第1話 プロット

文字数 3,171文字

【起】
 葉山花音(はやまかのん)は中学1年生。父は小学5年生のときに亡くなっている。
マイルドヤンキーな母(今日子(きょうこ))と貧乏だけど明るい毎日を送っているが、やりたいことが見つからずやや空虚さを感じている。

 ある日弁護士が訪ねてくる。
実は花音は、由緒正しい基盤魔術(きばんまじゅつ)学園の理事長、葉山末蔵(はやますえぞう)の孫であった。
末蔵が急死し、一人息子であった花音の父親も既に亡くなっていることから、花音が代襲(だいしゅう)相続することになったのだ。
短気な母と頑固な末蔵が喧嘩して、駆け落ち同然に家を飛び出したらしい。

 相続人の一人である末蔵の妻(花音の祖母)多美子(たみこ)から、「財産を相続するにあたり、私と同居して基盤魔術学園中等部に転入するように」との申し出があった。
ちょうど勤め先が倒産した母は、「頑固爺さんがいなくなったのなら」と同居を承諾。
花音は魔術という言葉に惹かれ、転入に同意する。


 祖母の住む大邸宅を訪れ、立派さに驚く花音と母親。
隣接する基盤魔術学園の設備、景観の素晴らしさにも度肝を抜く。
「最初が肝心だ、舐められるんじゃねえぞ」と母は戦闘態勢をとるが、現れた祖母が「花音ちゃん、今日子さん、ずっと会いたかった」と涙をこぼすと、情にもろい母はもらい泣きして一瞬で意気投合する。
 そして祖母は花音に「穏やかな花音ちゃんはお父さんにそっくり。頑張って勉強してね」と目を細める。



【承】
 夏休み明けの転入初日、「最初が肝心だ、舐められるんじゃねえぞ。いじわるされたら祖母ちゃんにチクって退学させてやれ」と母のアドバイス。
 母の予想に反し、基盤魔術学園の生徒は育ちが良く親切な生徒ばかりであった。
花音はゆるふわ清純系の箱根(はこね)さやかと仲良くなる。食いしん坊な二人は、食堂でまったりグルメトークに花を咲かせ、学園のアイドル白浜悠(しらはまゆう)を見かけては興奮する。
 花音の学校生活が気になる母は、学校の食堂のバイトに潜入して偵察する。

 基盤魔術学園の授業は、花音にとって興味深いものばかりだった。
薬草の育成と加工、使い魔のお世話、風水的な地理学、星読み、言霊の読解など。花音はすいすい習得して1学期の遅れをカバーした。
 花音の使い魔は「ハチワレ猫」。いつも「自信持って」と励ましてくれる。

 しかし花音にとって苦手な授業もあった。それは実戦形式のカリキュラム。
冬になると、中等部では念で構築し具現化(ぐげんか)したタロットカードを使い、男女ペアで戦うリーグ戦、高等部では分岐する易経(えききょう)カードを使うチーム戦が予定されていた。
 お告げ相性アルゴリズムAI「シビュラ・ケミカル・エッジくん」によって、男女ペアの指定をされると聞き、花音は誰とペアになるのかとドキドキする。


 秋休みが明け、「シビュラくん」によりペアが発表された。
花音とペアになったのは、黒瀬律(くろせりつ)くん。長身でぼさぼさ前髪、黒ぶち眼鏡で愛想のない生徒。
ちょっと怖いので花音はうまく連携がとれない。そしてタロットカードも上手く具現化できずにスランプに陥っていた。

 実は黒瀬は格闘家オタク。
花音と黒瀬が食堂でミーティングをしていたとき、花音の母が偵察に来る。
母、今日子は、衝撃デビューと電撃引退で語り継がれる女子格闘家「鬼菩薩(おにぼさつ)」であることに黒瀬は気づく。
「鬼菩薩」リスペクトな黒瀬は、後でこっそり「お嬢さんは僕が守ります!」と今日子に約束する。



【転】
 初戦の練習試合の相手は、清里真衣(きよさとまい)那須奏太(なすそうた)のペア。
学園の生徒は普段は上品で穏やかでも、バトルとなると一転して人格が変わったように荒々しく攻撃的になる。花音は練習試合観戦で、そのギャップを目の当たりにし、やや怖気づいていた。
 清里は、理事長の孫である花音の能力に興味があり、実力派オカルトオタクの那須も気合が入る。

 清里・那須ペアはスピーディーに『正義(均衡(バランス))』『魔術師(挑戦(チャレンジ))』のカードをスプレッド(展開)し、先手を取られた葉山・黒瀬ペアはボロ負けしてしまう。
黒瀬の具現化するカードは『死神(強制終了(シャットダウン))』で強いのだが、まだ充填(じゅうてん)力・攻撃力不足。そして花音は実戦に戸惑い何もできずにいたのだ。

