第3話 恋するパジャマ
文字数 1,363文字
「電話、してみようかなあ」
はあ……。
スマホを抱きしめて、100回めくらいのため息。
会えない平日は、気になるメンバーに1回だけ「電話の権利」が使える。
わたしはまだ使ってないから、シン君に電話してみたい。
でも、勇気が出ない。
毎晩ベッドの上で、スマホをいじくり回しながら、もんもんとしてばかり。
もう少し、シン君の気持ちがわからないと電話なんてできないよね。
「気になる2人」に入っていない子から電話がきても、シン君は困ると思うし。
うー、せめて「気になる2人」がわかったらいいのに……。
ゆりちゃんは確実にそのうちの1人だと思う。
あとは新メンバーのだれか? まいちゃんかな?
まいちゃんはギャルなノリで、会った瞬間からシン君と息がぴったりだった。
……よし! 決めた!
この週末は、わたしからツーショットに誘ってみよう。
でも、誘うタイミングって、難しいんだよね。うまくできるかなあ。
先週はリュウにふりまわされて、なんにも進まなかった。
あーあ、こんなにのんびりしていて、もしシン君がだれかとカップル成立しちゃったら、どうしよう?
やっぱり、シン君に電話してみようかなあ……。
ぐるぐる、頭の中で同じことばかり考えて、ちっとも前に進まないよ。
もう、考えるの疲れちゃった。寝ようかな。
〜♪♪♪
わっ! びっくりした! で、電話!? だれから!?
どうしよう、シン君だったら! メイクもしていないのに。
急いで鏡で髪をなおし、応答をタップする。
「すぐ出ろよ」
……リュウ!?
低くてふきげんな声、ムスッとした顔。
「な、なによ! いきなり電話してきて! もう寝ようと思ってたのに」
ピンクのスマホの中にいるリュウは、お風呂上がりみたいで髪がサラサラで、黒いTシャツを着ていた。部屋でも黒い服を着るんだと、妙に感心しちゃう。
「え? まいから、聞いてない? おれ、まいにたのんだんだよ。野乃花に今夜電話するって伝えといてって」
「……聞いてない」
というか、自分にきてる女の子に電話の伝言をたのむなんて、どうかしてる。
さすが悪魔くん。
「まあ、いいや。おかげで野乃花のすっぴん見れたし」
「やだっ、もう!」
恥ずかしくて、急いでパジャマの袖で顔を隠す。
「隠すなよ。……かわいいから。なんかさ、いつも大人っぽいカッコしてるけど、パジャマは女の子って感じだな」
え?
「……そっちの方が似合う。かわいらしい服の方が、野乃花っぽい」
「……ホント?」
恋ステでは、お姉ちゃんから借りたミニスカとかオフショルの、肌が見える服を着ている。
「恋愛初心者」に見えないようにがんばってるんだけど、心の中では恥ずかしくてたまらなかったりする。
今着ているのは、あわいピンクに白のふちどりのコットンパジャマ。
普通すぎるほど普通だけど、たしかにこっちの方がわたしらしい。
素の自分を「かわいい」と言ってもらえたんだ……。
「……ありがと。それはちょっと、うれしい」
それから好きなアーティストや学校の話で盛り上がった。
電話で話す悪魔くんは、オレ様っぽさが抜けて、少しおさなく感じた。
……リュウ、たった1回しかない電話の権利、わたしに使ってくれたんだ。
はあ……。
スマホを抱きしめて、100回めくらいのため息。
会えない平日は、気になるメンバーに1回だけ「電話の権利」が使える。
わたしはまだ使ってないから、シン君に電話してみたい。
でも、勇気が出ない。
毎晩ベッドの上で、スマホをいじくり回しながら、もんもんとしてばかり。
もう少し、シン君の気持ちがわからないと電話なんてできないよね。
「気になる2人」に入っていない子から電話がきても、シン君は困ると思うし。
うー、せめて「気になる2人」がわかったらいいのに……。
ゆりちゃんは確実にそのうちの1人だと思う。
あとは新メンバーのだれか? まいちゃんかな?
まいちゃんはギャルなノリで、会った瞬間からシン君と息がぴったりだった。
……よし! 決めた!
この週末は、わたしからツーショットに誘ってみよう。
でも、誘うタイミングって、難しいんだよね。うまくできるかなあ。
先週はリュウにふりまわされて、なんにも進まなかった。
あーあ、こんなにのんびりしていて、もしシン君がだれかとカップル成立しちゃったら、どうしよう?
やっぱり、シン君に電話してみようかなあ……。
ぐるぐる、頭の中で同じことばかり考えて、ちっとも前に進まないよ。
もう、考えるの疲れちゃった。寝ようかな。
〜♪♪♪
わっ! びっくりした! で、電話!? だれから!?
どうしよう、シン君だったら! メイクもしていないのに。
急いで鏡で髪をなおし、応答をタップする。
「すぐ出ろよ」
……リュウ!?
低くてふきげんな声、ムスッとした顔。
「な、なによ! いきなり電話してきて! もう寝ようと思ってたのに」
ピンクのスマホの中にいるリュウは、お風呂上がりみたいで髪がサラサラで、黒いTシャツを着ていた。部屋でも黒い服を着るんだと、妙に感心しちゃう。
「え? まいから、聞いてない? おれ、まいにたのんだんだよ。野乃花に今夜電話するって伝えといてって」
「……聞いてない」
というか、自分にきてる女の子に電話の伝言をたのむなんて、どうかしてる。
さすが悪魔くん。
「まあ、いいや。おかげで野乃花のすっぴん見れたし」
「やだっ、もう!」
恥ずかしくて、急いでパジャマの袖で顔を隠す。
「隠すなよ。……かわいいから。なんかさ、いつも大人っぽいカッコしてるけど、パジャマは女の子って感じだな」
え?
「……そっちの方が似合う。かわいらしい服の方が、野乃花っぽい」
「……ホント?」
恋ステでは、お姉ちゃんから借りたミニスカとかオフショルの、肌が見える服を着ている。
「恋愛初心者」に見えないようにがんばってるんだけど、心の中では恥ずかしくてたまらなかったりする。
今着ているのは、あわいピンクに白のふちどりのコットンパジャマ。
普通すぎるほど普通だけど、たしかにこっちの方がわたしらしい。
素の自分を「かわいい」と言ってもらえたんだ……。
「……ありがと。それはちょっと、うれしい」
それから好きなアーティストや学校の話で盛り上がった。
電話で話す悪魔くんは、オレ様っぽさが抜けて、少しおさなく感じた。
……リュウ、たった1回しかない電話の権利、わたしに使ってくれたんだ。