第24話映画監督 羽田

文字数 1,080文字

午後4時、中年の男性が入って来た。

飛鳥は、うれしそうな顔。
「羽田監督、お久しぶりです、お元気そうで」
と、声をかける。

羽田監督は、ニヤッと笑い、飛鳥の前に座った。
「確かにお久しぶりだね、飛鳥君が高校生の頃だったから」

飛鳥が、冷水を羽田監督の前に置くと、キッチンから香苗も顔を出した。
「監督、飛鳥はともかくとして」
「また素晴らしい作品を続々と・・・すごいですね」

美鈴も寄って来た。
「とにかく監督の映像美でしょうか、人物も風景も、まるで芸術写真か美術作品のようです」

飛鳥は、ウィンナ珈琲を羽田の前に置く。

羽田は一口飲んで、目を閉じた。
「美味しいねえ・・・魅惑だね」
「クリームの甘さと、珈琲のほろ苦さ」
「ウィーンを歩きたくなるよ」

飛鳥は目を輝かす。
「監督が撮るウィーンも楽しみです」

しかし、羽田は悔しそうな顔。
「行きたいけれど、当面は無理」

飛鳥
「と言いますと?国内の仕事が?」

羽田は苦笑い。
「平安貴族物と。江戸期の活劇」
「それと、近江商人の企画もあってさ」
飛鳥も、それには苦笑。
「どれも面白そうです」
「監督は手を抜かないから大変ですね」

羽田
「でもね、俳優もさ、いわゆる定番を使いたくなくてね」
「自分から売り込みに来るのもいるけれど」
「N・Tとか、T.N・・・女優も例の高飛車女、親の七光り系」

飛鳥は、プッと笑う。
「わかりました、3人とも」
「アクが強いいですね、確かに」
そして、静かな声。
「上から目線で演技を見せてやる・・・そんな感じ・・・演技力はあるにしても」
「それに臭みがある」

羽田
「まあ、よく見ているね、飛鳥君」
「でもね、スポンサーが使えってね、それもある」

飛鳥
「嫌な俳優と組みたくないですよね、それは確かに」
「でも、あの人たちは、自己主張が強すぎて、映画全体を殺してしまう時がある」
「でも、映画目当てでなくて、その俳優目当ての観客も多いから、スポンサーはゴリ押しをして来ると」
「俳優は映画の要素であって、要素のために映画があるわけではないのに」

羽田は、飛鳥の話を満足そうに聞く。
「また、飛鳥君を欲しくなるよ」
「高校生の時も良かった」
「まあ、きれいでね、少年美を極めていた」
「今は今で・・・いい絵が撮れそうだ」

美鈴が口を挟む。
「それ・・・もう危険です」
「あてにしないでください、飛鳥さんは口約束の達人ですから」

羽田は、ふむ、と興味深そうな顔。
「その思わせぶり飛鳥君でも、映画にできるなあ」
「そうだな・・・題名は・・・」
「ソフィア喫茶店のつれない飛鳥の君で・・・どう?」
「共演女優も男優も、この店でスカウトする」

飛鳥は、「また御冗談を」と、途中から何も聞いていない。
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