第6話(1)

エピソード文字数 2,120文字

「んなっ!? なんなんだねキミ達は!」

 俺達は豪奢な寝室に降り立ち、そこにいたバスローブ姿の青年は絶叫する。
 ほぉーほぉー。この小太りの男が、ピマーン・マーピンか。

「シズナ。日本語を喋っただけで、相手に伝わるんだよね?」
「ええ。普段通りで構わないわ」

 はい、確認終了。こっちは予定が詰まってるんで、早速やろう。

「お前が野緑を使って、色紙育月にちょっかいを出したんだよなぁ? ネタはあがってるんだぜ?」
「……な、なんの事だ? 身に覚えがないぞ」

 マーピンのやや緑ががった皮膚の上を、大粒の汗が流れる。この反応は覚えがあると瞭然で、コイツもシラを切りやがった。

「にゅむっ。ゆーせー君、こーゆー時はあれだよー」
「そうだね。あれの出番だ」

 俺はヤツに歩み寄り、左腕を掴む。さあいざやろう。

「今すぐ白状して、二度とアイツに手を出さないと誓え。さもなくば、『チェンジ・マナ』で魔力に変換するぞ」
「降参です二度とアイツに手を出さないと誓います」

 コンマ数秒で降伏した。この究極奥義、どんな拷問よりも効くな。

「従兄くん、無事解決ね。戻りましょうか」
「ぁ、その前にやることがあるよ。マーピン、速攻警察に電話して自首をしろ」

 こうしておけば逮捕はスムーズに進み、魅条さん達の負担は減る。これは、育月を任せたせめてものお詫びだ。

「も、もしもしっ、ピマーン・マーピンれす! ボクを捕まえてちょ!!
「馬鹿者それじゃ伝わらないだろ! 何をしたか語れっ」
「い、イエッはー!! 少ひでもトチったら殺されるほ思ったのへ、テンパっひゃのでありまふ!」

 なぜかふにゃふにゃの軍人風になり、マーピンは携帯電話に喋る。しかしその携帯電話は上下が逆だったので、一からやり直しとなってしまった。
 ……これは今後もかなり心配だから、通話相手の御声を聞いていよう。そんで不手際があったら、ボクが言います。

「のっ農家をやっている、あのピーマン・マーピンれふ。どもこんにちはぁ!」
『こ、こんにちは……』

 耳を澄ませば、女性の戸惑っている声が聞こえてきた。
 最初はまさかの、『のっ農家』。とーーーーっても、バトンタッチの予感がしまふ。

「僕、罪を犯してしまいました! 逮捕してくらさいっ!」
『あ、あのピマーンさん。どのような罪を、犯したのですか?』
「脅迫です! 脅迫をしたのへ、パトカーで捕まえにきてくらひゃい!」
『…………えっと、ピマーンさん? それは、なんの冗談ですか?』

 女性は、呆れたように大息を吐いた。
 おや? この人は、微塵も信じていないぞ? どんなに良い人でも悪事を働くことはあるのに、どうしてああ言い切れたんだ?

『貴方のお父様は莫大な財産があるゆえに度重なる脅迫を受け、そのせいで貴方は「脅迫という行為」が心底怖いのでしょう? ピマーンさんが脅迫を出来る人でないという事は、全国民が熟知していますよ』

 あーね。それでコイツは、あんなにビクビクしてたのか――って待てよっ。

「脅迫が怖い人が、脅迫してる。これって……」

 これって。

「ピマーン先生。もしやおまん、誰かに脅されてるがかえ?」
「…………ぶっちゃけますと、そうです。『1位を脅し、仮に新たな1位が誕生したらソイツに1位を脅させ、最後はお前も辞退しろ。そして途中で失敗した場合は、お前が罪を背負え。さもなくば畑に害虫をまき散らすぞ』と、現4位のピマ山ピマ彦から手紙が来ました」

 マーピンは「すみません。あとでかけ直します」と電話を切り、奥にある部屋から茶色い封筒と便箋を持ってきた。

「…………確かに……。これには、そう書いてるな……」
「それに加え、マーピンさんの性質は国民が証人となる。これは真ね」

 衝撃の事実、発覚。コイツも被害者だった。

「にゅむむっ。だとしたらゆーせー君、早く4位さんを捕まえないとだよーっ」
「その男が、新手を放つ可能性があるもんなぁ。マーピンよ、ピマ彦ってのはどこに住んでんの?」
「その者は雨を感知できる『雨読族(うどくぞく)』で、一つ前の次元に住んでいます。ここに詳しくございますよ」

 封筒の裏を見てみると、郵便番号と住所が書かれていた。こりゃあ、この上なく斬新な脅迫状ですな。

「ピマ山さんの所にも行った事があるから、座標もすぐに特定できるわ。…………フュルさん、ここがそうよ」
「ふむふむ……………………よし、準備OKやねっ。師匠、いつでもえい――師匠?」
「ゆーせー君、眉間を摘まんでるー。どしたの?」
「この流れ、前とおんなじでしょ? だからまた、おんなじ流れになりそうな気がしたんだよ」

 4位も被害者で、5位が犯人じゃないよな? そしたら間に合わなくなって、途中で合流しないといけなくなるぞ……。

「従兄くん、考え過ぎ。そこまで連鎖していないわよ」
「『二度ある事は三度ある』ってのは、えーと…………戒め的な諺先生ながで。そりゃないき」
「そ、そうだよねぇ。じゃあ行きましょうか」
「にゅむ!」

 にゅむ! 俺達は、第4位のもとへ飛んだ。
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

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