ。あ、これ誠奈と総司君用の夕飯。自分たちで持って行ってね。」
「「はい。」」
いつもなら私も総司もご飯の量は一緒。だけれど、体調のことを気にしてか今日のご飯は少なめが一つあった。それを持って食堂に向かう。
カラカラ
「あ、誠奈。」
「誠奈ちゃん・・。」
「セイ姉ちゃん。」
「せ、誠奈・・・。」
反応がバラバラ。ここにいる人はほとんどが私の倒れた理由を知っているのだろう。
私の定位置に座ると、隣に座っている小三の妹・誠華(せいか)が目をキラキラさせながら聞いてきた。
「お姉ちゃん。今日どうしたの?いきなり勇兄とトシ兄と総司兄と一緒に遊びに行ったと思ったら、倒れて帰ってきて。ねぇどうしたの?」
どどどどどどどどどどうしよう!助けを求めて横に座る総司を見る。
 ふいっ
えぇ!そっぽむかれた~っ。前にいる兄の誠助、勇兄、トシ兄などの事情を知っていそうな人に目線を向けるが、全員にそっぽを向かれる。
これ、私がなんとかしろ!ってこと⁉
「あ、ええっとね、お姉ちゃん、カエルが苦手すぎて、肩にカエルが乗って気絶しちゃったんだ。あははははは・・・。」
「お姉ちゃん、カエル嫌いなんだ。じゃあ、ぴょん吉かわいそう。」
「ぴ、ぴょん吉?」
「私のクラスで飼っているカエルちゃん。」
「そ、そうなんだ。」
 ググーッ
だ、誰のおなかの音?
「すみません、俺です。」
総司のおなかの音だそう。
「誠奈も早く食べたほうがいいと思うぞ。おなか鳴っても知らないからな。」
ググーッ
「はい、食べます。」
自分のおなかの音が鳴り、さすがに私ははしを持ち、少しずつ食べだした。
これっきり、ご飯が食べ終わるまで誠華は声をかけて来なくなった。

カラカラッ
「トシ兄ー、入るよーっ。」
「誠奈なぁ。総司もだがそういうのは開ける前に言えよ。」
「「ごめんなさーい。」」
謝る気ゼロ。
「はははっ。トシも少しは多めに見てあげなよ。」
「ダメだろ勇兄。総司はいいが、誠奈はもう中一女子だろ?」
「私、トシ兄なら一本投げで倒せるけれど・・・。」
「そういう問題じゃないだろ・・・。」
トシ兄お手上げ状態。
「というか、誠奈達は出動要請が来ているんだろ?調べたりしなくていいのかよ。」
「私はほとんどしなくて大丈夫。それより総司、父さんから教材来ていないの?」
・・・
部屋の中が一瞬で静かになる。
「来てた。今日から勉強しないとか・・・。」
「あったりまえでしょ。じゃ、ここでやろっか。歴史得意なトシ兄と勇兄がいるし。」
「・・・・はーい。今持ってくる。」
「あ、私はノートとか持ってくる。」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み