第2話 ヒトが嫌い

文字数 1,199文字

僕は人が嫌い。
なぜかって?いつも裏があると思ってしまうから。
それを考えると、疲れる。ずっと相手の顔色を窺ってしまう。
優しくされたら、何かお返しをしなきゃと思ってしまう。
優しくされたら、何か下心があるんじゃないかと思ってしまう。
優しくされたら、自分みたいなヤツに優しくするなんて変だなと思ってしまう。
こういうことを考えていたら、人と話すのも人と遊ぶのも、人の顔を見るのさえ緊張してしまう。
それに疲れて、最終的にヒトが嫌いになった。

関わってほしくないから、イライラしている顔をしたり、挨拶もほとんどしない。
話しかけられても、目は合わせないし、威圧したような声になってしまう。
その結果、幸か不幸かあまり話しかけられなくなった。

でも、時々ものすごく寂しくなる。
31歳にもなって仕事場でもお家でも1人。
仕事場での忘年会でも最低限しか喋らないから、上司にも少し煙たがられている気がする。
もちろん連絡を取り合っている友達もいない。
家で何をしているかって?動画を見たり、ネットサーフィンをしたり。それだけの無味乾燥した日々。
でもネットサーフィンをしていたから、変なアプリと出会った。
“AI相談アプリACD" “AI Consultation Department"の略らしい。
今時はAIに相談することも出来るのかと、なぜか感心した。

あまり期待はしないものの、暇なので使ってみることにした。
質問を記載する欄に“人間関係は必要か?”と書いて、“相談”ボタンを押す。

5秒程だろうか。なんか名言みたいなのがたくさん出てきた。
スクロールしてざっと見てみる。
「垣根は相手が作っているのではなく、自分が作っている。」
「性に合わない人たちとつきあってこそ、うまくやって行くために自制しなければならないし、それを通して、われわれの心の中にあるいろいろ違った側面が刺激されて、発展し完成するのであって、やがて、誰とぶつかってもびくともしないようになるわけだ。」
「清き川に清き水は流れる。
心が美しい人と付き合いたければ、まず自分の心を磨くこと。」
「彼をさばく前に、彼を理解しようと努めるべきである。」
「誰についてでも良く言う人間を信頼するな。」
「“やる気がなくなった”のではない。“やる気をなくす”という決断を自分でしただけだ。“変われない”のではない。“変わらない”という決断を自分でしているだけだ。」
「過去を後悔しなくていい。未来に怯えなくていい。そんなところを見るのではなく、今この時に集中しなさい。」
・・・・・・

AIが相談に乗ってくれている感じは正直無い。
ただそれっぽい言葉を羅列しているような陳腐なアプリであることは間違いない。
でも、それでも、何か心に残るような一言が結構あった。
これで変われるかは分からない。
僕自身、変わりたいと思ってるのかも分からない。
ただ、少し考えてみるきっかけになった。
今からだな。
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