第7話

文字数 1,584文字

 「こんにちは」
 「はい、いらっしゃいませ」
 「すいません、家を探しているんですが」
 「それなら交番行かれた方が」
 「いや、誰かの家を探してるんじゃなくて、自分の家を探してるんですよ」
 「迷子ですか?やっぱり交番に」
 「だから!住む所さがしているんです!」
 「ホームレスですか?」
 「ちゃうわ!いや、今度結婚するんで、一人から二人になるから…、愛の巣を…」
 「じゃあ隣のガソリンスタンドの屋根にありますよ」
 「燕か!ここ不動産屋さんでしょ!だから、二人で住むから、それに合うような場所を」
 「なかなか二人で住めるような犬小屋は無いですよ」
 「なぜ犬小屋!一応2LDKぐらいで」
 「ご予算は?」
 「まあ安いところがいいんですけど」
 「じゃあ決算は?」
 「会社か!なんで決算までいる!」
 「ちょっとご希望を言ってください。条件検索で探してみます」
 「なるほど。じゃあ予算は8万前後、街中近くの2LDKで、買い物が便利な所で」
 「えーと、20件ほどヒットしましたね。あと2ホームランで10三振」
 「何で野球の話!」
 「えーとヒットした1件目ですが、街中心部まで徒歩1分」
 「凄く近いですね」
 「15階建ての最上階で大浴場と宴会場がありますね。一泊二人で8万円」
 「それホテル!」
 「予算8万前後と聞いてますが」
 「月額だよ!」
 「それですと、ヒット数が2件になりますね」
 「最初からホテルは条件に入れるな!」
 「えーと、まず1件目は街中まで徒歩五分」
 「近いですね」
 「家賃はちょっと…」
 「やっぱり高くなります?」
 「3万になります」
 「やすっ!それって…なんか怪しい物件じゃないの」
 「いえ、特には。部屋割りは1畳1部屋と2畳1部屋、リビングダイニングが3畳になります」
 「それ6畳間を無理矢理仕切ってるだけじゃん!で、あと一件は?」
 「はいはい、街中まで徒歩10分、12畳2部屋、リビング20畳ですね。家賃は8万」
 「うわー、広いですね。本当に8万?」
 「ええ、8万ドル」
 「それって約900万円じゃん!」
 「お、計算早いですねえ」
 「そんなことはどうでもいい!」
 「あ、あと1件ヒットしてますね。街中まで徒歩20分」
 「徒歩20分かあ、まあいいや。部屋は?」
 「えーと6畳2部屋と8畳のリビングですね。家賃は8万5千円」
 「ちょっと高めだけどこれでいいかなあ」
 「ダイニングはカウンターキッチンです」
 「いいねえ」
 「あとダイイングメッセージ付きです。妻め、呪ってやる…って」
 「それ旦那死んでんじゃん!事故物件!」
 「大丈夫ですよ、ホントは『呪ってやる』が『祝ってやる』に間違えてたし」
 「そんな話じゃなくて!」
 「それに死体はもうありませんよ」
 「だから!そんなところ怖いでしょ!まさか。幽霊とか…」
 「大丈夫ですよ、台所にしかでないから」
 「出てんじゃん!もう街中近くなくていいからありませんか?」
 「そうですねえ…、あ、郊外に一戸建てありますね」
 「一戸建てかあ、将来考えたらそれでもいいかなあ」
 「2階建て部屋は3つとリビングダイニング12畳ぐらいですね」
 「ほう、家賃は?」
 「月5万円です」
 「それにしようかなあ。他に特徴は?」
 「えーと、風呂とトイレが外ですね、五右衛門風呂と汲み取り便所」
 「どんな田舎の郊外だよ!」
 「あと牛と豚つがいで2頭ずつ付きますよ。駅は郊外の無人駅近いし。もうすぐ廃線ですが
 「酪農もしない!もうちょっと街中で無いの?」
 「うーん、そしたら…、街中まで5分、3LDK、築2年、家賃は…5万円!さあどうだ!」
 「どうだって…、でもいいですね、家賃も安いし…、あ、でもまた訳アリ物件とか?」
 「いえ、何にもないですよ、保証します」
 「本当に?」
 「そこに住んでる私が保証します!だからルームシェアで私と一緒に」
 「住めるか!」
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