第1話

文字数 894文字

 この原稿を書いている時点(2020年5月)では、依然として(第1回)新型コロナウイルス感染拡大に対する緊急事態宣言が出されたままで、生活の調子が狂った日々が続いている。
 地元温泉は閉鎖され朝風呂もなくなり、元気印の常連にも会えない。街の居酒屋は電気が消え、カラオケのマイクも握っていない。会話もマスク越しで、自分の地声すら久しく生で聞いていない。夜、出歩かないので朝まで長くて退屈だ。
 部屋で夜7時過ぎからテレビを観ることなど久し振りだが、どの番組もコロナ、コロナでさすがに飽きた。そんな時、ふとBSの放送大学の「宇宙の誕生と進化」という番組に目が止まった。
 「宇宙はおよそ138億年前に誕生した。」「光の観測限界は約138億光年で、地球に届いた光の発信源は、138億年の間にさらに宇宙の膨張で地球から離れていき、実際の発信源は約470億光年先にある…」光は1秒間に約30万㎞、地球を7周半進む。光が1年間に進む距離を1光年といい、約9兆4,800億㎞である。時速 100㎞の車だと約 1.082万年かかる。その光で138億年…。この放送大学の講義で分かったことは、宇宙は途轍(とてつ)もなく広く大きいということだ。
 かたや今、お騒がせの新型コロナウイルスは1㎜の 1/20,000~1/5,000 の大きさだ。小さい。
 広大な宇宙から見れば、きっと点よりも小さな地球の上で、人類がさらに極小のウイルスと戦っている。138億光年と 1/20,000 mm、このスケールの違いに眩暈(めまい)がした。
 写真は2017年6月、羽越本線 北余目(きたあまるめ)駅を発車した上り鈍行列車である。背景の鳥海山を望遠レンズで引き寄せて撮影した。

 地元温泉の常連たちが言っていた。「庄内には満員電車はねえ。」「余目には歓楽街もねえ。」「農家にはテレワークは要らねえ。」「田んぼではマスクも要らねえ、換気も必要ねえ。」
 この写真をじ~っと眺めて不思議に思う。このスケールの大きな大自然豊かな庄内で、どうして 1/20,000 mmの大きさのウイルスが人から人にうつるのだろう。やはり「三密」が原因かの…。
 んだの~。
(2020年6月)
 

 
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