1.幼き日の初恋

文字数 1,141文字

この国は嘗ていくつにも分かれ散らばっていた小国が集まってできた国であり、それがまとまって一つになったり、別れたり、またまとまったり、と繰り返して、今では五つ六つほどの領地に分かれた国となっている。それぞれの領地は、中央の大きな街があり、さらに周りに沢山の小さな村が点在しているが、どの領地のどの村でもさだめられている決まったルールが一つある。
子供の教育についてだ。
どの村でも師という子供を預かって自分の技術を分け与える存在がいて、その分野は村によっても様々だが、基本となる三つの技術として剣術、白魔法、黒魔法が定められている。どの村でも、これらの教育は必ずできなければならない。
そしてその三つ、あるいは村によっては他に弓術や槍術などもあり五つ、六つの場合もあるが、とにかく子供達はその様々な技術を持つ師の中から一人の師を選び弟子入りするのだ。
当然村や町によって師の良し悪しもある。優秀な師がいる村にはよその村からの留学生がやってくることも珍しくはなかった。
「おはようございます!」
私の友は、まさにこの村へ白魔法の師を求めてわざわざ領をまたいでまでやってきた少年だった。
「おはよう」
彼はいつも私と朝の道を共にする。
私は黒魔法を学ぶもので、白魔法の師の元へ向かう彼とは目的地は違うわけだが、どういうわけか毎朝一緒に歩いていくのだ。
その良し悪しを問わなければどこにだっているような剣術や白黒の魔法の師は、弟子など片手で足りる程度にしか持っていないようなところがほとんどであるが、この村の白魔導士は彼のように他所から留学生を集めるほどに優秀な男だ。私と違って彼の学友は多いであろう。衣服もやはり他所から来たせいか見慣れないなりではあるが、違う文化の衣をまとったものなど彼の学び舎では珍しくもないであろうし、優しく明るい彼には友も少なからずいるだろう。
それでも彼はわざわざ違う師の元で違う技術を学ぶ私を気にかけた。
「今日の授業が終わったら、川に行きましょう!」
彼はすごく楽しそうに、嬉しそうに言う。その笑顔は太陽を透かしてキラキラ輝く金の髪と同じぐらいにキラキラと輝いている。
「うん」
私が頷くと彼はその顔を一層輝かせた。
「今は川辺の花が奇麗に咲いているそうです!」
彼はなんだか少女のような可愛らしい顔をしている。それを本人に言えば機嫌を損ねるかもしれないので言ったことはないが、その容姿に合わせたように可愛らしいものが好きなようだった。
「あ!綺麗な石......!」
綺麗な花やきらきら光る石などを手に入れては嬉しそうに私に見せに来るのだった。
「見てください!キラキラして宝石みたいでしょう?」
「そうだね」
「ふふ、これプレゼントしますね!」
そうしていつだってキラキラは最後に全て私のものになる。
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