序章 伝承

文字数 388文字

冬の海は美しい。空気が澄んでいる。

私は海に思いを馳せる。

幾重にも重なった水の層。光は水面に潰える。
熱を奪いながら、深く、深く、沈んでいく。
海の生き物達が私を見ていた。
気が狂いそうな程の膨大な水の中、
多種多様な物質が揺蕩っている。

私は海に八百屋で買った桃を投げ入れた。
次に、鮮魚店で買って捌いた魚の内臓を投げ入れた。
最後に、花屋で買った仏花を投げ入れた。
二拝、二拍手、一拝。

どうか成仏しますように。


「お、お、お、はとお、お。
 おやまでとれたすいみつとう。
 うみにむかってなげりゃんせ。
 あかきいしをささげたら、
 にれい、にはくしゅ、いちれいを。
 こうべをたれていのりゃんせ。
 つゆのひよりいづるもの。
 よみよりきたるもうじゃなり。
 みれんたたせてじょうどをしめす、
 はすのはなをくわしゃんせ。
 いのちめぐりてふたたびかえる。
 おまえのもとにやってくる。
 お、お、お、はとお、お」
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