冬0=±4
文字数 274文字
突如、花火が宙を彩った。「君は夜にしか動けないから」貴女はそう言ってぼくの手を引き、多摩川河川敷。りんご飴、金魚すくい、焼きそば、割高のビール。此処には永遠を願う淋しさと、もう終わってしまっても好いといった幸福感とが溶解していて、分離はどうにもできそうになかった。花火は燃え尽きぼくらの元に。右手と左手が解けてしまわぬ様に。喧騒の間に見失ってしまわぬ様に。例え、このまま迷子になったとしても、此処に二度と帰れなくなってしまうことの方が、怖いんだ。季節外れの情愛が、季節ならではの憎悪が、水面を揺らして、ぼくはぼくが泣いているのだとようやく知った。