前編
文字数 2,958文字
草木も眠る丑三つ時……
ひと気のない路地をとぼとぼと歩く男が一人
心臓の痛みからか、一瞬……目の前が真っ暗になった
目の前に突如、妙な格好をした女が現れた
……同僚が話していた都市伝説が頭に浮かんだ
―回想―
興味津々じゃねーか……まあいいや。俺も知り合いにちらっと聞いた程度なんだけどよぉ。シロネコサマってのは巨乳で金髪の女で、服装は白のスク水、顔にはお面を被っていて、手に持ったナイフでもって、対面したやつに襲い掛かる……らしい
―回想、終わり―
金髪、白のスク水、巨乳、そして顔にはお面……
目の前に、真っ赤な飛沫のようなものが舞い散った
強烈な痛みが身体中を巡った
女が、イカレた女が、俺の目の先で異常な動きをしている
切ってるのか?
俺の身体を……
そういえば、いつの間にか、腕が見当たらない
そう思った瞬間、視点がぶれた
落下する感覚
スローモーション
地面が見えた
よく分からない塊のようなものが散乱している
……ああそうか
これは俺の、肉塊だ
……俺は、死んだのか
……いや待て。なら、今、思考している、『俺』はなんだ?
…………
……ひょっとして、俺、生きてる?
おわっ!?
……俺、あんたにぶっ殺されたんじゃあ?
は、はあ……?
女が手鏡を差し出してくる
……そこには『奇妙な物体』が映っていた
目の前の岩の化け物と目が合った。
咄嗟に目を逸らすと、化け物も同時に目を逸らした。
……まるで現実感がないが。恐ろしいことに、目の前の化け物は――
とにかく今は情報を得ることだ
そう思い、周囲をよく見渡してみる
……今いるのは洋室だ。かなり広い
そして、あたりには大量のぬいぐるみが転がっている
さらによく観察すると、それらの一部は『動いて』いることに気づいた
ぼよんっぼよんっ
ぼよんっぼよんっぼよんっぼよんっ
ぼよんっぼよんっ