Ep.1
文字数 680文字
case.桃生
理想は高く、夢は大きく、目標には真っ直ぐ。
私の数多いこだわりのひとつだった。
「次、はるる」
名前を呼ばれた私は、担任との二者面談に向かう。
高校3年生、桃生春瑠には現実が見えている。
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case.蒼井
何か大事件が起きて、それを僕が解決する…みたいな妄想を現実化できないかと画策している。
きっと誰の頭の中にも一回は現れたことのある理想で、でもほとんどの人はそれを妄想に留める。
僕にはそれができないで、どうにか現実にならないかと力を注いでしまう。
「名探偵リッカ…とか」
「なんか言った?」
「いや、何も」
蒼井六夏の独り言は、独り言のままでいられた。
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case.橙山
我ながらつまらない人生を送ってきた方だと自負している。
貧乏でも裕福でもなく、かといって不満なんて無いような家庭で過ごしてきた。
学校にもある程度友達がいるけれど、放課後は家に直行。
「あきせちゃん、この後カラオケ行かない?」
「ごめーん!今日の課題難しそうだし、帰って早く取り組もうかなって」
もー、真面目なんだから、という声をよそに鞄を持って下駄箱へ向かう。
橙山秋瀬の人生がこんなつまらないまま終わってもいいのか、なんて考えもしなかった。
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case.白河
「まふゆくん、課題のこの問題ってわかる?」
「はるる、流石にまふゆでも解けないよこんなの」
「リッカは黙ってて!あー、こんな時にあきせちゃんがいたらなぁ」
放課後にみんなで集まる、こんな時間がずっと続いて欲しいと思ってた。
自分の理想も現実も関係なかった。
白河真冬の理想的で仮想的な願いが、現実になるとしたら___