第9話     大学受験

文字数 1,157文字

 美樹は第一志望の国立の外語大学に無事に合格した。
 その喜びを裕翔に伝えたが、裕翔は第一志望の芸術大学だけでなく、受験した 私立の美術大学もすべて落ちてしまった。
 
  美樹は裕翔を励ますつもりで家を訪ねると、部屋に通された。
  ベットに仰向けに横たわってい天井を見ている裕翔は、美樹が入って来たのに気づくと起き上がり、部屋のベットに腰かけた。
 美樹も隣に座ったが、励ますつもりで裕翔に話かけた。
「大丈夫よ、一年浪人してまたチャレンジすればきっと受かるよ。ねえ、東京で一緒に住もうよ」
  美樹は思いを込めて告白し、裕翔から良い返事を期待した。
「ねえ、東京で一緒に住もう」
 裕翔は、宙を見たままで美樹と視線を合わせずに答えた。「無理だよ。美樹の両親が許さないよ」
「パパとママは、私が説得するから」
 美樹は、裕翔の前に(ひざまず)いた。
「それだけじゃなくて、僕は女性が愛せないんだ」
「何、今なんて言ったの?」
  美樹は自分が拒絶されたと思っていたが、裕翔の意外な告白が理解できなかった。
「僕は、ゲイなんだ」 
  美樹はショックで、頭の中が真っ白になった。
「私が嫌いなら、そんな嘘つかないでよ」
  裕翔は、美樹と目を合わせずに、下を向いたまま淡々と話を続けた。
「隠していたわけじゃない、言えなかったんだ。だから今まで一度も美樹を求めなかっただろ」
「それは、まだ高校生だからだよ。だってハグしてくれたし、一緒に添い寝もしたよね」
「でも、添い寝をしても身体が反応しないんだ」
「そんな事ない」
  事実を受け入れられない 美樹は、裕翔の抱きついてキスをした。
「美樹、止めろよ」
  裕翔は美樹から身体をを離して、床に座り再び土下座をした。
「ごめん」
「わかんない。なんでなの、私なんか悪い事した」
  美樹の目には、涙が溢れていた。
「美樹のせいじゃない。僕の性癖のせいだ。僕が悪いんだ」
「ねえ、私を見て」
  美樹は裕翔の前に座り、両手を肩にかけて身体を起こした。
「じゃあ、なんでいつも一緒にいたの?」
「それは、ゲイであることを隠すためなんだ」
 涙声の美樹は、さらに裕翔に詰に詰め寄った。
「私を利用したの?」
「違うよ。美樹の事は友達として、大事に思っているよ」
 裕翔は、また土下座をした。
「いやだ。そんなの、ずるいよ」
  美樹は、涙を流しながら土下座をしたままの裕翔の背中を叩いた。
  裕翔は体を起こし美樹を抱きしめた。
「本当に、ごめん」
  裕翔は何度も謝りながら、美樹の背中を撫でた。
  美樹の大きな泣き声は、階下にいる裕翔の母親律子にも聞こえた。
  律子は二階に駆け上がり裕翔の部屋を覗いたが、二人の姿を見ると何も言わずに下に降りて行った。
  裕翔は美樹に何度も許しを請うが、美樹の涙は止まらかった。
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登場人物紹介

上島美樹 フランス大使館に勤める女性で裕翔の幼馴染

中村裕翔  イケメンで美樹とは幼馴染、レディースのファッションデザイナーを目指すがゲイであることに悩む男性

柴崎琢磨  裕翔の恋仲になる美男子だが小柄な男性、裕翔を同じくファションデザイナーを目指している。出世のためにゲイのように装うバイセクシャルだが、マレで有名になる。


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