第23話 千兵崩壊

文字数 3,787文字

ハドゥン帝国のレギオン製造機やレギオン制御装置を掌握したガイアレスは、天軍との戦乱で壊れたそれらの装置を修復させ、続々とレギオン兵を製造し放出していた。
そのレギオン兵は、集団で囲いながら敵であるサザンカ軍と天軍の連合軍と戦っていた。

ヒュン、ザッ、ザッ、ザッ
人が二人分ほどの大鎌がレギオンに振るわれ次々と鎌で稲穂を刈るように斬られた。
その鎌を振るっているのは、サザンカ軍の将軍フルカスであった。
「ラファエル殿、大丈夫ですか。」

フルカスの目線の先には、翼の生えた少女が弓をレギオンに発射させていた。
その少女が放った矢は、細い腕からは想像ができないほど強く、一ミリのズレも無い精巧に放ち、動いているレギオンを三体を同時に貫通させ、一撃で機能停止させた。
「僕は、大丈夫だよ。
また、敵が増えていませんか。」

「あぁそうだな。
あの巨大な怪物から続々と出ている、何とかしてあの三人が倒すまで持ちこたえないと。」

「フルカス将軍、またがガイアレスからレギオンが出現しました。」
遠くから見えるガイアレスの黒い影からレギオンの瞳から発せられる赤い光が無数にうごめいていた。

「間に合わないのか。
すまない、ホーフンド、ジゼル、アフロディテ。」

すると、暗い空から炎の斬撃や黒い獣のような巨大な牙がフルカスの周りにいたレギオン達を一蹴させた。
「この技は、確か。」
フルカスは、空を見上げた。

空からジェンイーとグリードドラゴンが落ちて来た。
二人とも着地して、ジェンイーが言った。
「すまない、将軍待たせた。」

フルカスは、驚いた様子で言った。
「おお、御無事でしたか、ジェンイー殿、グリードドラゴン。」

「あぁ、それよりもこのレギオン共を一掃しないと世界にこのレギオン共と戦争になる。」

「それは、我も分かっているのだがどうすればいいのか。」

「クククッ、俺は知っているぞ。
レギオンを止めるにはヘパイストスの地下研究所に行く必要がある。」

「そうか、さっそく案内してくれ。
グリードドラゴン。」

「あぁ、良いぜジェンイー。
だが、フルカス達はここでレギオン達をひきつけてくれ。
ただでさえレギオンが多い地下研究所に外から入って来たら面倒だからな。」

「分かった、ここは任せろ。」

「クククッ、感謝するフルカス。」

そして、二人は、全速力で地下研究所の入口まで向かって行った。

「フルカス将軍、あの鎧に包まれた人は、ハドゥン帝国のグリードドラゴンじゃないんですか。」

「はい、そうです。
ですが、今彼を捕縛するのはやめてください。」

「それぐらいは、分かっているよ。」

「それは、失礼しました。」

「ボケじゃなかったのね。
まぁいいや、フルカス将軍またレギオンが来ましたね、ここで足止めしないと。」

「そうですね、ラファエル殿。」
二人と兵士達は、再び襲来したレギオンとの長い戦いに挑んだ。

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ジェンイー達、二人は、かつての地下研究所にいた。
ガイアレスの破壊もあり、天井がボロボロで今にも崩れそうだった。
全体が白の壁や床に包まれている小さな村一つ分の広さと数十メートルはある高さを誇っていた。

「ガガガァァァッ!!!」
ザシュ
二人は、そこにいたレギオン十数体をものともせずに倒した。
「だいぶ、ここのレギオンを倒したようだな。」

ザッ、ザッ、ザッ
「クククッ、だがここはレギオン制御装置の近くに当たるということはそれなりに警備も強くなっている。
ほら、来たぞ、ファフニール・ケラウノスだ。
ゼウスの武器の雷霆と黄金の邪竜を融合させた、ガイアに続く兵器だ。
だが、ヘパイストス以外のものが立ち入ったら、皇帝や俺であろうとも牙を剥く失敗作さ。」
グリードドラゴンがそう言うと、地面から全身が黄金に包まれたファフニールが出て来た。
通常のファフニールやメタルファフニールよりは、大きさは大差がないが体から溢れ出ている雷撃は、目に見える黄金色だった。

「キキキキィ、キィーン。」
硬い金属を削るような鳴き声をした、その竜は体全体から雷を二人に向けて放射させた。
放射された雷撃は、白い床を削りながら二人を襲った。
二人は、左右にその竜を挟むように避けた。

しかし、その竜は避けたグリードドラゴンに向かい、噛み砕こうと牙をむき出した。
ガァン
グリードドラゴンは、飛び上がり飢えの槍でその竜の頭を斬るように払った。

すると、竜に槍が触れた瞬間、全身に激痛が走った。
グリードドラゴンは、ジェンイーの元に転がり込んだ。
「痛えなぁ、ジェンイー、アイツ全身に雷撃を帯電させていやがる。」

