第8話(2)ほぼ知らない人たちのイベントを観覧
文字数 2,283文字
「往来で大声を上げるな、迷惑だろう……」
「ヴィランに諭された!」
「とにかく入るぞ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんだ……」
舞に腕を引っ張られたジンライはウンザリ気味に呟く。
「百歩譲って、イベント観覧はいいわ。でも誰よ、シーズンズって?」
「シーズンズを知らないだと?」
「生憎、ちっとも!」
「正気とは思えんな……」
ジンライは信じられないと言った表情で舞を見る。
「そ、そこまで言われるほど⁉ 漫画はそれほど見ないのよ。代表作は?」
「……ドッポ、教えてやれ」
ジンライは車から通常形態に戻って、自らの肩に乗ったドッポに説明を促す。
「サクヒンメイハ『キ』デハジマリ、ゴモジメガ『イ』デス」
「なによ、その微妙なヒントは……」
「ゲキジョウバンアニメモダイヒットシマシタネ」
「あ! 分かった! え? 『鬼○の刃』⁉」
「違う」
「違うの⁉」
ジンライはやや呆れ気味に答えを言う。
「『季節の合間』だ」
「なにそれ⁉」
「人と人外の生物によって織り成される季節の合間を描いたハートウォーミングな作品だ」
「し、知らないわ!」
「アニメでは食卓シーンのハイクオリティな作画が話題を呼んだ……」
「ほ、本当に話題を呼んだの?」
「特にあの里芋の煮っころがしの作画は世界のSNSを席巻した……」
「クオリティ高めるところ間違っていない?」
「全く、季節の合間も知らんとは……」
ジンライはため息をつく。
「ほ、他にはないの?」
「……ドッポ」
「サクヒンメイニ『ジュツ』ガハイリ、『カイセン』デオワリマス」
「また、クセのあるヒントの出し方ね……でも分かったわ! 『呪術○戦』ね!」
「……違う」
「え⁉」
「『手術海鮮』だ」
「はい? なによ、それ?」
「医者として手術をする二人が、オフの日には仲良く釣りを楽しむストーリーだ」
「し、知らない! ってか、どんなストーリーよ!」
「医療漫画としてだけでなく、釣り漫画、グルメ漫画の側面も併せ持つ贅沢な作品だな」
「コンセプトがぶれていない?」
「むしろそこが良いと評価されている」
「どこで評価されているのよ……」
「季節も手術も知らん奴がいるとはな……国民的少女漫画だぞ?」
ジンライが軽く頭を抑える。
「え、少女漫画なの⁉」
「まあいい、そろそろ時間だ、店に入るぞ……」
ジンライたちがビルに入り、イベントが行われる会場に着く。
「イベントのお客さん、99%女性ね……」
「良いものに性別など関係ない……いわんや星の違いもな」
「説得力ある物言いね……あ、そろそろ始まるみたいよ」
司会者が壇上に上がり、イベントの開始を告げる。
「それではトークショーを始めさせて頂きます……シーズンズの皆さんです!」
「きゃあああー!」
女性客から黄色い歓声が上がる。四人の端正なルックスの男性がステージに現れる。
「よ、四人組なのね……」
「複数連載を抱えているからな、一人二人ではなかなか大変なのだろう」
「ヨニンソレゾレノサッカテキキャラクター、パーソナリティヲツカイワケタサクフウニテイヒョウガアリマス」
「そ、そうなの……」
ジンライとドッポの説明に舞が頷く。四人組が自己紹介を始める。
「桜花青春 です! よろしく!」
すらっとしたスタイルで、短い青髪の男性が挨拶する。
「その名の通り、青春を題材にした作品が多い。読者の間では『エモい』担当とされている」
「エモい担当……青春を題材……学園ものとか?」
「そうだな、後、スポーツものが多い、『苦虫マダム』とかな」
「どんなスポーツものよ……マダムとエモさはなかなか結びつかないでしょ……」
「疾風朱夏 です……よろしくお願いします……」
