第四話 主人公! とうとう出現か?

文字数 1,450文字

水槽が落ち着いてきた。
とうとう、主人公レベルの魚を投入する時期がやってきたようだ。
飼い主は「出目金が欲しい」という事だったが、それがこの水槽の主人公になるのだろうか、魚は何匹くらいの投入になるのだろうか…。
運命の瞬間である。



水槽にビニール袋がぷかぷかと浮かんでいる。
袋は全部で三袋あり、その中には一匹ずつ魚が入っている。
水槽の水や環境に慣らしてから魚は入れられるのだが、それが“水合わせ”という作業である。
その水合わせをしないと、魚の命にたいして、良くない事が起きる為、魚を飼ううえで必要な作業である。
時間はかかるが、それを行わなかった場合の最悪な事を考えれば、手間をかけるべきである。
そうして水合わせをした魚を水槽に投入していくのだが、パイロットフィッシュ達も、その存在に気付き、水槽内がざわめき始めた。
「魚が浮いてるな」
ゴールデンアカヒレのオス、一号がその存在を気付き、アカヒレのオス、四号に話しかけた。
「金魚が二匹、ドジョウが一匹か」
「水合わせって作業の最中だろうか」
「たぶんな」
「我々も、水合わせされたもんな」
「そうだな」
「俺が主人公…と思ってたんだが、やはり違うのか?」
「一号は、ちがうだろ」
「じゃあ、誰なんだ」
「あの、上にいる金魚かドジョウか…」
「パイロットフィッシュである我ら六匹は、水質の為にしか存在してないのだろうか…」
「それが、パイロットフィッシュだろ、まぁ、水槽の中で生活している、いわゆる人間達の言う「ペット」でもあるだろうが、どう見たって、あっちの金魚かドジョウだろうな」
「我々、パイロットフィッシュって、結構重要な役割なんだがなぁ」
「パイロットフィッシュなんて、そんなもんだろ、魚を飼ううえで、微生物を増やしたり、水質の為に入れられるんだ、役者ならいわゆる“脇役”だろ」
「せめて、名脇役くらいにはなりたいが…」
「どうだろうな」



水合わせが終わり、金魚二匹とドジョウ一匹は、水槽内を泳ぎ始めた。
ドジョウはすぐに隠れられる場所を探し、金魚は二匹くっついて泳ぎ始めた。
「あら?新しい魚が泳いでるのね」
「あれはちょっと、危険ね」
ゴールデンアカヒレのメス二号とアカヒレのメス五号は新しい魚の存在に気付き、二人で様子を見ていた。
「出目金…のようで、違うのかしら?でも、目は出てるわね」と二号。
「あまり見た事無いかも」と五号
「もう一匹は、らんちゅうだと思うけど、くっついて泳ぐのね」
「あっらぁー!男同士くっついてるの?やだぁーん」
会話に混ざって来たのは、アカヒレのオス、六号だ。
「ちょっと、紛らわしいから混ざらないでよ」と五号。
「ねえ、あのらんちゅう、なんか変じゃない?」と二号。
「そうね、縄張り争いかしら?」
五号の言葉に六号が反応した。
「やっだぁー!アタシ、縄張り争いに巻き込まれたらどうしましょう?オタサークルの姫にでもなっちゃうのかしら?」
「多分、無いと思う」と二号が六号に向かって言い放った。
金魚は二匹ともくっついているが、らんちゅうのが勢力は上らしく、もう一匹の出目気味の金魚の邪魔をするように泳いでいる。
のちに、らんちゅうは「隔離」と言われ、水槽の外側に小さな部屋を置かれ、その中に入れられてしまった。
その金魚の名前は「隔離ボス」で、もう一匹の出目気味の金魚は「白蝶」という名前がついた。
そして、ドジョウは「ドジョウのジョウさん」と呼ばれるようになったのだった。
黒い出目金の登場は無く、二匹の金魚とドジョウが生活し始めたのである。
                
第四話 終わり
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