「直接攻撃は、だめか。
じゃあ行くぞ、グリードドラゴン。」

「クククッ、了解。」
そう言い、立ち上がり槍を構えた。
ジェンイーも剣を天に掲げた。
二人は、自身の技をその竜に放った。
「護国の炎により紡がれた、千年王国皇帝の絶技。
呪縛も罪過も、炎に洗礼されろ!!
カイザー・ドラグーン!!!」

「英雄暴食、飢えの(グラトニーランサー)!!!」
炎の斬撃、喰らい尽くす獣の牙、二つの技がケラウノスに放たれた。
しかし、ケラウノスは避けるどころか突っ込んで来た。
バァン
二つの技がぶつかりケラウノスが見えなくなるほどの爆発と煙を起こした。
それは一瞬のことで爆発と煙の中から傷一つ負っていないケラウノスが出てきて、鋼鉄も一撃でえぐる、黄金の尻尾で二人をなぎ払った。

ザザザザァァ、ガァン
尻尾でなぎ払われた二人は、そこまま白い壁に激突した。
「大丈夫か、グリードドラゴン。」
ジェンイーが壁を見ると、白い壁は壊れて、硬い岩が剥き出しになっていた。
岩からは地下水だろうか、壊れた壁から水が少し漏れていた。

「あぁ、近距離は雷撃、遠距離は硬い鱗で無効。
どうすればいいんだ。」

「グリードドラゴン、奴は、耐水性か。」

「知らん、ヘパイストスは作りかけの途中でその凶暴性のためにここの警備用にしたからな。」

「そしたら、ヘパイストスのお節介がないことを祈ろう。」
ジェンイーは、そう言って硬い岩に剣をぶつけた。
岩は、壊れてそこから滝のように水が吹き出した。

「逃げるぞ、グリードドラゴン。」
ジェンイーが呼びかけ、走りだそうとすると、グリードドラゴンが止めた。
「水没させるのか、しかしおかしい水位が全然高くなっていない。」
そう言われ、ジェンイーが周囲を見渡すと、ケラウノスが大量の水を自身の雷撃で蒸発させていた。

「そうか、そしたら後はこうするだけか。
伏せていろグリードドラゴン。」
「クククッ、また荒っぽいことをするね。」

ジェンイーは、剣を天に掲げて腰の3頭の竜に炎を放射させ剣に炎をまとわせ、振り下げた。
燃え盛る炎の斬撃は、ケラウノスに向かった。
ケラウノスは、避けることなく先ほどと同じように硬い鱗で受け止めようとした。

キュイン、バァーン
炎の斬撃から突如、ケラウノスの周囲が大爆発を起こした。
グリードドラゴンは、驚きの表情を見せた。
「何をやった、ジェンイー!!!」
「水というものは、電気を加えることによって、爆発性のガスが発生する。
奴がそれを発生させてたから、俺が発火させたまでだ。」

爆発が止むとケラウノスは、相当な威力だったのだろう鉄くずとなっていた。

「これでレギオンも停止する。
やったな、ジェンイー。」
「あぁ、でも早く脱出しないとな。」
二人は、研究所から脱出し、沈みゆくハドゥン帝国の技術の結晶の崩壊を見届けた。

兵士も負傷して動けずに残っているのは、フルカスとラファエルだけだった。
しかし、その二人も続々と出現するレギオンに苦戦して、疲労困憊で今にも倒れそうだった。

ウィーン
ガシャン、ガシャン、ガシャン
すると、突然レギオンがバタバタと倒れていった。

「フルカス将軍!!!」
ラファエルの明るい声が戦場に響いた。

「やってくれたか、ジェンイー殿、グリードドラゴン。
感謝する。」
フルカスは、ガイアレスから差し込める朝日を見ながら言った。

すると、朝日が差し込んだガイアレスも目を開けられない激しい光とともに消え去った。
「あぁ、終わった。
長かった、あまりにも長かった。
クローマ様の元にサザンカの民を帰らせることができる。」
長き戦いに終止符が打たれ、フルカスは、途中ではぐれた黒馬とも再会でき、その馬に乗り、戦場に終戦の笛を上げた。
動けない兵士達にも安堵の声が聞こえ始めた。

「フルカス将軍!!!」
フルカスが馬に乗りながら終戦の笛を上げていると、ハドゥン帝国にジェンイーの隊の兵士がいた。

「おお、お前達無事だったのか。」

「はいっ、レギオンを倒して遅れましたがジェンイー殿に命令された報告に参りました。」

「そうか、いいぞ続けろ。」

「ハドゥン帝国の民は、全員安全な場所に避難させることができました。」 

「分かった、お疲れだった。
我がジェンイーに伝える、お前達はゆっくりと休息を取るがいい。」
フルカスはそう言い、馬を走らせた。
ジェンイーの兵士達は、フルカスが見えなくなるまで敬礼していた。
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