四人組の中では小柄な、少年と言ってもいいルックスの朱髪の男性が挨拶する。
「恋愛や日常ものが多い。担当は『尊い』だな。疾風というがもしや……」
「ああ、はとこよ、ほとんど会ったことはないけど、まさか漫画家になっていたとはね」
「ふむ、世間は意外と狭いものだな……代表作は『手洗いミューズの赤木さん』だ」
「どういう恋愛ものよ……」
「佳月白秋 だ。よろしく頼む……」
やや斜に構えた態度の白髪の男性が挨拶する。
「バトルや歴史ものを多く手掛けている。『エグい』担当だ」
「エグい担当って……」
「主に戦闘描写がな。それが良いという読者もいる。『文具のり』がヒットした」
「文具でどうエグさを出すのよ……」
「吹雪玄冬 ……よろしく……」
四人の中では一番筋肉質で、黒髪の男性が挨拶する。
「『チルい』担当だな。見た目に反してエッセイ風やほのぼのギャグ作品が多い」
「チルい?」
「落ち着く作風ということだ。『今朝、なに食べたっけ?』とかな」
「どんな漫画よ……っていうか、さっきから一つも知らない漫画ばかりなんだけど」
首を傾げる舞をよそに、司会者が話し始める。
「……さて、四人にご挨拶頂きました。まずはトークショーの方を始めさせて頂きます……」
「きゃあー⁉」
女性の悲鳴が響き、ビルの窓が割れる。舞が驚く。
「な、なに⁉」
「! あれは……」
窓に駆け寄り、外を見下ろしたジンライが目を見開く。そこには灰色のパワードスーツに身を包んだ者が数人、茶色のパワードスーツを着た者が一人いた。茶色のスーツが叫ぶ。
「我々はドイタール帝国第十三艦隊特殊独立部隊である! 突然だがこの都市は我々の支配下とする! 無駄な抵抗はしないことだ。さもないと……」
「!」
茶色のスーツが周囲のビルの壁や窓ガラスに銃撃を加える。群衆はパニックに陥る。
「ジ、ジンライ!」
「奴らめ……ん⁉」
「行きますよ!」
「なっ⁉」
朱髪の男性の掛け声でシーズンズの四人が窓から勢いよく飛び出し、ジンライは驚く。
「ヴィランに諭された!」
「とにかく入るぞ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なんだ……」
舞に腕を引っ張られたジンライはウンザリ気味に呟く。
「百歩譲って、イベント観覧はいいわ。でも誰よ、シーズンズって?」
「シーズンズを知らないだと?」
「生憎、ちっとも!」
「正気とは思えんな……」
ジンライは信じられないと言った表情で舞を見る。
「そ、そこまで言われるほど⁉ 漫画はそれほど見ないのよ。代表作は?」
「……ドッポ、教えてやれ」
ジンライは車から通常形態に戻って、自らの肩に乗ったドッポに説明を促す。
「サクヒンメイハ『キ』デハジマリ、ゴモジメガ『イ』デス」
「なによ、その微妙なヒントは……」
「ゲキジョウバンアニメモダイヒットシマシタネ」
「あ! 分かった! え? 『鬼○の刃』⁉」
「違う」
「違うの⁉」
ジンライはやや呆れ気味に答えを言う。
「『季節の合間』だ」
「なにそれ⁉」
「人と人外の生物によって織り成される季節の合間を描いたハートウォーミングな作品だ」
「し、知らないわ!」
「アニメでは食卓シーンのハイクオリティな作画が話題を呼んだ……」
「ほ、本当に話題を呼んだの?」
「特にあの里芋の煮っころがしの作画は世界のSNSを席巻した……」
「クオリティ高めるところ間違っていない?」
「全く、季節の合間も知らんとは……」
ジンライはため息をつく。
「ほ、他にはないの?」
「……ドッポ」
「サクヒンメイニ『ジュツ』ガハイリ、『カイセン』デオワリマス」
「また、クセのあるヒントの出し方ね……でも分かったわ! 『呪術○戦』ね!」
「……違う」
「え⁉」
「『手術海鮮』だ」