 敗退したとき、清里・那須ペアが「理事長の孫といってもたいしたことない」とささやくのを聞いた黒瀬は、「葉山の悪口を言うやつは絶対に許さねえ」と二人に詰め寄る。
それを見た花音は驚き、黒瀬を意識するようになる。そしてそのとき髪をかき上げた黒瀬は、かなりのイケメンであった。


 強くなりたい、黒瀬の足を引っ張りたくないと考えた花音は、冬休みに特別補修合宿を申し込む。黒瀬も強引に参加。
途中で友達の箱根(はこね)さやかと、ペアを組んでいる富良野慎二(ふらのしんじ)(クールで成績優秀)も合流してにぎやかな合宿に。
 素直でひたむき、そしてお腹がすくとちょっと機嫌が悪くなり怖い話が苦手な花音を、黒瀬は可愛いと思うようになる。


 合宿中、花音は深層意識にアクセスするAI「アーキタイプ・アニマアニムス・アネモネちゃん」と有益な気づきを導き出すAI「ナラティブ・リーディング・メロディちゃん」により、亡くなった父を召喚しアドバイスを受ける。

 父から、禍々(まがまが)しく不幸をもたらす呪術を使用する集団が存在することを聞かされる。父はその呪いを消滅させる戦いの中で命を削ってしまったのだという。
花音は、呪いに対抗するために基盤魔術学園が存在していることを知り、父の遺志を受け継ぐ覚悟を決める。

 父は優しく語る。
「力で押し通すのではなくて、力を反転させるんだよ。相手の力を利用してね」
花音は大技のマインドアタック「リバース(反転)」を体得し、タロットカード『審判(復活(リカバリー))』を具現化。

 黒瀬は合宿で、所持カード『死神』の強化を図り、そして『戦車(急進(ラジカル))』も具現化に漕ぎつける。



【結】
 また練習試合が入った。今度の対戦相手は、なんと合宿仲間の箱根・富良野ペア。
合宿の成果を遠慮無くぶつけ合おうと互いに約束する。

 ゆるふわの見た目に反して、実は『塔(破壊(デストロイ))』カード使いで恐れられている箱根。最凶カードを繰り出し、相手にダメージを与える。
富良野は『節制(調和(ハーモニー))』カードで箱根をサポートし、『女教皇(論理(ロジカル))』カードで作戦の底上げをする。
敵二人のスムーズなスプレッド(展開)攻撃に吞まれそうになった葉山・黒瀬ペア。
そこで花音が「リバース(反転)」で敵カードを逆位置にして意味を反転させ出鼻をくじく。(『節制(逆:惰性(マンネリ))』『女教皇(逆:神経症(ヒステリー))』)
が、実戦の経験値が低く、また『塔』は逆位置にしても(緊迫(ストレス))というダメージ効果が続き決定打とならない。
そこに黒瀬が強化させた『死神』と『戦車』カードのコンボで『塔』の効果を半減。判定にて僅差(きんさ)で勝利した。


 続く対戦相手は、祭事を司る家系の優等生伊豆七瀬(いずななせ)と、学園のアイドルの白浜悠(しらはまゆう)ペア。
 伊豆は強力カード『運命の輪(幸運(ラッキーチャンス))』の鉄壁の布陣(ふじん)、白浜は『恋人(ときめき(フォーリンラブ))』『星(ひらめき(インスピレーション))』カードを操り(きら)びやかさで目をくらませ、相手の戦意を喪失させる。

 花音は憧れていた白浜を相手にしても、冷静でいられる自分に手ごたえを感じる。
花音は黒瀬と息の合ったコンビネーションで『審判』『死神』『戦車』を全力でぶつけるが、相手とパワーが拮抗(きっこう)する。
花音が「リバース(反転)」を繰り出すと、伊豆も「デリート(削除)」を初披露。
このまま戦いが長引けば生徒にダメージが及ぶと判断した教官から、試合中断を言い渡され引き分けとなる。


 翌日の放課後、食堂で葉山・黒瀬ペアと箱根・富良野ペアがいつものようにまったりおしゃべりしていると、伊豆がやってくる。
伊豆は、「あんなにワクワクした試合は初めてだった、もし合宿や補修をすることがあったら、私も誘って欲しい」と恥ずかしそうにつぶやく。
 刺激的なカリキュラムと切磋琢磨する仲間たちに囲まれ、自信を持つようになった花音。
転入前とは打って変わった充実した日々を送るのであった。



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