5 ❀ 夜の空中散歩

文字数 1,236文字

「空を飛ぶところ」を見せると、咲良と約束を交わしたジョン。


夜、ジョンはこのように誘いを申し入れた。

咲良さんもご一緒に飛びませんか?
えっ・・・わ、わたしも?

はい。僕が空へご招待します

(自分が意外だ・・・。女性は苦手なのに、咲良さんの前では気持ちがほどける。


 咲良さんにもっと魔法を見せたいと思うし、魔法をかけたいと思う)

私も・・・空を飛べるの?

ぽぉ・・・っとした表情の咲良。


彼女を見つめていて、ジョンはあることに気付いた。

(あの時と同じ・・・。幼い頃の咲良さんも同じ目をしていた
おにいちゃんは魔法使いなの?
あの日の姿が、ありありと思い出される。

(今も昔も変わらない。彼女の目はなんて綺麗なんだろう。


 目は心の鏡という。彼女の目が曇っていては僕は惹かれなかったろう)

ジョンの目が曇っていても、彼女の目を綺麗とは思わなかった。
飛びたいわ、ジョン。空の旅にぜひご一緒させて

8時になったら、庭に来てください。


それまでに支度を。

はい

咲良は洗面所で歯磨きをする。


スニーカーを履き、8時ぴったりに庭へ向かった。

咲良さん

彼はスノボを抱えていた。


スノボを足元に浮かばせると、それに乗り、風を巻いて咲良の正面へと飛ぶ。

お手を

差し出された彼の手。咲良の手がそっと握られ、引かれた。


爪先で軽く地面を蹴ると、身体が浮かび上がった。

わっ、身体が浮いた!
するとジョンが、咲良を両腕に抱えた。
(これってお姫様抱っこ!?
しっかりつかまって

強く引かれた矢のように二人は空へ放たれた。


咲良は身を縮ませ、ジョンにしがみつく。

(どんどん上昇している・・・怖くて目を開けられない・・・)
ジョンは空の高いところまで来ると、流れる風に乗った。
美しい街ですね
咲良はおそるおそる目を開く。
わぁ!! 宝石箱ね!

あちこちで赤や白の光が瞬く。

高層ビルにつけられた航空障害灯だ。


この深い夜において、互いの高さを競っているようである。

ビルの下を車の小さなライトが動いてる…
小さな車の光は、脇道に逸れたり、それぞれの目的に向かって走る。
光1つ1つが、そこに誰かが在る証なのね

咲良さんはステキな発想をなさいますね。


これだけの光が、変化に富んだこの都で様々に生きているのですね…

その光には、喜びも悲しみもあるだろう。


すべての光に、そこに生きる人の心があるのだ。

まるで星空だわ。


わたしの住む街は、こんなに美しかったのね

ビュゥッという夜風が、咲良の頬を撫で、長い髪を揺らした。

寒くないですか、咲良さん?
大丈夫、風がとても気持ちいいわ

頬を撫でる夜風の冷たさが夢のような心地から咲良を覚ます。

夢でないのね…。わたしね、何度か空を飛ぶ夢を見たことがあるの
空を飛ぶ夢を?

夢で私は1人で空を飛んでいたわ


今の方がステキよ。だってジョンが魔法をかけてくれたんだもの。

咲良は、ジョンの青い目を近くで見つめる。

ジョンの目、空の色なのね。とてもきれい…

Thank you

お礼を言うのは私の方よ。


空へ招待してくれてありがとう、ジョン

どういたしまして


  つづく 

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登場人物紹介

帯刀 咲良  (たてわき・さら)


 高校2年生、剣術道場の娘。

ジョン・リンデン


イギリス人

インターポールの捜査官。

天羽 理々(あもう・りり)


高校2年生、咲良の親友

合気道部

ラルフ・ローゼンクランツ


ドイツ人

インターポールの捜査官。

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