地獄の門番と天国の鍵さがし
文字数 1,737文字
起
主人公は不慮の事故で命を落とした中学一年生・草笛露(つゆ)。
天国へ行くはずだったが、天国の扉の前の案内板に貼られた求人ポスターに気づく。
『急募! 地獄の門番』
「天国へ行く前に仕事の経験をしてみたい!」と就職を希望する。
その初日、ドキドキしながら地獄の門の前に立つ露。
なんと初めて応対する相手は同い年の来生将(しょう)だった。
本当は天国へ行くはずだったが、天国の扉を開く「カギをなくした」と話す将。
「盗んだ悪いヤツをさがそう!」と協力を申し出る露。
露は自分が持っている天国の鍵をこっそり使って、将を連れて天国の中へ入る。
自分が通うはずだった中学校をのぞく露は思わず「楽しそう」とポツリ。
そんな露に「だったらオレが代わりに地獄の門番をやろうか?」と言い出す将。
承
天国にも乱暴そうなオジさん、目つきの悪い青年、ずるがしこそうな子供だっている。
そういう「悪そうなヤツ」の特徴を全部持っているのが、意外と将だったりする。
「犯人は将?」
見た目に惑わされてはいけない、と自分に言い聞かせる露。
「このまま二人で天国に住んじゃダメなの?」と将はお気楽な感じ。
露は「ダメだよ」と反論する。
「わたしの仕事は、ちゃんと地獄へ行くべき人を連れて帰ることだから」
将はコワイ顔になる。
「ガンコだな! オレは露と一緒にいられたらいいと思ったんだ」
そして、泣きそうな目になる。
「こんな広い天国の中じゃ、二度と会えないかもしれないんだぜ」
「そんなことはない」と断言する露。
「悲しいことがないから天国なんだよ。会いたい人に会えるのが、天国だと思わない?」
すると、将が意地悪く口元をゆがめて露に言い返した。
「だったら、お前の父さんや母さんに会えるのかよ? 会いたいだろ?」
痛いところを突かれて、言い返す言葉がない露。
転
しかし、露と将の行動はしっかりとエンマ大王に見張られていた。
将は「地獄へ行く人間」だったことが分かる。
親や先生や友達にウソばかりついて困らせた将は、ショッピングモールでキーホルダーを万引きして逃げた挙句に階段で足を踏み外して命を落としたのだった。
「あのキーホルダー、握ったまま死んだはずなのにどこへいったのかな?」と反省の色がない将に、露が激怒する。
「後悔してるんでしょ? どうして素直になれないの!」
本心を見せない将を責める露。本当になくしたのは「心のカギ」ではないか、と。
将も火が付いたように怒り出す。
「心に扉もカギもねえよ。どんどん入ってくるじゃん! お前さ、自由すぎんだよッ!」
将は地獄へ連れて行かれることになった。
でも、なぜ将が天国に入れたのか不思議だった。その理由に露は驚く。
実は、露と一緒に行動することで将の心に「やり直す」気持ちが生まれるかのテストだったと告げるエンマ大王。
もっと上手く将の心のもつれをほどくことが出来ていたら、と悔やむ露。
天上の世界でも反省することになるなんて。
考えないようにしようとしても、つい将の「これから」のことで頭がいっぱいになる。
ウソをつき過ぎた将は、地獄で舌を抜かれるのだろうか? 露の目に涙があふれる。
「どうしてくれるの? 心配で仕方がないじゃない、アンタのこと!」
自分のことで涙を流してくれる露を見て、将の心の中の固く閉ざした感情がゴロンと動いた。
「オレのことなんかで泣くなよ」
将はムリに笑顔を作った。最後の表情は笑っていたい。
露に見せた笑顔は、将にとって初めての思いやりの行動だった。
結局、別々の道を歩むことになる二人。
将の背中を見送り、「今度生まれ変わったら友達になりたいな」と思う露。
結
地獄の門番に新人が配属された。早速できた後輩に喜ぶ露だったが、ビックリ!
