Ep.2
文字数 659文字
case.桃生
行くあてもなく校舎内を歩いていた。
二者面談は終わり、いつものごとく成績を褒められ、終いにはいつもの一言。
「志望校、ワンランク上げない?」
今のわたしは天才や秀才なんかじゃないけれど、それなりに勉強ができる部類にいる。
ただ、事情があって志望校をレベルが低いところに設定してあるだけだ。
「先生、」
「急ぎじゃなくてもいいから、よく考えてきて」
どれだけ考えたって私の選択肢は一つ。
だから考えることなんて何も、何もない。
「いた!はるる!!」
そう言って私を呼び止めたのは__蒼井六夏だ。
「どうしたの、リッカ」
「これからまふゆと橙山と勉強会しようと思って」
「あきせちゃんはさっきすれ違ったけどもう帰るところだったよ」
「え!?そっか……じゃあ3人で、どう?」
うーん、と悩む仕草を見せて、返答を出す。
「いいよ、足手纏いにならないでね」
毎日のようにこうして勉強会をしているが、あきせちゃんが来たことは一度もない。
彼女は学校の間は勉強を教えてくれても、下校時間になると速攻で家路に着く。
いわく、自分の勉強は家でするのが一番いい、とか。
私にはちょっとその感覚はわからないけれど、秀才にはきっとそんなものなんだろう。
「まふゆくん、この問題って__」
その時、確かに違う何かを感じた。
違和感?いや、そんな次元じゃない。
“デジャヴ”だ。
「どうかした?」
「大丈夫、ちょっと変な感覚がして」
「…変な感覚?」
顔を上げて目が合ったまふゆくんは知ってる人じゃないみたいだった。
「まふゆ、くん?」
「…ごめんね」
そう言った彼の手は私の首元に伸びていた。
行くあてもなく校舎内を歩いていた。
二者面談は終わり、いつものごとく成績を褒められ、終いにはいつもの一言。
「志望校、ワンランク上げない?」
今のわたしは天才や秀才なんかじゃないけれど、それなりに勉強ができる部類にいる。
ただ、事情があって志望校をレベルが低いところに設定してあるだけだ。
「先生、」
「急ぎじゃなくてもいいから、よく考えてきて」
どれだけ考えたって私の選択肢は一つ。
だから考えることなんて何も、何もない。
「いた!はるる!!」
そう言って私を呼び止めたのは__蒼井六夏だ。
「どうしたの、リッカ」
「これからまふゆと橙山と勉強会しようと思って」
「あきせちゃんはさっきすれ違ったけどもう帰るところだったよ」
「え!?そっか……じゃあ3人で、どう?」
うーん、と悩む仕草を見せて、返答を出す。
「いいよ、足手纏いにならないでね」
毎日のようにこうして勉強会をしているが、あきせちゃんが来たことは一度もない。
彼女は学校の間は勉強を教えてくれても、下校時間になると速攻で家路に着く。
いわく、自分の勉強は家でするのが一番いい、とか。
私にはちょっとその感覚はわからないけれど、秀才にはきっとそんなものなんだろう。
「まふゆくん、この問題って__」
その時、確かに違う何かを感じた。
違和感?いや、そんな次元じゃない。
“デジャヴ”だ。
「どうかした?」
「大丈夫、ちょっと変な感覚がして」
「…変な感覚?」
顔を上げて目が合ったまふゆくんは知ってる人じゃないみたいだった。
「まふゆ、くん?」
「…ごめんね」
そう言った彼の手は私の首元に伸びていた。