如月真琴

文字数 3,119文字

ここは如月真琴の実験場です!

――あなたも作品になりたいですか?

西暦20XX年――この国では少子化問題が顕著となっていた。

そこで日本政府は「少子化対策法案」を強制執行。

老若男女、見境なく「子供を作る」ことのみを推奨されていた……!


生産性の無い百合は迫害され、妊娠のみが正義となったこの国で――。

幼女は、ひとり、今日も生産性の無い愛を乞い続ける――。

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あー、今日も積乱雲が良い形してるー。綺麗だなー。

……あんっ、興奮してきちゃった。

彼女は人や物に恋すれば「その相手が死ぬ」ということを、何となく理解していた。

ある日を境に発症した病気――それが、禁断の果実だということを。


なので彼女は、上を見上げ、恋をする。

そこに――死が無いと気付いていたから。

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逃げろーーーー!! 何か空から降ってくるぞーーーー!!
遠くで男性の声が聞こえた。

何とも通った、凛々しい声が。

彼女はその声にすら恋をしようとして――必死にその思いを打ち消した。


彼を――能力でダメにしてはいけない。

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あれ、でもさっきのおにーさん、何て言ってたんだろう……。
そう惚けたその時、彼女の目の前に大型カプセルが飛来してきた――!

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そのカプセルは大きな音と共に衝撃波を放ち、周囲にあったあらゆる木々を巻き込みながら、辺り一面を焼け野原のような更地に変えて――。

ぷしゅー、という音と共に、ハッチが開いた。

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てー↑てー↑ててててー↑てーん↓
【警告:そのフレーズはこの星ではJASRACが保有しています】

この星の法律を参照――著作権法により、

300万円以下の罰金か、死刑執行が課されてしまう危険性があります。

十分に気をつけてクダサイ。

な、なんて生きづらい星なんだ……!
え、えっと……あなたたち、誰?
少女は目の前に現れてコントを始めるロボットと男――否、怪しげな石像を訝しんだ。

なるべく能力が発動しないよう、慎重に――。

まさに、未知との遭遇だった。

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ハジメマシテ、第一発見地球人。

私はこの星の政府に要請され、宇宙からやってきたロボット、分ぴ2-D2です。

一緒に少子化対策を行いましょう!

私はこのロボットの使い方を説明する役目を負った石像。

アナルン・スカイウォーカーだ。

ちなみに彼とは幼馴染である。やん、恥ずかしい。

は、はぁ……。
よく分からないけれど、

自分以上にヤバげな人たちだということを彼女は早くも理解していた。

ただ――ひょっとしてこの人たちなら、死ぬことは無いのかもしれない――。

そんな妄想が湧き上がりはじめる。

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えっと……少子化対策っていうのは、具体的に、どんな遊びなの?
ははは、嬢ちゃんカマトトぶってんじゃねぇ。

子作りは遊びなんかじゃ――。

良い質問ですね、地球人。

名前を教えていただけますか?

(おいおい、もしかしてこの男……

こんな幼気な女の子を孕ませようとしているのか……!?)

(狂っている――!!)
えっ……うん、私は葵りんごっていうのよ。

おにーさんたち、私の旦那さんになってくれる?

(この女のほうが狂ってやがるぜえええええ!!)
ぴぴぴ……この星の国語辞書を参照。

旦那さん:女将さんの対義語。居酒屋を経営する男。

ひょっとしてあなたは、居酒屋の娘なのですか?

???????

ううん、違うよ。えっと……お父さんになって欲しいの。

ぴぴぴ……理解不能。あなたの記憶ベースに直接アクセスします。

あなたは事故により両親を失っていますね。

つまり――我々があなたの里親代わりになればいいのですか?

えー―。違う……。

けど、それもいいかも。

やったねりんごちゃん! 家族が増えるよ!
やめてください。

法令を参照。この星では、

住民票を持っていないと養父にはなれないそうデス。

よって――あなたの父代わりにはなれマセン。

うん、知ってた。
おーい、なんだまどろっこしいなコイツら!

この星では「できちゃった婚」というものがあって、妊娠したら結婚するのが法律で決まってるんだとか! るるぶに書いてあったぞ!

要するに結婚したい=孕ませて欲しいでいいんじゃないのか?

えっと……それも違うけど……。
話をリセットしましょう。

我々の目的は少子化対策です。この胸に付いているボタンを押すことで、生産必死分泌液を発射することがデキます。

今からこの石像を使って、試してみましょう。

や、やめるのじゃー! ロボットの子供なんぞ孕みとぅない!
(うわぁ……なんか始まった……)
ロボットが胸元のボタンを4つ同時に押すと、

口(?)から白い液体が発射され、アナルンの顔を濡らした。

何とも言えない沈黙が辺りに漂う――。

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もう……こんなにベトベトにしちゃってぇ……。

妊娠したら責任取ってよね!

なお、このロボットの辞書に甲斐性という言葉は存在しません。

子供を産んだ場合、自己責任で育ててください。

(ひ、ひどい……!)
あとは10月10日もしたら立派な赤ん坊が生まれるでしょう。

ですが――特別に、今回は10秒で子供が出来る液を分泌しました。

ちょ、そんなもの台本に――ひっひっふー! うぎゃああああ!!

