水曜日

文字数 453文字


 真っ白な部屋にいた。床も壁も天井も、真っ白な部屋。立っていると、前から背後から、ゆらりゆらりと体を揺する流れを感じる。波だ。水の中に居た。けれど息は苦しくない。手で水を掻くと柔らかな抵抗がある。足を動かすと、白い砂煙がもわと上がった。面白くて両足を上げたり下げたり動かす。宙に舞った砂が視界を奪う。その砂煙を突き破るように突進する。すると、窓枠を越えてしまったのか、身体が部屋の外へ出た。けれど落ちてはいかない。振り返ると、中同様真っ白な建物が見えた。水を掻いて建物から離れる。暫くしてまた振り返ると、さっき居た建物が立方体のような形をしていたことが判った。離れるように水を掻く。掻く。掻く。掻く。
 また振り返ると、立方体のようなあの建物が、遠く霞んで見えた。左を見ると、似たような四角い真白い建物がたくさんあり、その一番向こうに一際背の高い塔が聳えていた。塔を目指して水を掻く。
 あと少しで塔へ手が届くというところで、身体を背後へ強く引っ張られた。波だった。流れに押しやられ、結局、塔へは届かなかった。
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