「はい? なによ、それ?」
「医者として手術をする二人が、オフの日には仲良く釣りを楽しむストーリーだ」
「し、知らない! ってか、どんなストーリーよ!」
「医療漫画としてだけでなく、釣り漫画、グルメ漫画の側面も併せ持つ贅沢な作品だな」
「コンセプトがぶれていない?」
「むしろそこが良いと評価されている」
「どこで評価されているのよ……」
「季節も手術も知らん奴がいるとはな……国民的少女漫画だぞ?」
ジンライが軽く頭を抑える。
「え、少女漫画なの⁉」
「まあいい、そろそろ時間だ、店に入るぞ……」
ジンライたちがビルに入り、イベントが行われる会場に着く。
「イベントのお客さん、99%女性ね……」
「良いものに性別など関係ない……いわんや星の違いもな」
「説得力ある物言いね……あ、そろそろ始まるみたいよ」
司会者が壇上に上がり、イベントの開始を告げる。
「それではトークショーを始めさせて頂きます……シーズンズの皆さんです!」
「きゃあああー!」
女性客から黄色い歓声が上がる。四人の端正なルックスの男性がステージに現れる。
「よ、四人組なのね……」
「複数連載を抱えているからな、一人二人ではなかなか大変なのだろう」
「ヨニンソレゾレノサッカテキキャラクター、パーソナリティヲツカイワケタサクフウニテイヒョウガアリマス」
「そ、そうなの……」
ジンライとドッポの説明に舞が頷く。四人組が自己紹介を始める。
「
すらっとしたスタイルで、短い青髪の男性が挨拶する。
「その名の通り、青春を題材にした作品が多い。読者の間では『エモい』担当とされている」
「エモい担当……青春を題材……学園ものとか?」
「そうだな、後、スポーツものが多い、『苦虫マダム』とかな」
「どんなスポーツものよ……マダムとエモさはなかなか結びつかないでしょ……」
「
四人組の中では小柄な、少年と言ってもいいルックスの朱髪の男性が挨拶する。
「恋愛や日常ものが多い。担当は『尊い』だな。疾風というがもしや……」
「ああ、はとこよ、ほとんど会ったことはないけど、まさか漫画家になっていたとはね」
「ふむ、世間は意外と狭いものだな……代表作は『手洗いミューズの赤木さん』だ」
「どういう恋愛ものよ……」
「
やや斜に構えた態度の白髪の男性が挨拶する。
「バトルや歴史ものを多く手掛けている。『エグい』担当だ」
「エグい担当って……」
「主に戦闘描写がな。それが良いという読者もいる。『文具のり』がヒットした」
「文具でどうエグさを出すのよ……」
「
四人の中では一番筋肉質で、黒髪の男性が挨拶する。
「『チルい』担当だな。見た目に反してエッセイ風やほのぼのギャグ作品が多い」
「チルい?」
「落ち着く作風ということだ。『今朝、なに食べたっけ?』とかな」
「どんな漫画よ……っていうか、さっきから一つも知らない漫画ばかりなんだけど」
首を傾げる舞をよそに、司会者が話し始める。
「……さて、四人にご挨拶頂きました。まずはトークショーの方を始めさせて頂きます……」
「きゃあー⁉」
女性の悲鳴が響き、ビルの窓が割れる。舞が驚く。
「な、なに⁉」
「! あれは……」
窓に駆け寄り、外を見下ろしたジンライが目を見開く。そこには灰色のパワードスーツに身を包んだ者が数人、茶色のパワードスーツを着た者が一人いた。茶色のスーツが叫ぶ。
「我々はドイタール帝国第十三艦隊特殊独立部隊である! 突然だがこの都市は我々の支配下とする! 無駄な抵抗はしないことだ。さもないと……」
「!」
茶色のスーツが周囲のビルの壁や窓ガラスに銃撃を加える。群衆はパニックに陥る。
「ジ、ジンライ!」
「奴らめ……ん⁉」
「行きますよ!」
「なっ⁉」
朱髪の男性の掛け声でシーズンズの四人が窓から勢いよく飛び出し、ジンライは驚く。