第13話 疑惑
文字数 314文字
◇
「家持は、安積皇子の挽歌として、長歌1首と反歌2首を残しています。いずれも、亡くなった皇子を、「吾王 」と呼び、血を吐くような悲痛な言葉を連ねています」
桐原の弟は言った。
少しためらい、続けた。
「仲麻呂が、安積親王を殺した。僕は、家持が、それを疑わなかったと思います」
俺も、そう思う。
それまで健康だった安積皇子の、急変。
恭仁京には、聖武帝をはじめ、主だった人たちは誰もいなかったこと。
留守官として、仲麻呂が居残っていたこと。
彼には、叔母の御機嫌を取る必要があったということ。
そして、叔母の光明皇后は、安積皇子を目障りに思っていた……。
「やがて、敬愛する聖武天皇が亡くなると、家持は、仲麻呂への復讐を始めるのです」
「家持は、安積皇子の挽歌として、長歌1首と反歌2首を残しています。いずれも、亡くなった皇子を、「
桐原の弟は言った。
少しためらい、続けた。
「仲麻呂が、安積親王を殺した。僕は、家持が、それを疑わなかったと思います」
俺も、そう思う。
それまで健康だった安積皇子の、急変。
恭仁京には、聖武帝をはじめ、主だった人たちは誰もいなかったこと。
留守官として、仲麻呂が居残っていたこと。
彼には、叔母の御機嫌を取る必要があったということ。
そして、叔母の光明皇后は、安積皇子を目障りに思っていた……。
「やがて、敬愛する聖武天皇が亡くなると、家持は、仲麻呂への復讐を始めるのです」