う、産まれるよおおおおおお!!

ママ、おはよう! 僕、ママの子供だよ!!
!!!!??????
目の前で繰り広げられる――命誕生の縮図。

どうして石像からこんな可愛い子どもが、とか、どうしてこの星の言葉が――そんな疑問が絶え間なく流れますが、この場においてツッコミはもはや野暮というものです。

委ねましょう。

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さぁ、次はあなたの番です。
お前もママになるんだよ!!
ふ、ふええ……。
少女の手には何の武器もありません。

目の前で軽視される命に――少女は恐怖を感じ、逃げ出しました。

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母体が逃げたぞ!! 追え!!
ママーーーーー!!
◇ ◇ ◇

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少女は安全な孤児院へと駆け出しました。

誰かに恐怖を感じたのは生まれて初めてのことで――怖くなり、目から涙が溢れます。

だって、女の子だもん。


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どうしたんだい、そんな顔をして。
お、おにーさん!?
その声は――忘れもしない、今朝の声の人。

思わず優しくされ、少女の心がきゅんとトキメキました。

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見つけました、りんご様。

さぁ――少子化対策をハジメマショウ。

な、なんだお前は! この少女に指一本触れさせるものか――!!

この女の子は――僕が、命を賭けてでも守ってみせる!!

おにーさん……ありがとう……。
それが呪わしい体質のせいであると知りつつも、

少女は彼の優しさに惚れてしまったのです。

そして彼も――。

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あひひひひひひひ!! この液体Xは――男も女も関係ない!!

さぁ――あなたもママになりましょう!!

な、何を言っているんだ……!?
ロボットがおもむろにスイッチを押すと――白い液体が射出されます。

その勢い良く発射された液体は彼の顔にかかり、ベタベタに濡らしてしまいました。

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うおっ、何だ汚ねぇ! うっ――お腹があああああ!!

異常に腫れている――痛ぇ! 痛ぇえええええええ!!

おにーさあああああああああん!!
なんとも罪深い光景を目の当たりにした少女は泣き叫びました。

なんということ――これも、10秒で出産してしまう魔の液体だったのです。

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おぎゃー。わぎゃー。
うえええええええええ!!?
ついに理解が追いつかず、少女はその場に嘔吐しました。

だが――その瞬間、ロボットが苦しみはじめたのです。

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うっ……ふぅ……。
そう――この『液体X』はロボットの燃料を著しく消費するため、

連続して発射を続けると動きが止まってしまう弱点が残されいていたのです……。

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おにーさん……おにーさん……!!
りんごちゃん……最後に君を守ることが出来て……よかった……。

僕の子供を……どうか僕だと思って……育てて欲しい……がく。

うぃーん……。

機能を停止します。

辺りに大量の死体と一つの命を残し……少女は、うなだれました。

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執筆終了時間なのだ……!

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登場人物紹介

名前:


分ぴ2-D2




性別:





特殊能力:


『液体X』


生産性100%の液体を口から出せる。




設定:


宇宙ロボット。


選ばれし者【アナルン・スカイフォーカー】に仕える。


アナルンの性教育にとても熱心で、周りからは「保健体育の鏡」と評されている。


胸にある4つのボタンが同時に押されることで生産性100%の液体Xを口から出す。


その液体を浴びた者はお腹に何かしらを孕む。


ボタンは単体で押されると「マカ…アエン…ガラナ…」と音声が流れるだけで、何とも言えない空気が漂う。




相手を倒したい動機:


アナルンを守るため。


作者:岡田拓也

○葵 りんご(あおい りんご)

性別:女


恋に恋する年頃の女の子。小学2年生。

目に見えるもの全てに恋してしまう困った癖がある。

「あの蜘蛛さんが将来の伴侶なら」なんて妄想に明け暮れていた。


12姉妹の末っ子として出生。

たくさんの姉に囲まれながら、誰とも結ばれないもどかしさ。

ついに妄想を溜め込みすぎた彼女は、魔人能力を発症してしまう。


それからの人生は彼女にとって幸せそのものだった。

欲しいもの全ては思うままに。虫も、花も、人の心も。

――みんな相思相愛で楽しい夢のよう。

――11人の姉と両親に愛され、選り取りみどり。

――目に映る全てに恋されてしまう困った体質。




翌朝、彼女の目に映ったのは11人の死体だった。

虫も花も人間も。何もかもが横たわる悪夢の中。

現在は孤児院に預けられ、新しい恋の相手を探している。

その果実には、毒が詰まっていた。



能力名:禁断の果実

対象と相思相愛になる能力。

恋したもの全てに愛される、幼くもえげつない理想の押しつけ。

相手は徐々に心を蝕まれ、記憶や理性を失いながら彼女に恋していく。

能力が全身を食い尽くしたとき、対象は例外なく死ぬ。



戦う動機:次の恋人を探すため。




イラスト:ジュエルセイバーFREE

作者:如月真琴

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