2023/3/28 新書を読んでサザンやEPICソニーやアニメや左翼を思う

文字数 2,909文字

みなさまこんにちは。
ここ数ヶ月、さまざまな新書を読みました。備忘録的に書いていきます!

『アニメ療法: 心をケアするエンターテインメント』(パントー・フランチェスコ 光文社)。




エヴァとコードギアスを愛する、イタリア人精神科医による本。
映画、読書療法なんかも説明されながら、ナラティブ、ストーリーがメンタルをどうケアしていくかが描かれています。
結構学術的で面白い。
アニメ療法にもっともふさわしいジャンルは教養小説、ビルドゥングスロマン。主人公の成長、だそうです。
『イリアス』『オデュッセイア』的な。
あとはAnimeとcartoonの違い、アニメの歴史、臨床研究におけるフィクションの心理的な効果等、多岐に渡る本で面白かった。cartoonはもっぱら子供向け。
あとがきを見ると、斎藤環先生のお弟子さんのようです。帯も書かれている。
アニメへの情熱が凄い。
ノンフィクションのリアリズムは私達の人生、日常に近く抵抗感が生まれやすいが、フィクションの中にリアリズムを溶け込ませると生々しさが和らぐ、と。また映画は身体的、役者がいるがアニメは違う。



『EPICソニーとその時代』(集英社新書 スージー鈴木)。
「80年代」と書いて「EPICソニー」と読む。
ばんばひろふみ『sachiko』から、総決算である岡村ちゃん『あのロン』までの名曲評論や通史、丸山茂雄さん、『eZ』や坂西伊作さんのこと。
小坂洋二さん、佐野元春さんへのインタビューも!
佐野元春ー大沢誉志幸ー岡村靖幸を背骨とした「EPICソニー史観」、「日本語発声のゆがめ方イノベーションの流れ」が興味深い。
89年就活中に「恐るべき23歳」『靖幸』に圧倒され岡村ちゃんになろうと歌い方、話し方、踊り方を真似たこと、最後の若い読者向けの言葉に岡村ちゃんへの愛を感じました。

スージー鈴木さんの本を読んでいると音楽を聴きたくなってきます。『ザ・カセットテープ・ミュージック』も面白かったなあ。




サザンの本の「桑田語」のところや『勝手にシンドバッド』の革新性については、言語的な観点からも面白い。サザンの歴史もデビュー時から詳細に書いてあります!
 
「桑田語」、マンピーの「芥川龍之介がスライを聴いて お歌が上手 とほざいたという」は本当に極まってるなあと。
私は小学生の時サザンにハマり、CDを買い、一時期ずっとずっと聴いていたのだけど、桑田さんの歌詞世界は不思議ですよね。
文学的であったり、卑猥であったり、感動的だったり。
『シュラバ☆ラ☆バンバ 』とか、「修羅場穴場女子浮遊」とか衝撃で。『亀が泳ぐ街』、「未来の神保町 女郎屋の棟々 紅のジャズ 沁みるよ」とは??
歌詞を見ないで歌える曲がたくさんあるけど、『PARADISE』『愛の言霊』『イエローマン〜星の王子様〜』『汚れた台所』『私の世紀末カルテ』とかカッコいいですよね。湘南とか鎌倉が出てこなくても。

I would never, Now-or-Never,
Wadi-Wadi, New-Clear U.

I would never, Now-or-Never,
Wadi-Wadi, Nouveau Blue.

娑婆でもない 黄泉でもない
涙のSunshine Day

陽だまりの陰で泣く
生命よWhat'd I say?

Amen.“愛"はLibido “憎"はInsane

巨大な傘に呑まれそうな

ひとりぼっちの僕を見て

ここは小さな平和のパラダイス

『PARADISE』

生まれく叙情詩とは蒼き星の挿話

(過去に多くの人が 愚かな者が 幾千億年前の星の光見て)

(戦をしたり 罪犯したなら ぼくもまたそれを繰り返すのか)

生まれく叙情詩とは蒼き星の挿話
夏の旋律とは愛の言霊

今は滅びた星の光なのに見つめるままに夢に見るたびに涙ぐむのはなぜなのか
そして僕はどこから来たのか

この魂は誰のものなのか Yeah, Yeah, Yeah

(生まれく叙情詩とは 蒼き星の挿話)
(夏の旋律とは 愛の言霊)
(生まれく叙情詩とは 蒼き星の挿話…)
『愛の言霊』

People People under the sky

Goin Goin とっぽいよ

Twinkle Twinkle アタイはStar

姐ヤン兄ヤン イロっぽいよ

Turururu... Turururu... 
Turururu... Turururu...
浪漫 浪漫 いっぱいのStage

Come in Come in とっぽいよ

妖艶 妖艶 宇宙のStar

オー・マイ・ガー・ガー イロっぽいよ
『イエローマン〜星の王子様〜』

汚れた台所 泥にまみれたブーツ

ひとり住まいのヤニ臭い部屋で女神はポーズ

"愛してるのさ"と彼女に乞うと

"金さえくれたら脱いでもいいわ"
Yeah Yeah

朝夕のラッシュ 夢にまで見たマイホーム

守るべきモノ有り、キナ臭いはずのサラリーにキッス

"出世したいか?"と上司は問うと

"会社のためなら記憶は消せよ"
Yeah Yeah
『汚れた台所』

家に帰るとテレビが無くては生きて行けません

嘘でもいいから刺激が無くては死んでしまいます

こんな時代に手紙を書くのが好きになりました

他人に己れをさらけ出すのが怖くてなりません

闘う事や傷つく事は拒むけど

野暮な慰めにゃホロホロリ
『私の世紀末カルテ』



90年代のサザン、今思うと歌詞も曲調も好きなのが多いです。
小学生のとき聴いていて、ドキドキして、歌詞の意味もわからず大人っぽいと思い、親や兄弟の前で歌って、引かれていました。(マンピーとか卑猥な歌詞と知らず…)
スージー鈴木さんも書いてるんですけど、基本的に桑田さんの歌詞、よくわからないけど、カッコいいんですよね。




『漂流日本左翼史』(佐藤優、池上彰 講談社現代新書)。

あさま山荘以降の、新左翼の衰退と、既成左翼の台頭と衰退、がわかりやすい。
格差、貧困、戦争の危機のある現在は、左翼が掲げる論点そのものである、として「危機の時代に思想に踊らされない真の教養を」というコンセプト。

1970年代以降の労働運動やスト権スト、民営化への影響、各政党の流れもわかりやすい。
労働運動の衰退に追い打ちをかけたのはポストモダン的言説、『構造と力』なども取り上げられていた。
現在の左翼は「大きな物語」を語り得なくなっている、戦争への発言で思想を成り立たせる土台を失っている、と。

反合理化闘争についてや、1960年代頃から始まった「生産性向上運動」については現代の風潮と逆行していて面白いです。
資本主義社会においてはそもそも仕事の効率化が必ずしも労働者のためにならない、といった言及は興味深いです。

少し吉本隆明の『共同幻想論』が出てきたり、松本清張の立ち位置が出てきました。面白い。
川口大三郎事件(早稲田大学構内リンチ事件)について、また、川口君と同じ早稲田一文だった村上春樹『海辺のカフカ』への影響や、松井今朝子『師父の遺言』への影響も書かれていて、なるほどと思いました。

新書、読み易いし面白いですね。
物語より全然新書を読んでいる…
だから物語、書けないんだよなあ…
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