序文
文字数 736文字
古い関連書籍でも文集でもない。少し毛色の違う薄い本が君の興味を引いたのは、他にやることがないからだ。他に部員もいなくて(違ったらごめん)、これからどうしようかと、伸びをしている毎日。そこへやらなければならない課題が生まれてしまったから、君はこの部活をいかし続ける郷土愛へと目を向けた。そして今、この本を読んでいる。
本に親しんでいる君なら、手作り感に驚くだろう。元にした作品の素晴らしさばかりが際立つ表紙。タイトルに
これを読んでいる君が、教師でないことを祈ろう。まあ別に、教師であってもぼくは困らないのだけど。できれば大人には読んで欲しくないし、そのことは君も感じ取ってくれると思う。これを読めば、君はぼくを探したくなるかもしれないから、一応言っておくけれど、菱久田香雪の曾孫は十一人いて、そのうち七人はこの中学校を卒業するか、する予定だ。たぶん、簡単には特定できないと思うし、そもそもどこまでが本当かなんてわからないだろう。絶対に徒労におわるから、ぼくはおすすめしない。……つまりは気恥ずかしいから勘弁してくれってことだ。それでも書き残しておきたいことがあったんだ。大人になってからではきっと、嘘になってしまうから。
だからもし、君が退屈しているのなら、世界を面白く書き換えてほしい。
大人が見たがる恋なんか、ぼくたちには必要ないんだって。
大人が
君は君の物語で、ぼくたちをにやにやとながめる大人たちを、ぶん殴ってほしい。
思い知らせよう。
ぼくらの恋は、大人が語れるものじゃないんだと。