文字数 1,512文字

 最近の私は日記をとっている。なぜ日記をとるのかと言われたらなんとなくという他あるまい。

ただ過ぎていく毎日に対して呆然と佇むしかない自分に対してささやかな抵抗をしているつもりなのだが、書いていくうちになんだが習慣化してしまって日記を書かずに寝るというのがなんとなくもどかしいので仕方なく書いているというのが本当のところである。
  
 ところで、私は最近自殺を考えている。なぜそんなことを考えるのかと言われたらなんとなくという他あるまい。

毎日似たようなことの繰り返し。小学生の頃は何でも楽しくて、新鮮で外を走り回っていたのだが今はただ屋上でひとり好きなアニメの最新話を見ながら弁当をつつくというのが唯一の楽しみであり、友達というのも本当に友達といえるのかわからない微妙なポジションの仮友達が二人いるのみであり、彼女なんていうのは顔面富裕層による豪遊であると心得ている。
 端的に言うと寂しいのである。
ならば行動するべきだとかそんなことを言うやつがいるかもしれないが私の耳にその類の助言はシャットアウトされるようにプログラムしたから意味はないということを先に伝えておく。

 今日の日記の一部を紹介しよう。
「今日は弁当に卵焼きが入っていなかった。続きを楽しみにしていたアニメの放送が明日であったことを忘れていていらぬ期待をしてしまった故に凹んだ。こんなことが続いていいわけがない。今日で不幸メーターが5ポイント貯まった。1000ポイントまであと4ポイントある。これで私に明日幸福が訪れなかったら、4ポイント分の不幸が訪れたらとうとうこの世とさらばだ。あとは流れに任せよう。」

私は不幸メーターをつけている。それは一日に起きた出来事を幸、不幸にポイントをつけて合計したポイントを数えるのだ。幸が9で不幸が4なら今日は幸メーターが5ポイント貯まるという具合だ。幸ポイントは不幸取り消し精算ができて、幸ポイントで不幸メーターを減らすことができるのである。これは私の理論に基づいて自殺すべきかするべきでないかの指標として働く。不幸メーターが1000ポイント貯まった場合、私は幸福と不幸のバランスが悪いということを数値的に証明できるために私は死ぬべきであるとわかるのだ。

明日が楽しみである。
やっと答えが出るのだから。


-翌日-


今朝の朝ごはんは昨日のカレーであった。これは幸ポイント1といったところであろう。少しにやけた。
さて、学校へ向かうか。
今日は班でグループワークをする日なので用意した意見を発表するのに少しドキドキである。
学校へついて席に座る。荷物をしまってとりあえず本を読む。なんだか今日はそんなに悪くないな。
そう思った矢先、事件が起こる。
 トイレに向かおうと席を立ち、トイレに向かうと何やら中で声がした。覗いてみるとAくんとBくんが秘密話をしているようだ。人間関係に関して特に詳しくなかった私でもその話が重大であることはすぐに分かった。私は秘密を盗み聞きしてしまったのだ。AくんとBくんは私に詰め寄り私を脅した。私はただ頷く。席に戻りまた本を読む。内容が入ってこない。やばい。不幸メーターが大きく針を揺らしている。
 ホームルームが終わり、グループワークが始まる。私はBくんと同じ班で、Aくんは私の後ろの席にいた。なんとなく私を脅すような目つき、気を遣わなければならない。
 生きづらい。
       そうだ。
           今日がその日なんだ。

いつもなら弁当を持って行く屋上に今日はスマホとイヤホンだけを持って行く。なぜか子供のころよく聞いていた童謡が聴きたくなった。そのまま屋上のドアを開けると、いつもなら一人のその場所にもう一人いた。






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