その後輩は将だった。将に「やり直し」のチャンスが与えられたのだ。
エンマ大王からのまさかのサプライズに感謝する露。
二人はコンビを組んで門番の仕事をこなす。だが、将の性分はすぐには変わらない。
「ウソは一日一回」のルールを決めるが、その一回のウソの意地悪さにイラっとくる露。
その一方で、将は器用にキーホルダーを手作りしてプレゼントしてくれることも。
三歩進んで二歩下がるような将の「やり直し」に苦笑いしながらも付き合う露。
しばらく二人はイヤになるほどお互い顔を合わせることになるのだった。
主人公は不慮の事故で命を落とした中学一年生・草笛露(つゆ)。
天国へ行くはずだったが、天国の扉の前の案内板に貼られた求人ポスターに気づく。
『急募! 地獄の門番』
「天国へ行く前に仕事の経験をしてみたい!」と就職を希望する。
その初日、ドキドキしながら地獄の門の前に立つ露。
なんと初めて応対する相手は同い年の来生将(しょう)だった。
本当は天国へ行くはずだったが、天国の扉を開く「カギをなくした」と話す将。
「盗んだ悪いヤツをさがそう!」と協力を申し出る露。
露は自分が持っている天国の鍵をこっそり使って、将を連れて天国の中へ入る。
自分が通うはずだった中学校をのぞく露は思わず「楽しそう」とポツリ。
そんな露に「だったらオレが代わりに地獄の門番をやろうか?」と言い出す将。
承
天国にも乱暴そうなオジさん、目つきの悪い青年、ずるがしこそうな子供だっている。
そういう「悪そうなヤツ」の特徴を全部持っているのが、意外と将だったりする。
「犯人は将?」
見た目に惑わされてはいけない、と自分に言い聞かせる露。
「このまま二人で天国に住んじゃダメなの?」と将はお気楽な感じ。
露は「ダメだよ」と反論する。
「わたしの仕事は、ちゃんと地獄へ行くべき人を連れて帰ることだから」
将はコワイ顔になる。
「ガンコだな! オレは露と一緒にいられたらいいと思ったんだ」
そして、泣きそうな目になる。
「こんな広い天国の中じゃ、二度と会えないかもしれないんだぜ」
「そんなことはない」と断言する露。
「悲しいことがないから天国なんだよ。会いたい人に会えるのが、天国だと思わない?」
すると、将が意地悪く口元をゆがめて露に言い返した。
「だったら、お前の父さんや母さんに会えるのかよ? 会いたいだろ?」
痛いところを突かれて、言い返す言葉がない露。
転
しかし、露と将の行動はしっかりとエンマ大王に見張られていた。
将は「地獄へ行く人間」だったことが分かる。
親や先生や友達にウソばかりついて困らせた将は、ショッピングモールでキーホルダーを万引きして逃げた挙句に階段で足を踏み外して命を落としたのだった。
「あのキーホルダー、握ったまま死んだはずなのにどこへいったのかな?」と反省の色がない将に、露が激怒する。
「後悔してるんでしょ? どうして素直になれないの!」
本心を見せない将を責める露。本当になくしたのは「心のカギ」ではないか、と。
将も火が付いたように怒り出す。
「心に扉もカギもねえよ。どんどん入ってくるじゃん! お前さ、自由すぎんだよッ!」
将は地獄へ連れて行かれることになった。
でも、なぜ将が天国に入れたのか不思議だった。その理由に露は驚く。
実は、露と一緒に行動することで将の心に「やり直す」気持ちが生まれるかのテストだったと告げるエンマ大王。
もっと上手く将の心のもつれをほどくことが出来ていたら、と悔やむ露。
天上の世界でも反省することになるなんて。
考えないようにしようとしても、つい将の「これから」のことで頭がいっぱいになる。
ウソをつき過ぎた将は、地獄で舌を抜かれるのだろうか? 露の目に涙があふれる。
「どうしてくれるの? 心配で仕方がないじゃない、アンタのこと!」
自分のことで涙を流してくれる露を見て、将の心の中の固く閉ざした感情がゴロンと動いた。
「オレのことなんかで泣くなよ」
将はムリに笑顔を作った。最後の表情は笑っていたい。
露に見せた笑顔は、将にとって初めての思いやりの行動だった。
結局、別々の道を歩むことになる二人。
将の背中を見送り、「今度生まれ変わったら友達になりたいな」と思う露。
結
地獄の門番に新人が配属された。早速できた後輩に喜ぶ露だったが、ビックリ!
その後輩は将だった。将に「やり直し」のチャンスが与えられたのだ。
エンマ大王からのまさかのサプライズに感謝する露。
二人はコンビを組んで門番の仕事をこなす。だが、将の性分はすぐには変わらない。
「ウソは一日一回」のルールを決めるが、その一回のウソの意地悪さにイラっとくる露。
その一方で、将は器用にキーホルダーを手作りしてプレゼントしてくれることも。
三歩進んで二歩下がるような将の「やり直し」に苦笑いしながらも付き合う露。
しばらく二人はイヤになるほどお互い顔を合わせることになるのだった。