文字数 503文字

-ねえ、おかあさん。お星様きれーだね
-しーぃ。だめよ、さりちゃん。プラネタリウムで喋っちゃ

 ここは地元、函館のプラネタリウム館だろうか。そういえば小さい頃の私は星が好きで母によく連れて行ってもらっていた。思ったことをすぐに口にしちゃうから、よく母に叱られていたっけ。

-さりちゃん、外、見て。海が綺麗ね。あれが福岡の街よ。おばあちゃん家はあの辺かしら…
-ねえ、お魚さん、見えるよ!お さ か な
-何、言ってるのよ。飛行機からじゃあ、何も見えないじゃない
-見えるよ。私の眼はミサゴだもん。ほら、また跳ねた。

 母方の実家の福岡にはじめて帰省したとき、飛行機から見た街並みが言葉に言い表せない程、美しかったことを覚えている。港で食べた謎の赤い深海魚も美味しかった。

-明日がいよいよ地区予選だね、さり
-そうだね…私さ、今までお母さんにいっぱい迷惑かけちゃったな、って。だから、勝って、勝って勝ち進んで、インターハイに出てさ、私のこと一人で育ててくれたお母さんにありがとう、って伝えたいんだ。
-そうだよね、さり!一緒に青函トンネル抜けて、てっぺんとるぞー!

 ああ、私…私……

 海に飛び込むのと同時に私の意識は途切れた。
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