最終話

文字数 2,405文字

ミミ医師の元で剛志が診察を受けているとレオンが現れた。

「剛志君、大丈夫か?」

「はい」

「……」

剛志の返事後、レオンが剛志の頬に触れているとミミ医師がレオンに向かって話しかけた。

「ちょっと良いですか?」

「……」

無言でレオンは剛志から離れミミ医師と共に外に出ると口を開いた。

「剛志君のことですか?」

「はい」

「悪い知らせですか?」

「……」

「悪い知らせなんですね」

「……」

「覚悟はできてます」

「わかりました、話します」

「……」

真剣な顔でレオンが見つめるとミミ医師は口を開いた。

「今は母子とも健康ですが、赤ちゃんを出産したとき…」

「まさか」

「そうならないように頑張りますから」

「頼む、剛志君を死なせないでくれ」

「はい」

「俺は家に戻る、剛志君をよろしく」

「わかりました」

歩いていくレオンを見送るとミミ医師は家の中に入り藁の上で寝ている剛志に近づいた。

「具合はどうですか?」

「大丈夫です、それよりレオンさんは?」

「家に戻りました」

「そうですか…」

身体を起こし落ち込んだ顔をする剛志にミミ医師は元気が出るような言葉を口にした。

「激しい運動をしなかったら家に戻っても良いですよ」

「良いんですか?」

「約束を守ってくれれば良いですよ」

「約束?」

「具合がちょっとでも悪くなったり何か身体に異変が起きたらスマホで私を呼ぶこと」

「わかりました」

「今から良いですよ」

「ありがとうございます」

嬉しそうな顔で藁から離れミミ医師にお辞儀をすると剛志はミミ医師の家を出ていきレオンが居る家に向かった。

その頃、レオンは10階の部屋の藁のベッドで仰向けで倒れていた。

「剛志君が居なくなる…そんなの…」

レオンの目から涙が流れたその時、人間のレンが現れた。

「久しぶりだな、レオン」

「……」

身体を起こし目を向けたレオンはレンに驚いた。

「どうしてここに」

「剛志君が妊娠したって聞いたから様子を見に来たんだ、迷惑だったか」

「父さん、剛志君が」

レオンが言いかけたその時、ドアが開き剛志が現れた。

「剛志君!」

レオンが驚いた顔で見つめるなかレンが剛志に向かって話しかけた。

「元気そうだね」

「レンさんも」

「元気な赤ちゃん産んでね」

「はい」

「それじゃ俺、帰るから」

そう言ってレンが部屋を出て螺旋階段をおりていくと背後からレオンが追いかけてきた。

「父さん」

「……」

螺旋階段をおり終え振り向きレンが目を向けるとレオンが口を開いた。

「剛志君が…」

「剛志君がどうかしたのか」

「…何でもない…」

言うのを止めたレオンは笑顔でレンを見送った。

その後、レオンは螺旋階段を上がり10階の部屋に向かうと中に入った。

「レンさんは?」

藁のベッドに座りながら剛志が話しかけるとレオンはベッドに近づき剛志の側に座ると無言で剛志を抱きしめた。

何で抱きしめられたのかわからない剛志が「どうしたんですか?」と話しかけるとレオンが口を開いた。

「俺より先に居なくならないでくれ」

「レオンさんも俺より先に居なくならないでくださいね」

そう言って剛志とレオンは見つめ合いその後、口づけを交わした。

それから剛志とレオンは楽しい日々を過ごし剛志のお腹も大きくなった。

「剛志君、大丈夫か?ミミ医師の元に行くか」

「スマホでミミ医師を呼んでください」

そう言って剛志がスマホを差し出すとレオンはスマホを受けとり口を開いた。

「ゆっくり螺旋階段を上がって10階の部屋で寝てて」

「わかりました」

そう言って剛志が螺旋階段をゆっくり上がっていくとレオンはスマホでミミ医師に連絡し呼んだ。

その後、レオンは外に出てミミ医師を待った。

その頃、剛志はゆっくり螺旋階段を上がり10階の部屋の前に着いていた。

「はぁはぁ…」

荒れた息を落ち着かせ部屋の中に入ると剛志は藁のベッドに近づき仰向けで倒れた。

それから暫くしてレオンとミミ医師が部屋の中に現れると剛志がミミ医師に話しかけた。

「ミミさん…産まれそうです」

「レオンさんは部屋の前で待っててください」

「わかりました」

レオンが部屋を出ていくとミミ医師は剛志に近づき話しかけながら赤ちゃんが出てくるのを見つめた。

レオンは部屋の前で部屋を見つめながら剛志と赤ちゃんの無事を祈った。

「神様、剛志と赤ちゃんの命を守ってください」

レオンの言葉後、時間が何時間も過ぎ出産の時が来た。

部屋の中から赤ちゃんの泣き声が聞こえ「産まれた」とレオンが口にするとドアが開きミミ医師が現れた。

「無事に男の赤ちゃんが産まれました」

「剛志君は?」

「無事ですよ、今は疲れで眠ってます」

「良かった」

「あとよろしくお願いします、何かあったらスマホで呼んでください」

「わかりました」

レオンが返事をするとミミ医師は螺旋階段をおりていきレオンは部屋の中に入り剛志に近づいた。

「無事で良かった」

嬉しさでレオンの目から涙が流れると剛志は目を覚まし手で涙を拭った。

その後、剛志とレオンは口づけを交わし互いの唇が離れると剛志は赤ちゃんを抱っこしレオンと喜びながら見つめた。

それから3年後、人間の男の赤ちゃんも3歳になり剛志はモデルの仕事を再開した。

「お母さん、どこ行くの?」

「凜(りん)、お父さんと一緒に家でおとなしく留守番してて」

「すぐ帰る?」

「仕事が終わったらすぐ帰るから」

「わかった、お父さんと一緒に留守番してる」

そう言って凜がレオンの側に近づくとレオンが剛志に向かって話しかけた。

「剛志君、無理するなよ」

「はい」

会話を終えると剛志とレオンは凜の前で口づけを交わし剛志は人間の世界に向かいレオンは凜を連れて家の中に入った。

それから7年後、凜も10歳になりある決意をした。

それを凜はレオンと剛志に話しレオンが口を開いた。

「凜、お前が20歳になったら2代目の王を認めてやる」

「わかりました」

レオンとの約束から10年が経ち凜も20歳になった。

そして凜はレオンと剛志に認められ猫の国の2代目の王になった。
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