プロット

文字数 975文字

起)
 語り手である和戸総一(わとそういち)は、日本有数の名家・家小路家の一人息子・家小路英人(いえこうじえいと)の個人秘書をしている。
 家小路家は、美術品を中心とする貿易商で、戦前は貴族という筋金入りの大金持ち。その一人息子である英人は、イケメン・金持ち・オクスフォード出身というハイパースペック男子だが、幼少期の事故で足が悪いことを気にして、家に引きこもりがち。大学で西洋美術の外部講師としてたまに教壇に立つことと、当主不在時に家の雑務を少々行う以外は、趣味の世界に没頭するセレブニート生活を送っている。そのため、個人秘書の和戸の仕事も、少し足が悪い英人の代わりに雑用をすることとたまの外出時のつきそい、あとは話し相手くらいしかない。
 しかし家小路家は名家なので、英人の意に反して、大金持ちや政治家、有名人と交流するために外出しなければならない機会は多い。ある日、二人は有名な大会社の会長が主催するパーティに招待され、そこで殺人事件に遭遇する。

承)
 殺害されたのは、パーティ主催者である利相源一郎。
 被害者もパーティに招待されていた客もみなセレブなので、

便

をするべく、英人の従兄妹で警視庁に勤務する鍋島が捜査を担当。英人もその手伝いをすることに。
 秘書の和戸は、この時はじめて家小路家の裏の顔を知る。実は、代々各国のセレブとの交流を通じてその国の政情を探るスパイの家系だった、ということを。

転)
 聞き込み捜査のなかで、被害者が子供たちにとってはリア王のような父親であること、彼の義理の息子はハムレットのような気質であること、娘の一人はライバル会社の御曹司とロミオとジュリエットのような関係にあることなどが明らかとなっていく。みな、それぞれに殺害動機があるため、捜査は難航する。

結)
 スコーンの食べ方を利用した毒殺トリックを見抜いた英人は、犯人が被害者の秘書であることを突き止める。
 事件は解決したが、被害者が死の直前に事業売却をしようとしていたため、被害者が経営していた会社は大混乱。しかし、英人の入れ知恵で、社員たちが「全員で辞表を出します。ノウハウを持った社員がいなければ事業の継続は困難になりますよ」と売却先の会社に啖呵を切り、その問題も解決。
 その様子をみた英人は、「やはりこの事件はシェイクスピア的だ。まるで『ベニスの商人』じゃないか」と笑う。

(おしまい)
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